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技術士第一次試験問題 基礎科目 「DNA」

 令和3年度の技術士一次試験、令和4年度の技術士二次試験に合格し、技術士(化学分野)になりました。自分の試験勉強のために過去問を解析したメモをもとに、分野別の出題傾向、解答のポイントなどをNotesに掲載しています。

 バイオテクノロジー関連では、「DNA」について毎年出題されますが、同じ問題が繰り返されることが多いようです。

平成27年度

正答 ③

 塩基の相補性の組み合わせはシトシンとグアニン、チミンとアデニンなので、相補鎖ではアデニンが20%、グアニンが35%となる。同じ側の鎖でシトシンとチミンの和が55%だから、アデニンとグアニンの和は45%になるが、アデニンとグアニンそれぞれの数値はわからない。これらの状況から、適切なものは③しか残らない。

平成28年度

正答 ③

アで水素結合を選べば、選択肢は③か④に絞られる。「DNAは核酸」「ペプチドはアミノ酸」とわかれば、イの段階でで③に決定できる。

平成29年度

正答 ①

各選択肢の中から「適切でないもの」を選ばなければならない。バイオテクノロジーを専門としない人にとっては難問である。①以外の選択肢のどこが「適切でない」のか。

② 遺伝子組換えインスリンが登場したのは「1980年代」である。
 1921年にバンティングとベストによってすい臓からインスリンを抽出され、1923年には早くもインスリン製剤が発売された。しかし、当時のインスリンはウシやブタのすい臓から取り出されたもので高価であり、また不純物やヒトインスリンとのアミノ酸配列の違いなどによる副作用の問題があった。1973年、大腸菌に外来遺伝子を人工的に組込み、その大腸菌は外来遺伝子に対応したタンパク質を造る技術が開発され、1979年には組換え医薬品第1号として、米国ジェネンテック社が世界で最初に大腸菌で生産させたヒト型インスリンを発表した。
 この歴史を知らないと②を排除できないが、難しい選択肢といえる。

③ ゲル電気泳動で、DNAの断片は「陽極」に移動する。
 DNAを構成するヌクレオチドは荷電したリン酸基をもつため負の電荷を帯びており、ゲルの片側にDNAを注入して電流を流すと、DNAは「陽極」に引き寄せられて移動する。
 負電荷を帯びている「DNAの断片」の化学構造がイメージできれば③を排除できる。

④ 制限酵素EcoRIによるゲノムDNAを切断では、DNA断片は同じ長さになるとは限らない。

⑤ DNAライブラリーとは、断片化したDNAをベクターに組み込んだクローンのコレクションである。組み込むDNAの種類によってゲノムライブラリーとcDNAライブラリーがある。ゲノムライブラリーはゲノムDNAを断片化し、ベクターに組み込んだものである。一方、cDNAライブラリーはタンパク質をコードするmRNAに相補的なcDNAをベクターに組み込んだものなので、発現していないゲノム領域に対応するDNA配列は存在しない。

令和元年度

正答 ④
選択肢の並びが違うだけで、平成28年度と同じ問題である。

令和元年度(再)

正答 ③

 平成29年度と類似の問題である。

①は平成29年度の②と同じ。遺伝子組換え技術が登場したのは1980年代。

② ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の詳しいメカニズムがわからなくても、「2倍2倍と増えていく」ことがわかれば、「30倍」でなく「2の30乗倍」になることはなんとなくイメージできる。

④ 平成29年度の④と同じ。

⑤ 平成29年度の③と同じ

令和2年度

正答 ④

① DNAの熱変性で切断されるのは共有結合ではなく,水素結合である。

② 非特異的なアニーリングが起こりやすくなるのは,温度を低くした場合です。

③ 増幅したい配列が長くなるにつれて,伸長反応時間は長くする。

⑤ 両端にプライマーの塩基配列が含まれる。

令和3年度

解答:②

進化に関する学説への理解が必要な難問である。
① アミノ酸のコドンを終止コドンに変える変異は「ナンセンス突然変異」または「終止変異」という。中立突然変異は木村資生の「中立進化説」における突然変異であり、分子生物学の用語ではない。
③ 鎌状赤血球症では、βグロビン遺伝子配列の「変異」により、アミノ酸配列で6番目のグルタミン酸がバリンに置換されたβグロビンタンパク質が作られるようになっているとわかっている。おそらく「欠失」が不適切を思われる。
④ ギブアップ。専門の方の解説を乞う。
⑤ X線や紫外線、化学物質は遺伝子突然変異の原因になる。

令和4年度

正答 ⑤

数字の設定が異なるだけで、平成27年度と同じ問題である。

令和5年度

正答 ④

選択肢の順番が異なるだけで、令和2年度と同じ問題である。


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