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ゲームルールの考察:世界最初のTCG、Magic the Gathering (略称:MtG)について

こんにちは、最近MtGほとんどやってなくて、自分が確信をもってこうだ!と思ってることが、実はもはやそんなことはないぜ!みたいなことになってるかもしれないんですが、ただそれでも案外現在でも適用する部分もあるのかなと思ったので、一応、備忘録的に考えたことを書き留めておこうと思います。

MtGとはどんなゲームか

Magic the Gatheringについて大変よく言われることが「世界で最初のTCG」ということです。

TCGとは、「トレーディングカードゲーム」の頭文字を取ったジャンル名で、要は、バラバラで売られているカードを集めて、カードに書かれてる能力を駆使してゲームを楽しむ、というゲームジャンルです。

「世界で最初」というのは割とその通りで、かの有名な遊戯王OCGでもMtGがあったからコミックの中で登場したようなもんだったりするわけで、そういう意味では「すべてのTCGの祖」というのも割とその通りだったりします。

で、こちらのルールなんですが、土地カードというものとクリーチャーカード、魔法カードといった様々な特性を持つカードを40枚とか60枚とかそういう単位で一つにまとめた「デッキ」を作り、そのデッキから手札に取ったカードを使って相手を負かす、というゲームになります。

デッキは、最初によくよくシャッフルし、山札とします。その後先攻後攻を決めて互いに手札を7枚とり、ゲームを始めます。

ほとんどのカードには「マナコスト」といわれるカードを使うためのコストがかかれています。自分のターンにはその「マナ」を生み出す土地カードを自分の戦場に置き、カードのコストを使ってより有利になるように戦うという流れになります。

カードの種類には、「土地」「クリーチャー」「エンチャントやアーティファクトといった置物」「ソーサリーやインスタントといった一回使用限りの魔法」があり、それに加えて「トークン」という戦場に置かれるけどカードじゃないけどカードと同じような役割を持つもの、があります。

基本的には、自分のターンに土地を置き、そこから生まれるマナを使ってクリーチャーを置き、それらを守るために魔法を使い・・・、といった感じでゲームがすすんでいきます。

で、まぁ、ここまで読んでMtGを知らない人やTCGを知らない人はもういいやってなると思いますが、それもしょうがないね、っていうくらいにはルールが大変複雑です。ですのでMtGを知らない人は一度、フライデーマジックやティーチングキャラバンのイベントがある店舗へ遊びに行ってからもう一度この記事を読んでいただきたいと思います。

MtGのルールはなぜ複雑なのか

一つは30年の歴史の重み、ということがあります。

MtGというゲームは数か月ごとに新しい「セット」といわれるゲームバランスをデザインされたカード群が発売されます。そのたびに新しい効果を持つカードが出版され、そのたびにルールの改定が行われます。

もう一つは、ゲームのルールを作成するポリシーとして「誰がやっても同じ結果になること」を大変厳密に守っている、ということがあります。

プレイヤーのターンは「フェイズ」といわれるそのフェイズで行うことが強制されるか許可される場面、というのが大変こと細かに規定されています。「ターンはこのフェイズ通りに進行しなさい、このフェイズでは、この順番でこうやって処理をすすめなさい、この処理はこういう順番で処理を行いなさい」という感じで、本当にその通りにやれば誰がやっても同じ結果になる、ということがルールとして規定されています。

この厳密さを30年間、新しいセットが出るたびにやってきたわけですから、そりゃ複雑にもなるよね、という気がしますが、それでもこの厳密さが守られている、ということはやはりすごいとしか言いようがないと思います。

カード効果のテキストの厳密さ

実は、このポリシーはカード効果が書かれるテキストにも適用されております。

「カードを1枚引く」という効果がありますが、これは「カードを1枚引かなければならない」という意味です。そして「カードを1枚引いてもよい」という効果がありますが、これは同時に「カードを1枚引かないことを選んでもよい」という意味です。そして、「カードを1枚引く」という効果は「カードを1枚引く」というテキストしかありません。(歴史的に表記が揺れることはあります。)

このように、効果とテキストが1対1で対応している、というのもMtGというゲームの大きな特色であるといえます。ここまで厳密にテキストを記号のように扱うゲームはなかなか珍しいです。本来であればそれが普通であるべきではあるのですが、だからこそ、現在でも20年前に発売されたカードが問題なく使えるということが可能であるといえます。

「キーワード能力」という発明

これらのポリシーが突き詰められた結果、「キーワード能力」という概念が発明されました。

「キーワード能力」とは、複数の効果やコストをひとまとめにして「単語化」したもので、この単語が載っているカードはその単語が示す効果を持っている、ことになります。これは、現在ではシャドバなどでも見ることができます。

例えば「果敢」というキーワード能力がありますが、これは「あなたがクリーチャーでない呪文を1つ唱えるたび、ターン終了時まで、このクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。」という効果を持ちます。この長い効果が一つの単語で示されているわけです。

このキーワード能力を採用する最大のメリットは、カード効果欄が非常にすっきりする、ということです。細かいテキストをいちいち書かずに、「この名前の効果はよく使うからこっちを参照してね」ということができるわけです。このすっきりする、というメリットはゲームの利便性と別の解釈の余地を与えないことで複雑なゲームでありながらスムーズに進行可能となっている一因になっています。

MtGをMtGたらしめている「インスタント」

では、なぜ、こういう厳密なルーリングを行っているかという疑問がわいてきます。私は、その大きな理由に「インスタント・カード」の存在があると思っています。

「インスタント・カード」は相手のターン中であっても、許可されたタイミングであればいつでも使うことができます。このいつでも割り込みが発生しうるカードがあるということが、厳密なルールを作成せざる得なかった大きな理由だと思います。

ほかのTCGでもこういった「インスタント・カード」のようなかなり自由なタイミングで割り込みが発生するメカニズムをもつゲームはありません。ただ、この「インスタント・カード」の存在があるからこそ、相手のターンでも気を緩めることを許さない、ソリティアの成立が邪魔される、といった非常に豊かなゲーム展開を醸成しており、私はこれこそがMtGの最大の魅力であると思っています。

もちろん、ほかのカードについてもそれぞれMtGの魅力を高めてるなというものはいっぱいあります。今後、書く機会があれば個別のカードについても魅力を語っていこうかなと思います。

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