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薬剤師のみなこちゃん。


ともだちの話。

中学3年生でともだちになったみなこちゃんの話。私たちは中高一貫の女子校で出会った。女子しかいない特殊な空間で、とにかく彼女はいつだって笑いを追求していた。共学に通ってないからわからないけど、確実に共学では生まれないキャラクター。女子校が生み出したエンターテイナー。教壇の下に隠れて飛び出して先生を驚かしたり、帰り道寄ったマックで私がトイレから戻ってくると、パカパカ携帯の間にサキイカを挟んでニヤニヤしていたり、「ねぇぇ〜〜〜www」っていうのを楽しみながら、時に自分の身体も張りながら、とにかく笑いを追求していた。トマトのキャラクタートマトマンをそこらじゅうに落書きしてたし、謎の菩提樹音頭ってダンスもあったし、そういえば、タップダンスも上手かった。そんなみなこちゃんは薬剤師一家で、文系だったけど薬剤師になることがマストだった。ほんとは舞台女優になりたかったけど、渋々理系選択し薬学部に合格していた。きちんと親の言うことを守って、ほんと偉い。すごい。しかしそこから国試の試験に受かるまでが本当の試練で、卒業と予備校を含めて約10年学生生活にかかった。途中、歳下の妹が先に薬剤師になった。それでも勉強を続けた。そして薬剤師になった。ほんとにカッコいい。元々親にやりなさいと言われたことで、渋々飲み込んだことで、どのタイミングでも、辞めることだって出来たはずだったのに。自分に向いてない苦手と初めから気づいていたことを最後までやり切って乗り越えていた。誰にでもできることではないと思う。夢を追いかける苦労の話とは全然話が違う。本当に尊敬している。薬剤師として今も働いていて、「マジでクソつまんねえ仕事だよ」っていいながら、みんなの薬とか体調の相談にはめちゃくちゃ親身に応えてくれて、カッコいい。その前後、いまだに小学生みたいな下ネタでふざけてるのは変わらないけど。先日、宮古島で中学の同級生の結婚式があって、私もみなこちゃんも他の友達も数名参加した。結婚式の合間にも歌って踊ってふざけて忍者にもなって、初めて会った新婦の大学の同級生もみなこちゃんに夢中だった。新婦が「みなこちゃんは、こんなにふざけてるけど薬剤師なんだよw」って紹介すると、「嘘でしょ?www 絶対劇団か何かの人だよね?薬剤師なの??w」と、驚いてまた笑っていた。夜ホテルの部屋に戻ってベッドに寝っ転がりながら、みなこちゃんが「薬剤師ってさ、ギャップになるんだね。それがギャップで笑いになるならさ、まあ薬剤師でもいいかなって初めてちょっと思えたよ」と、遠くを見つめながら、はにかんでいた。漫画で映画化もされた「ハチミツとクローバー」の有名なシーンで、〝人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった〟というのがあるのだが、それを思い出した。〝人生の見え方が変わる瞬間を初めて見てしまった〟隣で見ていて、15歳の苦労から見ていて、私までジーンときた。親になりなさいと言われて、渋々選んだ職業で、働いてからもモヤモヤしながらも、35歳で何気なく言われたひと言で救われていた。それも励まそうとした言葉とかじゃなくて、「え?w 薬剤師なの?w」が、みなこちゃんにとってはパワーワードだった。それがたまらなくいいなと思った。たまらなく嬉しかった。そんなともだちの話。

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