見出し画像

令和2年予備憲法と「取材の自由」、そしてはるかなるLRA【答案改造ビフォーアフターVol.3】

こんな夢を見た。

腕組みをして机に向かっていると、仰向けに寝た女が、静かな声で「この違憲審査基準のセレクトは明らかにおかしい」と云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかな瓜実顔をその中に横たえている。

取材の自由が問題になっているとはいえ、内容規制ではないし、規制の目的は無論非常に重要だ。とうていLRA以外の基準が使えそうには見えない。

しかし女は静かな声で、「間違っていますよ」とはっきり云った。なるほど、自分も確かにこれは間違っているかもしれない、と思った。そこで、「そうか、間違っているんすかね」と上から覗き込むようにして聞いてみた。間違っていますとも、と云いながら、女はグワっと眼を大きく見開いた。

とりあえずLRAを使えば大丈夫……なんて、甘えたこと抜かすんじゃねーよ!!

……。

みなさま、ごきげんよう。OLSライターの別宮です。OLS予備試験採点実感講義、第3回目憲法のレポートをお送りします。

今回のテーマ&起案時の感想

今回のお題は、R2予備試験・憲法。テーマは「表現の自由」です。担当は公法系1位合格のあいかわ先生ということで、自ずと期待も高まります。

今回の問題、一応起案するのは2回目なのですが、1回目はただの作文になってしまったので……。

少しでも憲法っぽい答案になればいいな、と願いつつ、時間を測って起案しました。

問題を見て、まず感じたのが「うわー、気持ち悪い規制だな」ということでした。わたくし、別宮の本業はクリエイター。表現の自由にはひときわ敏感です。

問題になっているのは取材の自由、制約は強度。こんな規制を認めたら、犯罪事件関連の取材なんて、ほぼ不可能じゃん。

ということで、「違憲に決まってるだろ」という雑な偏見を持ちつつ、問題文を読み進めることになります。

どうも違憲筋で書くことになりそうなので、「取材の自由」の解釈については学説にのっかりました。

でも内容規制じゃない気がする、ということで、審査基準はなんとなくLRAを選んでしまう(※この発想が間違いだったことが後にわかる)。

もっとも、本件では問題文を読む限り、明らかに「他のより制限的でない手段」があると感じられたので、LRAでも余裕で違憲にできるとは思いました。

あとは試行錯誤しつつ、最後まで書いていった感じです。

ちなみに、本答案は安田師匠の添削にも出したのですが、「この流れでなんでLRAにしたのかわからん。どうみても厳格審査の流れでしょ」とバッサリ。違憲審査基準を立てるまでの流れを改めて確認する必要がありそうです。

違憲筋ゆえに素直に学説に乗っかるも、二重線の引き方をミスして論理が迷子に。
謎のLRA登場


より制限的でない他の手段の指摘・あてはめ(だけ)は頑張った。

合計2枚半です。もともと筆力がないこと、インデントなしで書いている分余白が少ないことを考えると、本番では現実的なラインだと思います……。

最後はもちろん違憲の結論で。

ちなみに私の周囲のOLS生の中には、「犯罪被害者がかわいそうだし、規制はしなきゃ」ということで合憲筋に持っていく方が多く、ちょっとしたカルチャーギャップを感じました……。

講義に参加して

問題文の正しい読み方からレクチャーが始まり、R2憲法の枠を超えて自由権の問題全般に応用できそうな講義が展開されました。

「文章力で勝負する」をキャッチコピーにしている、あいかわ先生だけあって、論理の流れと配点割合へのこだわりが半端なかったです。

「判例に乗っかって『取材の自由は尊重に値する』と書いてしまうと、あとで論理矛盾を起こすのではないか」など、予備校では教えてもらえなかったような鋭い指摘もいただき、憲法迷子にとってはありがたい限り。

この段階ではこう書くべき、という具体的なアドバイスもいただけたので、よかったです。

私が迷いに迷った文面審査コンパクトバージョンについての言及もあり、お得感がありました。

最大の教訓は……「なんとなくLRA、はやめよう」「違憲審査基準定立〜あてはめの各段階において、論証はきちんとしよう」ということでしょうか。やっぱり法律学は論理と説得の学問なので、論理をすっ飛ばさずに、また問題文の事実を具体例として援用しながら説得的な論述をすることが大事なのではないかと。

あいかわ先生も「論理的に行けばこうなるはずだから」というスタンスで講義されていて、改めて「そうだよなあ」と感じた次第です。

おわりに

憲法の答案をあまり書いたことのない状態で、本講義に出会えたことは自分にとっては非常に幸運だったと思います。

自由権パターンの書き方全般に関して、非常に得るものが多かったからです。

自由権は司法試験・予備試験の憲法ではよく狙われるところで、実際令和3年の予備試験憲法でも「表現の自由」が出題テーマになりました。

さすがに「3年連続で表現の自由が出ることはないんじゃないか」という気もしていますが、ヤマ張れるほどの実力もありませんので……。

短答直前期で思うように答案作成ができない日が続いてはいますが、「自由権パターンはもう大丈夫!」と胸を張れるように今後も精進を重ねたいと思います。

追記

ありがたいことに、予備試験採点実感講義のレギュラー化が決定したようです。5月末より週1回ペースで予備の過去問起案→週末に講義のサイクルを繰り返すことになる模様。鬼だ……。

答案作成時間を週に3回設けるとのことなので、タイミングの合うときに参加して書いていけば、「答案が書けない」という事態を減らすことができるかも。

予備試験の過去問を使ったゼミ形式の講義、それもオンラインってなかなか珍しいと思います。というわけで、予備試験受験生の皆様におかれましては、今後のOLSにも注目ですぞ。

(本文執筆:別宮央都 / 編集:OLS編集部)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?