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お笑い初期衝動
106.ダメージ
ネタ見せの日。
僕達ジルは、"煮汁の2人バージョン"なるネタを披露した。
結果は、、とんでもなくスベった。
それは、うっすらスベったというような、なまやさしいものではなかった。
笑いが起こらないどころか、ネタ中の僕達は、もはや哀れに見えていたと思う。
煮詰まって迷走していることを、見てる全員に、完全に見抜かれている。
ネタが始まって1分後には、それが手に取るようにわかった。
数ヶ月前まで天狗にすらなってた芸人が、もはや何が面白いのかすらわからなくなってる。
そんな大醜態を、ライバル芸人達の前で、僕達はさらしまくったのだ。
ボクシングの試合のように、ネタの途中でタオルを投げて、もう止めてほしいぐらいだった。恥の滅多打ち状態だった。
あの日、養成所担当社員の木佐さんから何とダメ出しされたのか、全く覚えていない。
ショックすぎて、もはや一部記憶が失くなっている。
それぐらい、僕達のダメージは相当なものだった。
お笑いって、こんなに残酷なものなのか…。
人々の娯楽であるはずのお笑い。
しかし、『娯楽』という言葉とはかけ離れた残酷なる真逆の世界が確実にそこにあることを、あの日、身をもって痛烈に思い知らされた。
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