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お笑い初期衝動

111.もう1回コンビを?


僕と田中三球、両者ともピンネタで激スベりした数日後。
一人暮らしの、僕の家の固定電話が鳴った。

プルルル・・

当時は、携帯が普及し始めたばかりの頃で。
セールスの電話以外かかることのない固定電話を、一人暮らしの部屋にまだ置いていた。

ガチャ。もしもし。

電話に出ると、相手は田中三球だった。
田中三球はこう言った。

やっぱり、もう1回コンビ組まへん?



この言葉に、僕は驚いた。
というのもこの時、解散してから、まだ10日程しか経っていない頃で。
しかも、「解散しよう」を先に言い出した側が「もう1回組もう」と言い出しているのだ。

恋愛でイメージしてもらうと、わかりやすいだろう。
10日前にフってきた側が、「よりを戻そう」と言ってきてる。
簡単に言うと、そういうことである。

プライド高い芸人の田中三球が、たった10日での前言撤回。
いくら苦しくても、「苦しい」などと決して口にはしない。それがプライド高い芸人の姿ってもんだろうと、僕は勝手にイメージしてたので。
田中三球の「もう1回コンビ組まへん?」には、率直に言うと、少し唖然としてしまう思いもあった。

養成所でピンネタがウケなかったのが、相当ショックだったのだろう。と察した。

そして、その上で、僕はこう答えた。

いや、俺はピンでやるわ。




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