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地球のどこかに自分の痕跡を残す

生きている間に成し遂げたいこととか、名誉名声とかそういう華やかなものに特に興味を持たずにいたので、時々、自分が生きた証を何かの形で残したいと話す人に会うと、そんなものなのかなとボーっと聞いているばかりだった。

私は、スペインのグラナダの北にあるイジョラという日本人は誰も知らないであろう地方にあるオリーブ園からオリーブオイルを輸入していて、コロナ前まではほぼ毎年オリーブの収穫時期になると、その年のオリーブオイルのテイスティングを兼ねて現地に出向いていた。

小さな町なので、そこでオリーブ園を持っているとなると(スペインには代々続く家族経営のオリーブ園が沢山ある)それなりに町の名士みたいで、ある時、市長が、毎年やってきては希少な在来種のオリーブオイルを買って行く日本人に町を案内したいと言ったとか言わないとかで、気がついたら復元中のお城に案内されたり、市庁舎の中にまでお招き頂いたりしたことがあった。オリーブ園でテイスティングしたり、実の様子を見たり、来年の購入分を決めたりするために一日取っていたのに予定もへったくれもなくて、オリーブ園の営業のホセ君に聞いても、なんでこうなったんだろうねと首をかしげるばかりで、要領を得ない。スペインへようこそ(って感じ)。

極めつけは、市庁舎で市長のお部屋に案内されて、何が始まるのかと思ったら、セレモニーとまではいかずとも、市長のご挨拶を頂き、写真にある革製の重厚なゲストブックにサインをするという、貴重な体験をさせて頂いたのでした。

あとからふと、自分の名前を飛行機で12時間も飛んで行くような場所に書き残してきたことがなんだかおかしくて、人生で自分の痕跡を特に残したくないと思っていたのに、なんだか、かっぱえびせんが病みつきになるみたいに(例えが、古くてすみません。分かる人とそうでない人がいますよね、きっと)、じわじわと私の中で、あちこちに痕跡を残したい欲求が芽生えてきているのを感じているこの頃。noteを書き始めたのもそれがあってのこと。それまで、何度もnoteを始めてはモーチベーションがなくてすぐに止めてしまっていたのに。この世への未練とか自己欲求とかそういうのではなくて、
なんだか面白いゲームを考えついたような感覚。

ずっと昔の遠い過去の誰かの生きた切れ端のようなものを、私も見つけたいなと思う。見つけましたよ、とその人に言ってみたい。

P.S. これを書きながら、痕跡残しと痕跡拾いについてはもっと詰めてみたい気がしている。時間の話。一話完結ではなさそうな予感。





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