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いつかの盂蘭盆会



早朝の寺 まだ門は閉じられたまま…
脇の小径をぬけ 水場へ
少し苔づいたプラの手桶と柄杓を取る 「飲めません」と書かれた蛇口を回すと
先乱れた水が勢いよく出る 

コンクリートの階段をてくてく登る
あちこちで除かれた草が何日も経って干上がっている 階段を登れば登る程 てっぺんが尖った墓石が目立つ だいたいの位置は聞いていたが 夜明け間もないので東西があやしい 
教えられた墓石の色形を頼りに探す 
同じ名字の石もちらほら… 
お互い知り合いでなくとも
遠く繋がる縁もあるのだろう…

しょんぼりの花を筒から抜き
茶色くなった水をあらためる
石は まだ日も昇らないのに暖かい
上から水をかけるとズボンの裾がビショビショになる 鳥の忘れ物をゴシゴシ洗う 腰掛けた先の草を2~3取って 残り水で手をすすぐ 門前の花屋はまだ起きてなかったので 持って来た菓子だけを
供えた
奥の森でカラスが ひと鳴き…
見たことのない菓子折りに
気を はやらせて「カァ」…

仏様は念仏宗 
あやふやな阿弥陀経を
覚えているところだけ唱えた 

心鎮まるまで 道 遠し

お家は 今 誰も住んでないらしいから もう寄ることはない 
いよいよ遠退いてゆく面影
そして
最初で最後になるかも知れないお参り…… 

なんとなし…
炎暑だけど冷たいヤツと
言われそう…… 

胸 残る
いつか見た朝焼け……


このところ 仕事でも生活の面でも良くないことが続いた

もしかしたら
あの見晴らしに
呼ばれてるのかも……

ぐずぐずっと
普段 気にもかけない渋滞情報を
調べたりして……
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#忘れられない旅
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