お笑い初期衝動
74.録音のこと
コント『ペットの見せ合い』の中身が大体決まり、次はネタ合わせだ。
僕達はいつも、ネタ合わせの声をテープに録音するようにしていた。
そして巻き戻してそれを聞いて、よかったところ・ダメなところを確認し、またネタ合わせ。
これを何回も繰り返す作業をした。
と言うと、すごくストイックな姿勢に思えるかもしれないが。
実際は。録音した声を聞くのが、自分達のラジオ番組を聞いてるかのような心地がして、なんとなく楽しい。というのが本音だった。
反省点を確認するためという名目で、僕達は擬似ラジオを楽しんでいたのだ。
売れてる芸人への憧れである。
今のようにVoicyやstand.fmなどがない時代の憧れ行動は、なんだか変てこりんだった。
僕達は、ネタ合わせが終わって、ただ雑談をしているだけの間も、僕の部屋でずっとテープを録音させていた。
テープのA面が終われば、ひっくり返して、B面で録音を始め。
しまいには、録音してるという意識もなくなるぐらいに、延々録音していた。
そんな録音に一体何の意味があるのかと言えば、まさに何の意味もないのだが。
端から見たら全く意味のないバカげたことを、思うままにやる。
しかしそれをできることこそが、若者の特権とも言えるかもしれない。
僕達は、全てにおいて手さぐりだった。
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