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リチウムに関する最近のニュース(2022年3月分)

リチウム市場の将来予想

 リチウム生産世界第1位のアルベマールは、2022年3月16日のJ.P. Morgan Industrials Conferenceで業績見通しとリチウム市場の将来予想を発表しました。2021年は世界のリチウム需要は約50万トン(炭酸リチウム換算)でしたが、2025年には150万トン、2030年には320万トンに達すると予想しています。リチウムの主要用途であったガラスや触媒向け(下図のindustirual)は2030年には1割以下となり、9割以上がEV向けとなります。

Albemarle Corporation at the 2022 J.P. Morgan Industrials Conference
March 16, 2022 at 9:40 AM EDT

https://investors.albemarle.com/static-files/59ce30cc-70f0-4973-a8ed-034b0aaf5d81

リチウム価格は60ドルを突破

 リチウムの価格の上昇は続いており、スポット価格が60ドル(炭酸リチウム1kg当たり)を突破、1年前から比較すると5倍になっています。3月になって値上がりは鈍化しておりますが、引き続き厳しい市況が続くと見られます。

www.mining.com

ランクセスのリチウム参入

 拡大する電池用化学品市場にむけて、大手化学企業の参入も相次いでいます。ランクセスは2021年にリチウムイオン電池電解質への参入を発表していますが(製造は子会社のサルティゴ)、米国アーカンソー州での炭酸リチウムの製造のFSを2018年から行っており、2022年中に結論を出すようです。

Responsible Lithium Partnership

 BMWはチリの「Responsible Lithium Partnership」プロジェクトへの参加を発表しました。このプロジェクトは地元関係者とともにリチウムの持続的開発の将来ビジョンを策定しようというもので、すでにBASF、Mercedes-Benz、Daimler、Volkswagenなどが参加しています。

リチウム塩はどのように作られる

 オーストラリアなどにあるリチウム鉱石の採掘と違い、チリのリチウムはアンデス山脈からアタカマ砂漠の岩塩層に流れる地下水をくみ上げる方式で、水脈の微妙なバランスを保つことが持続的なリチウムの産出に不可欠です。以下のビデオを見るとアタカマのリチウム塩湖の操業の実際がわかります。地下水をくみ上げた後は「塩田」と同じ古典的な技術で炭酸リチウムを生産します。

有機リチウムイオン電池

 現行のリチウムイオン電池は正極材料にコバルトが用いられていますが、コバルトはコンゴなど紛争地域を産地としており、また2050年頃にも枯渇するのではないかといわれています。新たな正極材料として有機リチウムが注目されており、東北大学の小林教授らは「クロコン酸」を正極材料に用いて4Vを超える高い電圧で有機リチウムイオン電池が動作すると発表しました。有機材料の強味は分子設計で機能を改良できること。今後の展開に期待します。




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