見出し画像

<連載> 小竹直人・OM-1の魅力 Vol.4/ プロキャプチャーモードとライブND

プロキャプチャーモード

OM-1の連写機能はE-M1MarkⅢの60コマ/秒から120コマ/秒!(AF/AE固定)に倍増しました。それに伴ってプロキャプチャーモードも120コマ/秒に設定すると最大で70コマ、すなわちシャッターを押した瞬間から0.35秒さかのぼって記録可能になりました。
これまでプロキャプチャーの作例では、野鳥の飛び立つ瞬間やカメレオンが餌を捕獲する瞬間などを目にしてきました。とても画期的な機能で、偶然でも撮れない瞬間を撮影可能にしました。

プロキャプチャーモードと鉄道写真

さて、鉄道撮影においてこの機能は使えるのか。
有名撮影地として知られる陸羽東線の鳴子峡鉄橋や只見線の六十里越トンネルを列車が鉄橋を渡るシーンの写真を撮影、あるいは見た方も多いと思います。そこではいずれも気動車がゆっくりと鉄橋を通過していきますから、通過時刻の数分前から集中すれば誰でもこのシーンを撮ることができます。
仮の話として、そこを時速300キロに迫る新幹線が飛び出して来たとイメージしてみてください。とてもじゃありませんが、秒120コマの連写をもってしても列車先頭部を理想の止め位置で捉えることはできません。従来そうした状況はあり得ないので、私は鉄道撮影ではほぼ必要のない機能だと思っていました。
ところが、7年ほど前の話ですがE-M1MarkⅡで中国の高速鉄道に乗って各地を取材していたときのことでした。車内でウトウトしていたら対向列車の風圧で車体が揺らぎ目が覚めた途端に、閃きました。「そう、プロキャプチャーなら車窓越しに対向列車を撮ることができるかもしれない。」 先が見通せる在来線のカーブ区間なら対向列車を撮ることはできますが、見通しの効かない高速鉄道の小さな車窓から相対速度600キロにもなる対向列車を撮影することは、これまで想像がつかない世界でした。以下では、日本国内の新幹線車内で撮影した写真をご覧いただきます。
プロキャプチャーやライブコンポジットのような進化した機能は、今までにない新たな表現が可能になり、創作意欲をかきたてられます。

OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO

実際にシャッターを押した時点の写真を確認すると2両目の最初の車窓が写っていました。この写真は、それから38コマ目すなわち0.19秒さかのぼって撮影された写真です。すれ違う動感、緊張感を表すためにシャッター速度を遅めの1/800秒に設定しました。

OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 PRO Fisheye

連写が120コマ/秒になったことで確実に車体のノーズ部分を外さずに捉えられます。しかも止め位置もセレクト出来ます。レンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROかM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROが最適ですが、M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 PRO Fisheyeの魚眼なら、さらにユニークな写真も撮れます。

OMD E-M1MarkⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 PRO Fisheye

サムネイルに掲げた上の写真は、E2系の車窓から同じE2系を狙ったものです。60コマ/秒だったE-M1MarkⅢで撮影しました。運良くノーズが切れることなく収めることができました。前述した通りOM-1の120コマ/秒は確実にモノにできます。

ライブND

次にライブND機能について書きます。ライブNDとは、NDフィルターの効果、すなわち減光機能です。OM-1は最大で6段(ND64)シャッタースピードを落として撮影可能です。フィルターが装着できないM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROには効果的ですね。
しかしながら、私自身これまでにNDフィルターを用いて撮影したことがありません。もっともNDに限らずレンズにフィルターを装着することを好みません。というのも締切の窓越しならしかたありませんが、開けられる窓なら開けて撮影しますよね。ということからです

ライブNDと鉄道写真

さて、ライブコンポジットや深度合成などと同様に新たな機能は、創作意欲をかきたててくれます。ライブNDは日中でも超スローシャッターを可能としますから、静止物と動き物の対比でなにを表現できないかと考えました。
これまで訪れてきた駅や撮影地に思いを巡らせているなかで、川沿いに佇むほくほく線の虫川大杉駅周辺で撮影した写真を見返したところ、停車中の車両とときに激流となる保倉川を対比させることを思いつきました。そして、そのイメージをもって現場では、列車交換を待ってさらに動感を与えました。そのそれが、このショットです。

OMD E-M1MarkⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

この日は、ぼんやりとした曇天で撮影する気もなかったのですが、通過する特急列車の車窓越しに海と駅銘板をライブNDで撮影したところ面白い写真になりました。この狙いはまたどこかで使えそうですね。ちなみに35㎜判換算80㎜相当の画角でシャッター速度を1/2秒まで落としています。もちろん手持ち撮影ですが、この程度ではOM SYSTEMはブレません。

OMD E-M1MarkⅢ/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

下の写真はシャッター速度を1/1.3秒まで落とし、強風に揺らぐ稲と杉の木そして列車をライブNDによってブラして風を表現しました。山形フラワー鉄道長井線でのひとコマ。

OMD E-M1MarkⅢ/M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

フィッシュアイレンズを使うと

最後に、今回のロケではプロキャプチャー撮影を魚眼レンズで試してみましたが、他にも面白い写真が撮れたので紹介します。

OM-1/ M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 PRO Fisheye

シャーベット状になった雪原ギリギリにレンズを寄せて雪肌から新幹線までパンフォーカスにして撮影しました。魚眼レンズは超広角レンズ同様、その広い画角を活かしきることが大切です。魚眼レンズに撮らされた写真にならないように気を付けたいですね。

OM-1/ M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 PRO Fisheye

この魚眼レンズの開放値F1.8というのも魅力です。手のひらに載るほどのコンパクトなのでカメラバックの隅にしのばせておいても良いでしょう。


詳しいご説明
プロキャプチャーモード
ライブND
OM-1
M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO


筆者紹介

小竹直人(こたけなおと)
1969年新潟市生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後。フォトジャーナリスト樋口健二氏に師事。
1990年より中国各地の蒸気機関車を取材し、2012年~17にかけて中朝国境から中露国境の満鉄遺構の撮影に取り組む。近年は、郷里新潟県及び近県の鉄道撮影に奔走し、新潟日報朝刊連載「原初鉄路」は200回にわたり掲載され、以降も各地の鉄道を訪ね歩いている。
近著に「国境鉄路~満鉄の遺産7本の橋を訪ねて~」(えにし書房)などがある。

いいなと思ったら応援しよう!