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リチウムに関する最近のニュース(6,7月分)

私用多忙につき6月の投稿をスキップしてしまいました。リチウムについての最近のニュースをお伝えします。

リチウムの高騰続く

 リチウムの高騰は続いており、7月28日の化学工業日報によれば、炭酸リチウムで90ドル/kgを超え「100ドル越えは時間の問題」となっています。SQMの前副社長Daniel Jimenezのインタビューによれば、EV需要の増加は想定通りであるものの、新規のリチウム資源開発が予定通り進んでおらず、特に鉱山のプロジェクトが環境問題で遅れているとのことで、「リチウム価格上昇の余地はまだある」としています。

 このようなリチウムの高騰はEV市場の拡大を妨げることは無いのか? 答えは「ノー」、リチウム高騰はEV市場拡大を妨げないという解析結果が報告されています。リチウムはかつての10倍の価格になったが、それによるEVの価格上昇は3-5%に留まり、現在のリチウム相場は2025年まで続くとみられるとのことです。

自動車会社自らがリチウム調達

 電池会社でなく、自動車会社が直接リチウム調達に乗り出すニュースも増えてきました。トヨタグループでは豊田通商がアルゼンチンのオラロス塩湖での炭酸リチウム生産を2014年から行っておりますが、これに加えアメリカのネバダ州にあるリチウム鉱山からの調達も発表しました。もっともこの鉱山は生産開始が2025年なので、予定通りに進むことを期待します(リチウム資源開発はたいがい遅れる)。

 ゼネラル・モーターズは、アメリカのリチウム生産企業リベント(業界的にはライベントという方が多いかも)に1億9800万ドルの前払い金!を支払って6年間のリチウム供給を確保します。金属の供給保証の取り付けに現金を前払いするのは鉱業界では異例とされています。トップ画像はアルゼンチンにあるリベント社のリチウム塩湖の設備です。

 ステランティス は、フランスのプジョー・シトロエンとイタリアのフィアット・クライスラーが合併した自動車会社です。ステランティスは、ドイツのライン川上流にあるアッパーラインバレー塩水採取場での地熱エネルギーを利用した水酸化リチウムの生産拡大に投資します。化石燃料を使わずに生産された「グリーン・リチウム」への投資です。

リチウムは有害物質か

 EUがリチウムを有害物質として分類すべきか検討しているニュースがあります。あまり知られていないかもしれませんが、炭酸リチウムは躁うつ病の治療薬として長年使用されています。欧州化学品庁は医薬として使用されているリチウム塩の研究を根拠に、リチウム塩を人の健康に有害な物質に分類することを提案しています。これに対し金属業界などの団体は、リチウムへの暴露と発達への影響は「関連性がかなり弱い」として反論しています。現在はEU加盟国が意見を提出している段階で、最終決定は今来年初めになる見通しです。業界団体はEUへの書簡で、リチウムを有害物質に分類すれば欧州のエネルギー転換目標に重大な影響を及ぼすこと、法制化されれば加工や保管に関する規制が厳しくなり、関連企業のコスト増につながることを主張しているようです。


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