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<連載>OMと旅する鉄道情景(第15回/神谷 武志)GROUP K.T.R

アートフィルターで遊ぶ 花の公園


告白します。
カミヤ、アンチ「アートフィルター」派でした(;^_^A

いくつもおすすめしたい機能満載のOMシリーズだけど、ことアートフィルターだけは

「あってもなくてもいいや」

と思っていたことを正直に告白します。
かつて「ナンバーの読めない写真は鉄道写真ではない」という極論すらもあったこの世界、写実主義が基本の中でアートフィルターを積極的に使う人は今も少ないと思われます。
でも、せっかくの機能。まるで無視はMOTTAINAI!。
ときに料理の彩りに味付けを施すスパイスのように、「鉄道写真にも使ってみようかな」と思っていただけるような、3つの例をご紹介します。


人影などの印象を弱める、生かす

菖蒲の咲く池が地元で人気の場所なのですが、私は毎年、線路端に咲いている紫陽花のアナベルが好きで、季節になると原付に乗って撮りに出かけます。木立の中の群生のため日照時間が短く、ほかの場所よりも開花が遅く撮影スケジュールを組みやすい点もお気に入りの点。
「6月のカレンダーの絵柄」などには、よく雨と紫陽花とかたつむり…などを見かけますよね。そんなイメージもあって、紫陽花に限っては雨の日も絵になる花だと思いますが、この場所は「花」とともにカミヤのもうひとつのお気に入り、「アマテラス」(太陽をアクセントに生かした鉄道写真)アングルの場所なんです。なのでやっぱり私としては、晴れた日に撮りに行きたい。
でも花咲く公園、しかも梅雨の最中に晴れた一日。こんな日には誰だって出かけたくなります。しかも今日は土曜日。画面にはどうしても人は入りがちに。
しかし「入らないでくださいませんか」などとお願いの声かけたところで無駄です。それに電車も花も公園も、私のものではありません。
みんなの公園ですからね。
待つこと暫し。いい光線になってきました。画面には何人かの人影が写り込んでいます。
写り込みのウエイトを下げ、光線の差し込んだ真っ白のアナベルを生かすべく超広角8㎜に画角を設定。加えて「トイフォトⅡ」を使ってみることにしました。アートフィルター初体験。
「トイフォト」は広角のオールドレンズや、昭和のフィルム時代、カメラ店よりも玩具店にあったようなトイカメラで撮影した際に、レンズの性能不足から周辺光量が不足し、焼き込んだように大きく減光されてしまった写真をイメージしています。
トイフォトには3つのバリエーションがあり、「1」「2」「3」ともに周辺減光は同じながら、「2」はやや青味、「3」は赤味を帯びた色合いが加わります。
木立とアナベルの清涼感を生かしたいので、「2」の青味プラスを選択。
黄色い電車と青の相性が少し心配でしたが、案ずるより生むがやすし。
意図的に大きく落ち込ませた周辺光量が、逆に「古い記憶」の一枚のような印象に仕上げてくれました。
さらに画面左上の余分な空白を埋め、中央部に視線を集中させる効果もあります。
その昔、同じような効果を狙ってかすかに「周辺焼き込み」を「隠し味」のように行うことが流行っていたことがありました。こちらはそれをもっと大ぶりなアクションで表現した感じです。
「おお。アートフィルター…なかなかいいな!」。

OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
トイフォト
OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 8~25mm F4.0 PRO

先程ファインダーの中にいた、私同様「あじさいと電車」を狙っていたと思しき数人が移動していきました。
今度は縦アングルで撮ろう。木立の葉陰を太陽光線がギリギリかわす立ち位置に移動。
電車が隣駅を発車する時間になったところで、携帯電話で紫陽花のアップを撮ろうとしたのでしょうか。素敵な女性がフレームイン。
電車主体で撮ろうとした意識をすぐに切り替え、今度は後ろ姿を生かした「ファンタジックフォーカス」を使ってみます。
ソフトフィルターを付けたのと同じような、柔らかな画像になります。ソフトフィルターは、ポートレートや花の撮影に推奨されていますので、どちらにしてもうってつけ。しかしソフトな仕上がりながら、ピントの芯はしっかりと残るのが鉄道写真にも◎。
撮影後、偶然モデルになっていただいたAさんにお声がけ。ちょうどだんなさまと木陰でお休みしているところでした。モニタを見せて写真の使用の許可をお願いすると、ご夫婦でこころよくOKしてくださいました。画像を見て「うれしい!」とお褒めの一言も。こちらも嬉しくなるひとときでした。
あまりにアナベルの情景と、ファンタジックフォーカスの印象がAさんの雰囲気にあっていたため、ファンタジックフォーカスの画像を見たあとに通常撮影のものを見ると、なんだか逆に物足りない気持ちになってしまいましたが、ここであらためて思わないわけにはいかないのは、M.ZUIKO DIGITAL 8~25㎜F4.0PROの逆光耐性。わずかに出たフレアはそのまま、本画像に限りませんが一切の加工をしていません。頼りになる超広角ズームです。

OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 8~25mm F4.0 PRO
ファンタジックフォーカス
OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 8~25mm F4.0 PRO

ファンタジックフォーカスは、太陽が南中している、鉄網の間から撮影していてその格子の干渉によりコントラストがきつく出る…などの場合や、どうすることもできない架線の影などが入ってしまうような絵柄の際、その印象を弱めることにも効果がありそうです。

OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
ファンタジックフォーカス
OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

いまいちの天候の場合の変化球として

アナベルといえば、私はもう一か所、毎年会いに行っている花があります。
昨年は病気なのか、花も少なく虫もついていて、とても心配していました。
今年は元気回復。丸々と美しく豪華に、線路端で咲き誇っています。
でも私のスケジュールが立て込んでいて、なかなか会いに行けない毎日。
紫陽花の撮影チャンスも、結構長いようで短いんです。
しかもここも、またしてもアマテラスで狙いたい場所。
しかしついに今年は「すかっとした夕日」の時間での逢瀬を楽しむことは出来ませんでした。
こんなときも、アートフィルターの使い道。リーニュクレールを使ってみます。覚えにくい(発音しにくい)ネーミングが損した印象のアートフィルターですが、フランス語なんだそうです。「クリアライン」という意味。諧調を飛ばして絵のような仕上がりになります。強弱で「1」「2」の2種類があります。
押し合いへし合いしているような満開のアナベル。病み上がりを感じさせない、完全復活。よかったよかった。
夕陽にならないのなら、今年は違った一枚を。
来年もまた、お互い元気で会えますように。

OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 8~25mm F4.0 PRO
リーニュクレール
OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 8~25mm F4.0 PRO

ちょっとミスった一枚の 目先を変えた仕上げに

こちらも正直に記します。
この使い道も「アリ」ですよ。
分かると結構楽しいアートフィルター。列車の待ち時間などに、カメラ内現像で撮った画像をいろいろ試してみて遊ぶようになってきました。
そんなころ、九州に住む鉄仲間から「山口線のD51撮影」のお誘いが。
久しぶりに煙分の補給を行ってきました。
名所船平山のカーブ。災害復旧の際、沿線の方々のご厚意で、線路端はキレイに整備され駐車場まで設けられています。われわれはその気持ちを、感謝の念とともに大切に・しっかり受け止めたいものです。
大カーブを悠然と往くD51列車。何度見ても、やはり美しい。
しかし切り位置の一番いい地点に、鉄柵があることを見落とししていました…。もちろん連写はしていますが、編成がカーブに載り切ったこの位置のこのカット。失敗として消去するものも惜しい。
そこでアートフィルターの出番。
選んだのは「ジオラマ」モード」。
フィルム時代、ティルトレンズという特殊なレンズでしかできなかった「敷居の高かった遊び」が、デジタルで簡単にできるようになりました。
ピント位置から周辺を急激にぼかした処理を行い、まるで模型の世界を撮影したような印象を得られるモードです。
ジオラマチックですから、やはり覗き込むような「俯瞰」的アングルに最も効果が出やすいようです。人や車などの入り込みも有効です。
線路端に、三脚構える撮影者数人。
これらを添景に使わせていただいて、「Nゲージのような世界」を作ってみました。
こちらも強弱で「1」「2」があります。
両方作っておきました。ぜひ比較してご覧ください。

OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
ジオラマ(1.標準)
OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
ジオラマ(2.強)
OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO

アートフィルターのススメ

「カミヤ的用途解説」、以上3つを取り上げさせていただきました。
いかがでしたでしょうか。
繰り返しになりますが、せっかくある機能、食わず嫌いはもったいない限り。
でも濫用は避けたいものです。「スパイス」は時々あるから効果的なもの。
基本的なことを付け加えると…アートフィルターを生かすためには、JPGとともに、RAWで撮影しておいてくださいね。RAWで撮っておけば、試すも戻すも自由自在。
普通に撮った一枚が、アートフィルターを適用するとそんな絵柄になるのか。
いろいろ試してみるのも「写真の引き出し」が増えることに繋がります。
まずはこのテキストを読み終えたら、ご自分の愛機を膝上に。
「RAW編集」「ピクチャーモード」で、ぜひともお試しを。


筆者紹介

神谷 武志(カミヤ タケシ / Takeshi Kamiya )

1963年 東京都新宿区生まれ。1995年より、交通新聞社「月刊鉄道ダイヤ情報」誌にて海外蒸機紀行を6年、国内編を4年、足掛け10年間連載を担当。ほかJAL機内誌や鉄道雑誌(日本・台湾)などで活動。著書は「世界を駆ける蒸気機関車」(弘済出版社)、「日本路面電車カタログ」、「蒸気機関車紀行」(イカロス出版)など。クラブツーリズム社写真ツアー講師。「鉄道写真をもっとオトナの趣味に」をテーマに、地元・鉄道・撮影者がみなHAPPYになれる関係を目指して、さまざまな撮影イベントを企画・運営している。

※GROUP K.T.Rとは、このnoteを担当する「鉄道を愛し、OMを愛する」3人のフォトグラファー牧野和人、神谷武志、高屋力の名前のイニシャルから取った頭文字です。
グループの首謀者神谷の準地元であり、OM SYSTEMの地元でもある「京王線」の旧社名をリスペクトした名称でもあります。今後もさまざまな鉄道ネタをご紹介していきます。どうぞお付き合いの程、よろしくお願いいたします。


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