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Q.HPVの感染や相手への感染を心配に思う方へ

子宮頸がんは性生活をするなかで、ヒトパピローマウイルス(HPVと略します)が子宮頸部に持続的に感染し、その影響で異形成となって、一部が消えないで残っていることでがんに進展していくと考えられています。

ですので
性生活によってウイルスをもらってまたがんになってしまうのでは」
と思ったり
「自分ががんの原因になるウイルスを渡してしまうのでは」
と思って性生活をやめてしまう方がいます。

2つの疑問に対してはっきりそれはありません!とは言えないのが本当のところです。

ただ「その不安で性生活をやめると選択することは避けてほしい」ということをお伝えできればと思います。

●「性生活によってウイルスをもらってまたがんになってしまうのでは」

HPVの感染、これはごくごくありきたりなことです。
約8割の女性が生涯に一度は感染するとされており、ほとんどが自然免疫によって淘汰されていきます。

パートナーに関しても同様です。

そのため必ずしもパートナーがHPV、特に子宮頸がんになりやすいとされているハイリスクHPVに今感染しているとは限りません。

しかし仮にパートナーからハイリスクHPVをもらってしまったとしても、HPVの影響を受けやすい子宮頸部をすでに手術で摘出していた場合は、がん化する可能性が大幅に減ります。

HPVが、膣癌の原因になることがあります。
ただこのがんは罹患率が10万人に0.7人の希少がんです。

ウイルスの感染リスクはもちろん子宮を取った後もありますが、それががん化して大事に至るということはほとんどないと言えます。

現在のところ男性がハイリスクHPVに感染しているかを調べる検査は行っていません。

HPVにまったく晒されないという生活を送ることは非常に難しいことです。

「自分が相手にがんの原因になるウイルスを渡してしまうのでは」

自分が持っているHPVが相手に移ってしまうというリスクは0ではありません。

しかしHPVの感染はごく普通なことですので、性生活によって相手にがんへの罹患のリスクを高めてしまう可能性は「がんになった人でもそうでない人でも同じ」です。

男性においてHPVの感染によりがんの罹患のリスクが高まるのは中咽頭がんや肛門がんなど。

しかし中咽頭がんは喫煙や飲酒が主な発生要因とされていますし、肛門がんは罹患率が極めて低い希少がんです。

HPVへの感染=がんになる、ではなくその他にもいくつかの要因が重なってがんに至っています。

もし不安が大きければ、自分自身が今ハイリスクHPVに感染していないかどうかをHPV検査で調べることが可能です。(しかしこれに関しては自費となること、そしてもしハイリスクHPVに感染していると分かっても対処の方法がないため、非常に意味づけが難しい検査となります)

ただし、繰り返しになりますが「HPVへの感染=がんになる!」ではありません。

HPVの感染でがんになった経験があるなかで、敏感になったり、怖い思いをしたりするかもしれません。

しかし人間にとって非常に大切な行為である性生活を、HPVへの感染リスクを考えやめてしまうのは、避けてほしいと私は思います。

それは人間なら誰しもが置かれている立場なのです。世の中はウイルスで溢れているし、それと共存しているのが人間。

(もちろんHPVワクチンが普及すれば、HPVが日本から淘汰される未来も遠くはないと考えられます)

もし相手にさまざまなリスクについてきちんと伝えたいというのであれば、ぜひ医師や看護師など医療者の力も活用してください。

2人の関係を守るための考え方を、話してくださると思います。

(修正履歴)
2020年1月15日一部修正




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