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聖痕の戦士 第一章 烙印1

五歳の誕生日。もらったばかりの木刀を握りしめ、父さんと母さんの帰りを待っていた。家の前で、焦げ付いたアップルパイの甘い香りがする。母さんの特製だ。

「ただいまー!」

元気な父さんの声がして、俺は嬉しくて玄関まで駆け出した。その時だった。

「ギャアァァアア!」

獣の咆哮と共に、血の香りが鼻をついた。

「父さん! 母さん!」

飛び散る血しぶき。床に崩れ落ちる二つの影。

「う、うあああああ!!」

何もできなかった。助けられなかった。あの日から、世界は赤く染まり、獣の咆哮が耳から離れない。

(絶対に… 絶対に許さない…!)

小さな胸に、復讐の炎が灯った。

夕暮れの薄闇が、辺境の村を包み込もうとしていた。

「はぁ…はぁ…」

ユウキは、息を切らして森の中を走っていた。心臓がバクバクと音を立てる。背後からは、禍々しい咆哮が聞こえてくる。追ってくる魔物との距離は、刻一刻と縮まっている。

「くそっ…!」

ユウキは歯を食いしばり、速度を上げた。十六歳になった彼は、あの頃の頼りない少年ではなかった。厳しい鍛錬を積み、村一番の剣士に成長したのだ。

しかし、相手は、凶暴な魔獣・グリムウルフ。鋭い牙と爪は、人間の体を容易く引き裂く。

(ここまでか…?)

追い詰められたユウキは、覚悟を決めた。

「来い…!」

雄叫びと共に、魔物に向き直る。だが、その一撃をかわしきれず、ユウキは地面に叩きつけられた。

「グハッ…!」

血を吐きながらよろめくユウキ。巨大な牙が、彼の肩をかすめる。

「まずい…!」

力が… 入らない…。

(このままじゃ… 死ぬ…!)

意識が朦朧とする中、ユウキは、胸に走る激痛に襲われた。

「ぐあああああ!!」

体が熱い。熱い! 何かが… 溢れ出す…!!

「これは…?」

ユウキの体に、蒼い光が浮かび上がる。それは、まるで、彼の心臓に刻まれた傷跡をなぞるように、複雑な模様を描いていた。

「グオォォォォ…!」

魔物が、とどめの一撃を放とうとした、その時。

蒼い光が爆発的な閃光を放ち、魔物を吹き飛ばした。

「な、なんだ…?」

ユウキは、自分の身に起きた異変に、ただ、呆然とすることしかできなかった。

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