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化学産業とSDGs 「13.気候変動に具体的な対策を」

日化協SDGsタスクフォース資料の「関連する化学産業の活動」
地球温暖化対策として、低炭素社会実行計画の策定や、長期戦略WGを通じて低炭素社会を実現するためのイノベーションの検討を行っている。石炭火力発電等の問題に取り組んで、CO2排出負荷の少ない電力供給に取り組んでいる。

アンモニア混焼技術

 2050年のカーボンニュートラルの目標を実現するためには石炭火力発電から排出されるCO2を削減する必要がありますが、そのための手段としてアンモニアが注目されています。石炭と混ぜて燃やすと、アンモニアは水素源として燃焼し、CO2を削減することができます。水素のキャリヤとしては、常温に近い温度で液化するために容易に輸送や保管ができることがメリットとなります。かつては燃焼の際の窒素酸化物(NOx)の発生が問題でしたが、NOxを抑えながら燃焼させる技術が開発され、石炭の段階的削減につながる技術として期待されています。将来はアンモニア100%の専焼発電の実現も期待されていて、設備を維持継続しながら石炭からアンモニアへの移行できる点もメリットとされています。

ハーバー・ボッシュ法

 アンモニアは現在もハーバー・ボッシュ法、すなわち水素と窒素を原料として鉄系触媒存在下に高温高圧条件で反応させる方法で製造されていて、100年以上も続く技術となっています。2019年の生産量は2億トン、ほとんどが肥料に使われています。人類の食料供給に大きな貢献をしたハーバー・ボッシュ法ですが、今回は地球環境問題の解決への貢献が期待されています。

アンモニアの種類

 CO2削減の切り札として注目されるアンモニアですが、現状はアンモニアの原料である水素を製造する際にCO2が発生してしまいます。原料に用いる水素源によってアンモニアは次のように分類されます。
・グレーアンモニア:CO2が副生する石油改質由来の水素を用いた場合(現在のアンモニアはほとんどこれ)
・ブルーアンモニア:水素製造で副生するCO2をCCS技術などで固定化した場合
・グリーンアンモニア:水素を再生エネルギーによって製造した場合

 伊藤忠商事はカナダでのブルーアンモニア事業の計画を発表しており、2024年着工、2027年の商業生産開始を予定しています。

常温常圧のアンモニア合成

 ハーバー・ボッシュ法自体にもエネルギーを大量に必要とするという問題がありますが、他の化学技術に比較して代替製法の開発はうまくいっていませんでした。多くの錯体触媒の専門家が挑戦してきた課題に、東京大学の西林教授は、モリブデンとヨウ化サマリウムを触媒とする方法で取り組み、ついに常温常圧のアンモニア合成に成功しました。出光興産が実証試験を予定しており、商業製造にむけた開発を進めています。


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