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技術士第一次試験問題 基礎科目 「技術史」

技術史第一次試験の基礎科目では、必ず「技術史」に関する問題が出る。確実に点が取れる問題であるが、基礎的な知識は教養として備えていないと正答を逃す。

平成27年度

正答 ④

 ②のホイヘンスと③のアークライトを知らない人は、このどちらかを選んでしまうかもしれないが、①のガリレイと⑤のイーストマンは大丈夫だろう。④は、ベクレルが単位になっているくらいだから正しい組み合わせに一瞬見えるかもしれないが、放射性元素ラジウムを発見した人はマリー・キュリーで、ベクレルが発見した放射性元素はウランである。

平成28年度

正答 ④

 雷(1752年)-周期表(1869年)-ラジウム(1898年)-三極真空管(1906年)-トランジスタ(1947年)の順である。
 アメリカ独立にも貢献したフランクリンの研究が18世紀であること、トランジスタが戦後の発明であることはまず自明として押さえた上、ほかの3発明の内容を考える。
 メンデレーエフの偉大な点は1869年の周期表の発表を通じて、多くの未発見元素を「予言」したことである。周期表発表から33年後の1902年、メンデレーエフは放射能を発見したベクレルと、 ポロニウムとラジウムの 2 個の放射性元素を発見したキュリー夫妻を訪ね,放射線元素の存在を自ら確認して,翌年,周期表を改訂した[i]。(ア)と(イ)の順番が確定すれば、④が正答として導き出せる。

平成29年度

正答 ⑤

「不適切なものを選ぶ」設問は、個別の発明に関する知識がしっかりしていないと解答が難しい。正答を選ぶポイントはエジソンとテスラの「電流戦争」で、エジソンが直流、テスラが交流の開発を進め対立したことを知っていれば容易に解答できる。

平成30年度

正答 ③

 「ワットによる蒸気機関の改良」は1769年、「ベルによる電話の発明」は1876年、「ヘルツによる電磁波の確認」は1888年、「ハーバーによるアンモニア合成」は1906年、「ハーンによる原子核分裂」は1938年となる。これをすべて覚えることは難しいと思われるが、ざっくりと「世紀」でとらえれば、ワットは18世紀、ベルとヘルツは19世紀、ハーバーとハーンは20世紀というイメージは持てるであろう。ワットを一番目にしている③と④が残り、電磁波と電話の発明の順番を「科学と技術の関わり」として考えれば、③が選ばれる。

令和元年度

正答 ②

 この年は、個別の人名が出てくるパターンではなく、「科学と技術の関わり」を問う問題になった。技術史の理解のポイントとして重要であると思われるので、良い設問であると考える。とはいえ、「種痘」の発明が18世紀のジェンナー、ウイルスの発見が19世紀から20世紀にかけてであることを想起できれば、②を選ぶことは容易であろう。種痘が発明されたきっかけは、ジェンナーが、ウシが飼育されている家や地域で牛痘にかかっても天然痘にならないという話を聞いたことがきっかけとなっている。

令和元年度(再)

正答 ④

 最後が「オ-ウ」であることは容易にわかる。問題は「ワット」「進化論」「ハレー彗星」の順番である。
 ポイントは、「種の起源」の出版により進化論が唱えられたのが1859年、すなわり19世紀であること。ワットの蒸気機関(1765年)も、ハレー彗星の予言(1705年)も18世紀である。この点に気づけば正答を導ける。

令和2年度

正答 ①

 平成28年度のI-5-6とほぼ同じ問題で、フランクリンが同時代のジェンナーに入れ替わっただけある。

令和3年度

正答 ④

 平成30年度と同じ問題である。

令和4年度

正答 ③

 ベッセマーによる転炉法開発は1856年、本多によるKS鋼の開発は1917年、カロザースによるナイロンの開発は1935年、ヴェーラーによる尿素の合成は1828年、志賀による赤痢菌の発見は1898年。ヴェーラー、ベッセマー、志賀潔の時代順を考えるとしたら、私なら「本人」の写真があるかで考えるかもしれない。すなわち、この3人のうち、ヴェーラーの写真のイメージは無いので、まず③か④。そして一番最後をナイロンにするか、KS鋼にするか。難問である。

令和5年度

 正答 ⑤

 令和元年度とほぼ同じ問題であるが、「種痘」が「ワクチン接種」に言い換えられている。「種痘」とは天然痘のワクチンであり、天然痘が撲滅された今、技術用語としては死語になったということかもしれない。


[i] 桜井弘、化学と教育 67巻6号(2019年)

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