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「世界史は化学でできている」に出てくる化合物の構造式(4) 尿素

「1828年、ドイツの化学者フリードリヒ・ウェーラー(1800-1882)は、無機物のシアン酸アンモニウムを加熱して、有機物の尿素を人工的につくり出すことに成功する」


尿素

 ウェーラーによる尿素の合成は、有機物を最初に合成した例としてどの教科書にも必ず載っているが、実際の状況は上記とはやや異なるようだ。大阪教育大学の岡博昭教授は、この発見の詳細を調査した結果をホームページで発表している(「ウェーラーは何をしたのか -尿素の合成に関して-)。これによると、ウェーラーの当初の狙いはシアン酸アルカリとアンモニウム化合物(ともに無機物)からシアン酸アンモニアウムNH4OCNを合成することであったが、得られたものはシアン酸アンモニウムではなく尿素NH2CONH2(有機物)であり、これが当時は有機物と分類されていた、ということである。

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~hiroakio/papers/urea.pdf

 「有機物」という名称は「生気論」すなわち「生命には非生物にはない特別な力がある」とする歴史的な概念に基づいており、その後の有機化学の発展の中で生まれた炭素化合物には生命が作り出すことのできない人工的な化合物も多い。一方で、有機化学は「生命が作り出す天然物を人工的に合成する」ことへの挑戦の歴史でもあり、ウッドワードやコーリーなどへのノーベル化学賞はその挑戦の証でもある。

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