雨

目に映るのは意味を持たない、持ってほしくない文字列だった。ただ茫然としていた。スマホを閉じて、もう一度開いて、sumikaを流した。

「リグレット」

君の音を聴かせてよ、それだけでいいんだよ　涙が止まらなかった。この曲は全然そういう意味の曲じゃない。今となってはそういう風にしか聴こえなくなってしまったけど。

君の音を聴かせてよ
それだけでいいんだよ

sumika「リグレット」

一年が経った今日も雨だ。まだ晴れそうにない。悲しい、でもその悲しさを言葉にできない。あの日からずっと葛藤している。隼ちゃんがいなくなった後のsumikaを、物語として悲しく美しく、自分勝手に解釈しようとしている気がする。なんだか泣くに泣けない。自分勝手な解釈なんてそんなことするはずがないのに。

でも、あまりにも物語のようだった。復帰後初のワンマンライブで雨が降っていたこと。そんなライブが「雨天決行」ではじまり「雨天決行」で終わったこと。隼ちゃんが遺した「明日晴れるさ」の歌詞。

明日晴れるさ
上手く泣けるようにさ
僕の歌でごまかしていいから

sumika「明日晴れるさ」

隼ちゃんのギターの音が入った最後の曲、「Starting Over」でsumikaが再出発したこと。全部全部、物語のようだった。隼ちゃんがもういないこともただの物語、ただのフィクションだったらいいのに、ふっかつのじゅもんが本当だったらいいのに。

ありがとうも さようならも
此処にいるんだよ
ごめんねも 会いたいよも
残ったままだよ

嬉しいよも 寂しいよも
置き去りなんだよ
恋しいよも 苦しいよも
言えていないんだよ

sumika「春夏秋冬」

また風が吹いて 君が急かしたら
そろそろ 行かなきゃ 僕の番

sumika「春夏秋冬」

隼ちゃんはきっと急かしたりはしない。そろそろ行かなきゃ、いつまでも後ろ向きではいられない。けど、残ったままの、置き去りにしたままの、言えなかったままの感情を、わたしはまだ、どうすることもできない。

そんな感情の備忘録として。