コオロギ食った話

ま゛に゛あ゛わ゛な゛か゛っ゛た゛!!!

我が推し、月ノ美兎委員長による"罪"の発表から1日、私は深く後悔していた。

【お手軽】罪深い創作料理を発表します【健康は保証しない】 

https://youtu.be/Kd_6K_nJPFc

テキトーハイカロリー美味……そんな罪を見出す時間も在宅勤務の終了で奪われ、在るのはただ久しぶりに満員電車内で立ちぼうけしたせいでクッソ痛え脚をロキソニンで押さえ込む土日。

そもそも実家暮らしで料理なんてついぞしたことないのが原因な気もするが、推しの企画にも参加できない私なぞ、委員長が幼少期に食んでいた学校の裏の雑草以下の価値でしか無いのである。

というわけで手の掛かったローカロリー美味であるところのコオロギを食べに行きました。

今回お邪魔したのは、東京は中央区馬喰町に店舗を構える"ANTCICADA"さん。日曜日にコオロギラーメン専門店と化す、虫、野草、ジビエ料理のレストランです。

虫の脚を用いたフォントとロゴが、昆虫……というか大地の恵みを美味しくいただくことに本気を感じさせるナイスなお店です。JR馬喰町駅、または新宿線馬喰横山駅から地上に出て神田川方面、つまり上(?)に進むと、やや入り組んだビル区画の中腹にあります。入り口がちょっとわかりにくいけど、Googleアース使えば一発でわかるら!

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入り口の外観はこんな感じ。映ってないけどこの入り口潜ってすぐ左手にぶっとい木の枝が取り付けてある扉があるので、勇気を出して引っ張ってみてください。私は連れと一緒に「ほ、ほんとにここであってるよな……?」と5分くらい周りをうろうろしてました。

あとここに立っている時点で既に『なんだか美味そうだけど、今まで食ったどの食べ物にも当てはまらない香り』が漂っている。

中に入ってみるとビックリ、オシャレなカウンターを囲むように小学校の理科室の様な容器がずらっと並んだ棚が配置してあって、優しいコオロギの音色が店内を包んでいました。初デートで訪れたい感じが3割くらい湧きます。残りの七割は彼女にドン引きされる確率です。

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普通に果実をアルコールにつけてあるっぽいものから、容器に●●(虫の名前)醬って書いてあるものも。調味料も自家製なんすね!

奥にはお店を満たす音色の主が鎮座ましましておりました。白いのが西洋のコオロギ、黒いのが日本にもいるコオロギらしい。

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カウンターに座って物珍しさにキョロキョロしていると、お店のお兄ちゃんがやってきてお品書きと説明をくれました。専門店って聞いてたから『頑固一徹!メニューはコオロギラーメン一杯千円のみ!!』みたいな雰囲気なのかと思ってたら全然違った。他にも虫を使ったお料理が幾つかあったので、「とりあえず全部くれ!」と言うと「コンプリートですね!」と返してくれました。次からはコンプリートセット下さいって頼んだら良いかも。(良くない)

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アリサンのオブジェを眺めながら待つこと少し、一品目が出て来ました。

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イナゴを用いた自家製食べるラー油の丼です。先に言っておくと、ここで出てきたお料理は全部美味かった。メシに乗ってるのは上から順に、食べるラー油withイナゴ、白髪ネギ、厚切りの豚肉ソテー(ハムだったかも)。この丼は本当にクセのない仕上がりで、普通にたべるラー油の乗った豚丼食べてる感覚です。唯一イナゴをかじった時にラー油の具とは明らかに異なるカリカリサクサクとした独特の食感があるくらいで、後の料理でも出てきますがイナゴは本当に風味が軽いです。何かあったかといえば、自分の歯並びが悪いせいで歯に翅が挟まるくらいで、ペロリと頂けました。

お次、というか丼の写真でも見切れてるので同タイミングでお茶が出てきました。2杯。

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このお茶はちゃんと飲み比べセットを注文して出てきたもので、カイコのフンを煮出して作ったお茶なのだそう。後ろのビンに書いてある通り、原産地が中国のものと、日本のアシザワ養蚕さんのものとで別々のコップに注がれており、見てわかる通り色味が全く異なります。(接写するの忘れて写真がこれ以外無い)

漢方として用いられることも多いというカイコのフン、お茶にした時のお味はどうかと言うと、スッキリとした味わいでとても良い。感覚的にはジャスミンティーとほうじ茶のいいとこ取りみたいな味ですが、ハッキリと独特の香りもあります。クセというわけではなく、こういうお茶ですと納得できる味と香り。つまり美味い。

産地による味の違いはとてもわかりやすく、中国産の方が香ばしさが強いです。フン現物も見せてもらいましたが、やはり中国産の方が褐色が強い気がします。めちゃくちゃ体に良さそう。個人的には日本産の方が好み。

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茶が美味え美味えと喚いていると次なる一品が運ばれてきました。こ、こいつは!知っているぞ!

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はい、皆さんも昆虫食と言ったら教科書に出てくる彼らを見たことありますね。虫の佃煮です。

左上から時計回りに、コオロギ、カイコ(のサナギ)、ざざむし、イナゴとなります。ざざむしとは河川棲虫の幼虫を総称するものらしいです。つまりごった煮だな!(脳死)

俺こういうのを求めてここに来たんだよな!と脳内の自分の肩に馴れ馴れしく腕を回しつつ、コオロギから口に運んでいきます。

甘い。いや、佃煮なんだから甘じょっぱいのは当たり前なんだけど、それはそれとして甘みのランクを一段上に引き上げるようなコクのようなものを感じる。頭の中で類似食品を検索する事数秒、弾き出された答えは"バター"でした。もしかしてコオロギって油分が多いのか……?

続いてイナゴ。さっきぶりだね、と気持ち悪いフレンドリーさが頭をよぎりましたが、それはそれとして食う。

カリッ!!!サクッ!!!駄菓子か君はってくらいイナゴは食感が小気味良い。一方でコオロギにあった強い風味と旨味はあまり感じられず、佃煮にしてしまうと100%佃煮の味になります。揚げ餅の一噛み目を延々と繰り返せる面白食材です。個人的にはポップコーンみたいに塩振って食いたい。

続いてカイコのサナギ。繭の中から取り出されたそれは佃煮にされても形や色を失っていないです。この中だと一番元がどんな生き物だったかわかる。一緒に和えられてるのは松の実かしら。

口の中に放り込んで歯で割ってみると、肉感がかなり強い。タンパク質の塊といった感じで、正直噛み潰した瞬間汁が出るのかと思って覚悟してたんだけどそんな事は一切なかった。天然のソーセージかな?味は個性的で例えようがなく、佃煮にしてここまで本来の味が残るなら元のまま食べたら向こう一週間はカイコのことで頭いっぱいになりそう。個性的だと言ったが不味いわけではなく、なるほど肉の代用として出されても問題は無いなと思う味だった。

最後はざざむし。結論から言うとコイツだけは唯一食味にクセを感じた。川の生き物って特有の香りがあると言うけどこれのことなのか……?川魚では感じたことないけど。

食感は煮染めてギュッと詰まった何某かといった感じで、舌触りや歯触りでは豆鼓が一番近い。味は佃煮なので当然佃煮味なんだけど、前述のクセが凄く、口の中が特有の風味で占拠される。その風味自体もどことなく人工物っぽくて不思議。こういうもんだと思って少量楽しむなら全然アリだけど、ご飯の上にもりもりかけられたら食い切れないと思う。

それっぽいものが食えてテンションが上がってる我々の元に、可愛らしい見た目のお料理が運ばれて参りました。

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マジで破られる5秒前。

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パカァ。

これはカイコを豚肉と生クリームを合わせて腸詰めにしたもので、その名もシルクソーセージ。外見は勿論、中を見ても虫要素は皆無です。

食べてみると極めて優しい口当たりと味わいになってます。塩味も強くなく、むしろ繊細な味わいのお酒飲む時に一緒に出てきてくれると嬉しい感じの甘み。かなり生クリームが前面に出てきているので、佃煮の時に感じたカイコの風味はあまり無く、純然たるクリーミーさです。多分だけどサナギじゃなくて幼虫を使っていて、幼虫はそこまでカイコ特有の風味が強くないんだと予想。つまり詳細を聞き忘れました。ともかく美味いし虫感が無いので、ここまできて『やっぱ虫はちょっと……』と日和ってしまった人はこればかりを貪ることになるでしょう。

こんなに料理として高次元の味わいの物が出てくるのかと興奮していたら、更にテンションを上げてくるモノが運ばれてきました。

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ででん

メインディッシュのコオロギラーメンです!これを食いに来た!!

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ラーメンの上にあしらわれたミツバの中央に、先程載せた写真にも映っていた合唱団員の白コオロギさんと黒コオロギさんの素揚げが乗っています。

何とこのラーメン、その構成要素のほぼ全てにコオロギがふんだんに使われています。出汁には大量のコオロギと少量の昆布、シイタケを、カエシには自家製のコオロギ醤油、油もコオロギ油、麺にまでコオロギを練り込んであると言う徹底ぶり。これ一杯で200匹以上のコオロギを口に運んでいる計算だそうです。普通の人は一生にこんな量のコオロギ食わんらしいので、人として数段格が上がった感じがして誇らしいです。みんなも今までに食ったコオロギの数でマウントを取ろう!

さて口に運ぼうとおもうのですが、その前に香りが凄いです。お店の前に立っていた時に香っていたのは間違い無くこれの匂いで、甲殻類を隠し味に使った醤油のようであり、その割には海老とも蟹ともつかない、海の要素を感じない謎の香りがします。しかしながら本能的にコイツは美味いと知っている気がするのは何とも不思議です。

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いよいよ麺を啜ってみます。ハムッ ハフハフッ、ハフッ‼︎

うっま。美味いがなんだこれ。何味なんだ?

スープの味のベースとなっているであろうコオロギ醤油ですが、ここから既に未知のエリアです。というのも、コオロギ醤油の原材料はコオロギ粉と米麹と塩なので、大豆ベースでないこれはそもそも塩味と発酵食品である以外は一般的な醤油と共通点が無いです。そんな調味料が味のベースにあるので、どこをどう斬っても"コオロギ味"と言うしかない味がします。日本のラーメンベースはこれを以って鶏ガラ、豚骨、魚介、コオロギの4大巨塔となります。

次に麺ですが、こちらは何も初めての要素が無く、とても旨いです。プリッとして歯切れ良く、適度なコシとちぢれでスープとよく絡む。コンビニとかスーパーで買う適当な麺より何倍も上等ですね。練り込まれているコオロギ粉は味に何の影響も及ぼしてない感じですが、麺の水分量や食感の調整に役立っているのかもしれない。というかこの麺が味とか風味持ってたとして、このスープと掛かってるコオロギ油がめちゃくちゃ強くてわかんないと思う。

美味い美味い言いながら完飲しました。ちなみにコオロギの素揚げはちょっと時間をおいてから食ってしまったのでふにゅっとした食感で、コオロギ味でした。この時の私にさっさとかじれと喝を入れてやりたいです。

仮に虫臭かったりエグかったりしても話のタネになるからいいかな、みたいな考えでいたんですが、これじゃあ食べログに星4以上で載る美味しいラーメン屋さんです。また行きたくなっちゃうじゃん。

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ダシに使われるコオロギくんと、だしがらも見せていただきました。200匹以上というのもさもありなん。

ここまで食べ慣れないものでお腹を膨らませたせいか少し胃がびっくりしている気がします。そんな我々の元に癒しの食物が……。

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美しい黄金色。

スイーツの時間だああああああ!!!

これの名前は天然蜂蜜の半熟カステラ!これを食べる私は中年おっさん!ということでデザートです。見た目からして上物です。半熟感がまたわかるのも良い。

スプーンで掬ってみると、半熟のところからこれでもかというくらい蜂蜜が溢れます。こんなんどうやって作るんや……。口に運ぶと蕩ける食感の後にとても控えめな蜂蜜の甘さが舌を覆います。蜂蜜自体の甘さが本当に上品なので、糖分強化パッチとしてふわふわの生クリームがいっぱい敷かれている感じです。先端は半熟でじゅわとろっ!とした食感ですが、ピザで言う耳の部分辺りはギュッと詰まっていてこれまた美味しい。興奮していた胃が急速に落ち着いていく感覚を覚えます。甘味は神。

この蜂蜜は所謂"ホンモノ"で、ちゃんと花の蜜オンリーで作られているものだそうです。最も手軽に手に取れるタイプのハチミツは濃い砂糖水を蜂に採らせたりしているので、それとは明らかに違う元々の花由来の味がします。何の花かはわかんなかったけどな!

これにてお料理は全て平らげました。二人で行ってお値段は6350円なり。レシートは思い出に取っときます。

総評すると"美味い変わりダネを食わせてくれるカジュアルレストラン"です!昆虫食に対するゲテモノという風潮を払拭して、食の対象としてフラットに見るきっかけになればとの思いがあるそうですが、まさにその体現と言えるお料理の数々でした。

食は冒険だという言葉と、我が推しであるところの月ノ美兎委員長の『一緒に人生を神ゲーにしていきましょう』という言葉に触発されて、食の経験値を得るべく行ってみた昆虫食でしたが、とても良い経験になりました。これで次から「あ、コオロギの匂いする」って堂々と言えます。

委員長の下りがやや強引じゃないかという問いに答えると、そもそもANTCICADAさんを知ったのが野食家の茸本朗さんのブログ記事を見たのがきっかけで、彼は私が知る限り日本で2番目にクリオネを食べた人なんですよ。その茸本さんは小林銅蟲さんと知り合いで、クリオネのゲキマズエピソードを茸本さんから聞き及んでた銅蟲さんが委員長にクリオネ食わせたんだと思うんですよね。あながち関係なくもなくない?閑話休題。

元記事:https://www.outdoorfoodgathering.jp/fish/baramutsuantcicada/

ほんとに美味しかったので、みんなも是非行ってみよう!遠いよって人はお取り寄せも出来るよ!私はコオロギビールを取り寄せました!

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最後にお店の中で撮った写真を載せまくって終わりにします。

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