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<連載>OM と旅する鉄道情景(第14回/牧野和人) GROUP K.T.R

魅惑の光景が誘う

幾条もの線路が並ぶ区間を行く列車には幹線鉄道らしい風格が漂う。頻繁に
列車が行き交う様子を捉えるには、線路より離れた場所から架線柱等の障害物を避けて構図をつくるのが、安全に撮影を楽しむための方策だ。駅ホームの先端部では、駅へ向かって来る車両を正面勝ちに望むことができる場合が多い。
立ち位置は設置されている安全柵の内側等になる。

OM-D E-M1markⅡ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

甲南山手は兵庫県下を通る東海道本線の駅である。乗降ホームは高架上に 1 面あり、複々線の中ほどを走る緩行線の電車が着発する。駅の周辺で架線柱は全ての線路を跨いで設置されており、ホームの両端部から行き交う上下列車を、外側の列車線を走る車両も含めて見通すことができる。
光と影が織りなす印象的な光景を期待して、上屋の影が長く伸び始めたホー
ムに降り立った。青空天井の状態である先端部には、まだ西陽が燦燦と降り注いでいた。

OM-D E-M1markⅡ / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO

超望遠レンズが生み出す構図の妙

光の渦を反射して、きらめく帯になった線路が誘うホームの西側へ向かった。
視界の奥に線路が曲線を描きつつ、起伏を伴って並んでいる様子を確認。長大な貨物列車が迫力ある画面の主役になってくれそうだ。撮影に用意したレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO。。4.1 度の画角は遠景を整理して、日常風景の中から魅力ある景色を 掴み出してくる。スーパー ED レンズ、HRレンズ等、画像上に生じる各収差を 高レベルで補正する特殊レンズをふんだんに使った本レンズは、太陽と対峙する厳しい撮影条件下でも解像感の高い画像をもたらす。
また超望遠レンズの特性は、背景の描写にも活かされる。遠近感が希薄になり被写体同士が折り重なって見える圧縮効果で、列車の後ろに立ち並ぶ架線柱や建物等は幾何学的な配列となり、主役の列車を引き立てる整然とした
画面を つくり出す。車両正面等の合焦部と離れた位置にある背景部分は、
F11 程度まで 絞り込んだ際にも、円形絞りを奢った仕様らしい素直な
ボケ味を湛えている。

OM-D E-M1markⅡ / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO

手持ちで決める超望遠撮影

搭載された5軸シンクロのブレ防止機能を頼りに手持ちで撮影に臨んだ。シ
ャッター速度にして6段分と定評のある補正機能は、僅かな振動で生じる揺れを吸収して、ファインダー内の像を静止させた。加えて構図をより安定させるためにレンズを携える左腕の肘を胸に押し当てた。太陽はいよいよ低くなり、足元から影が広がる。それでも薄青色を湛える眺めの中に線路上の残照を追う。
遠望される芦屋駅の構内に、二つの前照灯が光った。下り列車線に現れた貨
物列車の先頭に立つ機関車は1000 番台のEF65。かつて寝台特急列車のけん引機等に施された配色と同じ、クリーム色と青の塗装をまとう。僅かに射し込む陽光の中にクリーム色の顔が躍り出た。機関車は運転台部分が合焦して静止したかのような様子を確認できるくらい、ゆっくりとした速度でファインダーの中を動く。撮影を終えて頭をもたげると、列車は堂々とした足取りで目の前を通過し、夕焼けに染まる街中へ向かい駆けて行った。

OM-D E-M1markⅡ / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO

筆者紹介

牧野和人(マキノ カズト / Kazuto Makino )

写真家。
幼少期より写真撮影に親しむ。2001(平成13)年より写真業、執筆業を生業とする。
臨場感に富んだ画像を撮影すべく、全国各地を訪れている。撮影成果は一般誌、児童書、旅行誌、鉄道趣味誌等に掲載。企業ポスター、カレンダー、時刻表の表紙等の大型図版も手掛ける。

※GROUP K.T.Rとは、このnoteを担当する「鉄道を愛し、OMを愛する」3人のフォトグラファー牧野和人、神谷武志、高屋力の名前のイニシャルから取った頭文字です。
グループの首謀者神谷の準地元であり、OM SYSTEMの地元でもある「京王線」の旧社名をリスペクトした名称でもあります。今後もさまざまな鉄道ネタをご紹介していきます。どうぞお付き合いの程、よろしくお願いいたします。


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