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自走できる組織について考えてみた

自走できる組織とは、組織に属する個人が自走できている状態である。

自走できるとは、自ら自分が今何をしなければ行けないかを考え、行動し、アプトプットを出して、それを成果にできる状態とする。当たり前かもしれないが、自走することのステップは以下になる。

1. 自分が何をすれば良いかを考える
2. 行動する
3. 成果に結びつける

このステップについて考える。

自分が何をすれば良いか考える

今何をしなければいけないかを考えるためには、それを判断するための情報が必要となる。会社あるいは事業部では、自走できるために必要になる情報のレベルが異なる。会社が情報をほとんどオープンにしている企業においては、考えるべきは、どこの階層までの情報をどのようにシェアするかである。基本的には、会社で行ってることが多岐に渡り複雑化すればするほど、情報量は多くなる。人間には、情報をインプットして自分が持っている情報と合わせて処理して、行動へ落とし込む脳が備わっているが、そのキャパシティには個人差 (地頭の良さ) があり、情報をインプットするにも時間がかかる。そして、人間にはインプットするための時間は有限であり、そこまでスピードも速くない。

情報を自ら取得しにいくか、まとめられた情報を与えられるかも考える必要がある。情報を自ら取得しにいく場合には、情報が整理されている必要がある。情報が散漫していると、どこにどの情報があって、どのような時系列で情報が変化しているのかを把握することが困難になるからだ。この情報整理には、整理するためのコストも少なからずかかり、仕組みに完全に落とし込むにはそのためのシステムが必要であり、人力で行うには人的リソースが必要になる。また、情報をまとめて与えられる場合は、まとめる側に大きなコストがかかり、情報を与える場を用意することもかなりの労力がかかる。そして、大事になってくるのが、人材が激しく流動するベンチャー界隈において、情報量は最初はほとんど必ず等しくないために、その人にとって過不足なく情報を伝えることは困難であり、情報が一番少ないあるいは処理が遅い人に合わせてしまうと、動きが遅くなってしまう。

そもそも、会社を成長させるために、個人が自走するために必要な情報は必ずしも全てではなく個人によって異なるが、それも個人が判断する必要がある。そのためには、現状の自分を客観的に把握して、どこまで情報を必要とするかを考える必要がある。自走に必要な情報が事業部の中だけでいいのか、自分のチーム内のみで良いのかは個人によって異なるが、それは役割によって異なると思われる。自分がマネージメントをする役割をもっているのであれば、横の情報や縦の情報を把握する必要があるかも知れないし、がっつりプレイヤーをしているならば、チーム内だけの情報を集め、やるべきをことを考えれば良い。ここで大事なのが、情報がいかに整理されていたとしても、あるいはまとまった情報を与えられるとしても、情報を自分の頭の中にインプットする工程は必ず発生するので、そのコストも配慮してリソースを分配する必要がある。

会社を正しい方向に進めるために、大きなチャレンジに出る場合には、かなりのシークレットな情報を扱うことがある。これを全体に公開しながら進めることはかなりのリスクを伴う。しかしながら、情報を開示するレベルを制限してしまうと、そのレベルにいる人たちだけで事を進めるか、行うことだけを伝えて情報を正しく認知していない人に動いてもらうかだが、前者の場合は自走できる組織あるが、後者の場合は自走しているとは言えない状態となり、歪みが生じてしまう。

行動する

自分が今何をすべきかわかったら次は行動 (いわゆる実務) を起こす。行動するには、当人がその能力を有しているあるいはその能力を素早く取得できる可能性が高い状態である必要がある。自分がその能力を有していない場合、自分が今何を能力としてつけるべきかを考えて学習する必要がある。そして、その学習を業務として業務時間中に行える (育成コスト) だけの余裕があるかないかを考える必要があり、そのコストを払えない場合は即戦力しか組織にいれることができなくなる。基本的には、行動するだけの能力がなければ、必然と成果を出すことはできないので、自分の評価は上がっていかない。そのため、評価を上げるために業務時間を使わずに自ら学習するかどうかは自由である。自ら学習しないのであれば、酷というか当たり前だが、評価は一向に上がらず、仕事が回ってこなくなる。

基本的には、自分がすべき事を成し遂げるための能力を有していれば、実行していけると思う。ここで行動しないという選択肢もあるが、それはただ単に仕事をサボってるあるいは手を抜いてる状態である。何をすればいいかわかってるいるけど、手を抜くかどうかは、プロフェッショナルであるか、仕事に対して真摯に向きあえるかが重要である。

成果に結びつける

会社の存在理由であるミッションはそれぞれ存在するため、利潤追求はミッションを達成するための手段だと考えることができるが、営利組織においては、単純化のために仕事の成果とは最終的には利益に繋がっているかと考える。もちろん、役割によって直接的に利益を生み出すか、間接的に関わっているかの違いはある。そのため、個人によって自分のアウトプットに対する成果あるいは成果に関係するものは何かを考えて定義して置くことが必要である。

何か行動を起こせば、ほぼ確実にアウトプットが出る。しかしながら、それが成果になっているかは別軸の問題である。アウトプットが成果に結びついてないならば、なぜ成果に結びついていないのか、自分が本当にリソースを使うべきは違うことなのかを考え、何をすべきかを再度改める必要がある。そして、何をすべきかがあっていて、成果に結びついてないならば、それは市場レベルで成果を出しにくい環境である可能性が高い。市場というのは、極めて流動的であり、課題に対して適切な解決策を提示し、選択されれば成果を出すことができる構造をしている。その構造を覆してまで成果を出すことは大変難しいが、そこまでできる人材であればすぐさま役割がより高度で複雑なことを裁量高く任されると思われる。それか、なかなかアウトプットが成果にならず、何かを変える必要がある場合は、それを変えることができる権限をもっている人に対して呼びかける必要がある。これは社内であればなんとかなる可能性が高い (本当に正しいのであればエスカレーションし続ければ届く) 。社外であれば、ちょっと頑張る必要があるが、不可能ではないと思われる。

考え方の一致

ここまで来て、自走できる個人とは以下のような人材である。

・自分の状況を把握して、情報を取得方法を考えるところも含めて素早く取得し、正しく解釈し、自分が今何をすべきかを判断することができる
・行動を起こすことができる能力を有してる、あるいは足りない能力を把握して迅速に身につかせることができる
・アウトプットを成果に転換することができ、難しい場合はその状況も改善フィードバックを回すあるいは状況を変えるように促すことができる

こんな自走できる人は人材プールの中でも優秀とされているであろう人たちである。そのような人たちは、現代においてはフリーランスとして自分で仕事を見つけて生きていくことができる。また、経済社会の中で個人は合理的な存在であり、短期的には状況を変えなくても、中期的以上では合理的に自分にとって不利であれば、状況を変える選択をする。終身雇用が破綻して、状況が激しく変わる現代社会において、個人と社会の情報の非対称は解消され、デジタル化されたオフィスワークが多く、ネットに常に接続された状態で、場所や時間を含めた働き方も自由になるつつある。

モノで満ち足りた世の中において、人間が働く理由もお金を稼ぐだけではなくなってきてるように思う。下記の記事の中に以下の一節がある。

では、具体的に何に注目し訴求すれば、社員の満足を得られるのでしょうか? 当社グループで大切にしているのは、企業が人を惹きつける「企業の魅力因子4P」です。商品・サービスの魅力を訴求する際に用いられるマーケティングの4P(Products、Price、Place、Promotion)に対して、選ばれる企業の魅力を訴求する際の4PとはPhilosophy( 理念・目的)、Profession(仕事・事業)、People(人材・風土)、Privilege(特権・待遇)。

この4Pの何を大事にするかで、どのような志向性を持った人で組織を形成するか変わる。明確に一つではなく、全てを大事にし強く押し出すこともできるし、4つの要素のグラデーションにすることもできるし、会社のフェーズによっても何を重要視するかは変化する。

つまり、会社が何を大事にするかでどのような人を採用するかが決まってくる。自走できる人でも人は多種多様であり、採用するためのリソースは限られているため、会社の魅力を何にするか、どのような組織を目指すかを定義する必要がある。

例えば、〇〇という能力を身に付けたいという人にとっては、どんなことをしているのかが刺さらないと組織に加わる意味がないし、自分がやってることの社会的な意味を大事にしている人にとっては、どれだけ社会的な意味のあることを提供しているかを訴求する必要がある。一方で働き方を重要視している人にとっては、働き方がフィットしなければ絶対に組織に加わってくれない。極端な話ではなくグラデーションだと思うが、今会社がどの状態で、何を目指しているのかを明確にすることは、一緒に働く人を迎い入れるという点でもとても重要なことである。

自走をしないという選択肢

ここまで自走する組織について書いてきたが、自走しないという選択肢を取ることもできる。つまり、当人に対して自ら考えるよりも決まり切ったことをこなしてもらい利益を上げる方法であり、それが成り立つ会社であればそれは正しい選択であると思われる。しかしながら、その場合、何をすべきかやなぜそれを行うのかをどこまでシェアするのか、納得感をどの程度まで醸成するかで、メンバーのモチベーションや生産性に影響するため、どこまで労力をかけるかだが、基本的に自走をしない前提であれば、人を動かすためのマネージメントが恐ろしく多くかかることになり、その時間も膨大になるため、マネージメント層が肥大することが考えらえる。個人的な感覚であるが、自分の考えを相手に正しく伝えることはともて難しいので、仕事の進捗や質を随時確認するコストもかなり高くなることが予想される。人が増えるということはそれだけ共有コストがかかり、さらに人が必要になるなどリソースを食い合う状態となり、増員爆発を起こす要因になる。それに伴い人件費も爆発して、利益を圧迫するようになる。しかしながら、情報の階層構造を作り、そのラインに乗って適切な粒度で情報を渡すことができれば、十分に各ポジションは機能すると思うので、それで利益がでているのであれば正解だと言える。

なぜ、自走する組織が重要か

この記事の冒頭にこう書いてある。

「コモディティ化」という言葉を、近年よく聞くようになりました。情報化が進んだ今、商品やサービスはすぐに模倣され、陳腐化していきます。そうした状況下では、経営者や社員が大事にする理念やビジョン、あるいは企業の文化や組織風土といった目に見えないものが“その企業らしさ”をつくり、他社との差別化要素になります。GoogleやPIXAR(ピクサー)といった先進企業も人材育成や社内コミュニケーションが非常に重要だと認識し実践しています。今や両社の取り組みは、グローバルでも注目度の高いトピックスです。
一方、日本でも製造業からサービス業へのシフトが進み、「モノづくりからコトづくりへ」などと付加価値の大切さが指摘されています。今、顧客が価値を見出しているのはモノの機能ではなく、商品の利用やサービスの活用を通じたコトの体験です。コトをつくり出せるのは人です。機械や設備を揃えるよりも、優秀な人材を確保し、働くモチベーションを高めることが重要なファクターになっているのです。

これが全てであると思うが、上で決めたことをズドンっと実行していく階層構造だけでは、よほど上層部で決めたことが的を射ていて先見性が高いアイデアあるいは自分たちしかできない領域でなければ、成果を上げることが難しい世の中になってきた。また、最初は成果をあげていてもすぐにコモディティ化するため数年で業績が傾くことは多く、継続的に質の高い意思決定をしていくことが求められる。また、コモディティ化の影響で一つの事業で圧倒的に勝つことが難しくなっており、大きく一つのプロダクトだったとしても中には複数の事業が走っていることも多くなっている。そのため、意思決定をするために必要な情報や判断軸が複雑化あるいは専門的になり、上層部だけが頭脳となり下を動かすというスタイルが適応できなくなってきたのではないかと考えている。

そこで必要性がでてきた組織スタイルが過不足ない人員で素早く不確実性を落として意思決定し行動していくことで、コモディティ化しやすい世の中でも変化に強く、成果を継続的に出していけると思われる。自走できる組織でないと勝てない世の中になってきたと考えている。

以上の理由から、大きな利益があり体力があるという会社あるいは既存ビジネスが安定していて仕事を仕組みかできている会社 以外で (もしかしたら、そのような会社においても) 不確実性が高いドメインで勝負している会社は、経営リスクにもなるので、自走する組織は会社を存続させ続けるためには必須であると考えている。

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