化学産業とSDGs 「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」
日化協SDGsタスクフォース資料の「関連する化学産業の活動」
建築資材、輸送機器用素材等多くのインフラ用素材を提供している。数々の革新的機能素材の提供 を通じて、各産業におけるイノベーション全般を支えている。タッチパネルや光ファイバーなどの IT関連素材の供給を通じて通信インフラの整備にも貢献している。
様々な切り口が考えられるSDGsの9番ですが、日化協はまず「インフラ用素材」に焦点を当てました。意外に知られていない化学品の「インフラ用素材」をご紹介しましょう。
ポリマー改質アスファルト
道路の舗装材料のアスファルトは石油を精製した残りの重質成分ですが、それだけではありません。施工時の流動性確保や施工後の耐久性、また最近は騒音防止や透水性などを目的として、ポリマーが混ぜられています。代表的なものはSBS(スチレンブタジエン系熱可塑性エラストマー)で、常温でゴム弾性を示し、高温では熱可塑性樹脂と同様な可塑性を示す物質です。SBSはゴムタイヤの素材でもあり、タイヤと道路の双方でゴムが重要な働きをしていることがわかります。
酸化チタン光触媒膜材
道路の次は壁面保護の最新技術を紹介します。星野リゾートは2022年4月22日、同社が18年から展開しているOMOブランドと呼ぶ都市観光ホテル「OMO7大阪」(大阪市浪速区)を開業しました。特徴的なホテルの白い外観は、5265枚の「フッ素樹脂酸化光触媒膜」です。外装膜は、日射など外からの光のうち78.5%を反射・拡散して、窓から客室内に入る日射量を30~45%軽減します。
酸化チタンの光触媒効果は「本多-藤嶋効果」と呼ばれ、すでに多くの建築外装に応用されている日本発の技術です。現在は弟子の東京大学の橋本教授のもと、さらに発展を続けています。
炭素繊維強化樹脂(CFRP)
日本企業が技術でも売上でも優位を保っている素材が炭素繊維です。下記の記事によると炭素繊維のシェアでは日本勢が圧倒的に強く、東レが30%、帝人15%、三菱レイヨン10%となっています。
炭素繊維の主な需要は航空機向けでしたので、当然ながらコロナ禍による需要減少に苦しんでいます。新たな分野として注目されているのが「風力発電」です。風力発電の発電効率向上のため、発電翼の軽量化ニーズが高まり炭素繊維の採用が増えています。東レによると、風力発電翼向け炭素繊維の需要量は今後も年率10%超の成長が見込まれています。
炭素繊維複合材料(CFRP)は、風力発電機のブレードの「スパーキャップ」に使われています。スパーキャップとは、主桁を構成する補強板のことです。直径が100mを超えるような大型の風力発電のブレードには、CFRPが多く使用されています。従来のガラス繊維複合材料の場合、ブレードのたわみにより支柱にぶつかり破損につながるリスクがありますが、CFRPはこのリスクを減少させます。
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