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熊本空港に鉄道がつながる


 「空港に鉄道が通るよ」
空港に鉄道が通るということは、家の近くにコンビニができたと同じだ。
便利さがまったく違う。
空港に行くまでの時間が早くなり、到着時間も予想できる。
渋滞に巻き込まれる心配がない。
ストレスなく、空港から飛行機がつなぐ都市へと行くことができる。
行った先で、アルコールを飲んだとしても安心して帰ってくることができる。
車を運転する心配がないからだ。
空港へつながる鉄道沿線には、鉄道の価値がぐっと上がる。
 
田舎の路線が次々の廃線になっていく。
鉄道会社が路線を廃線にすると発表すると地域の住人から反対運動がおきる。
それも、かなり強い要望がでてくる。
いままで乗っていなかった村長、町長から反対の意見書が提出される。
それでも経営がなりたたたない路線は廃線になるしかない。
町や村など公共団体と私企業が共同で経営をする第3セクターという方式もある。
それでも、乗降者数が少なくなったのだから収入が減り経営がなりたたない。
収入を増やすために、イベントを実施して人を呼んでくる。
だがイベントだけでは、一時的に収入増があるが、長く続くわけではない。
利益を確保するもう一つの方法が費用を減らすことだ。
費用を減らすために、ワンマンにしたり駅務員を無人にしたり努力している。
ところが鉄道を走らせるためには、安全に運行を維持するための点検修繕費用がかかる。
車両や線路そして電気設備を修繕したり点検したりするための費用だ。
サビたり寿命がくる部品は定期的に交換しなければならない。
大量の雨が降ると、電気設備や線路に影響がないのか確認をしなければならない。
お客様を安全に運ぶためには、裏で多くの人が鉄道の運行をささえている。
そんないつもは見えないコストがかかってしまう。
 
「熊本駅と空港を結ぶ路線をつくります」
先日JRから発表がされた。
廃線になる路線が大きなかの、新しい路線が開通する明るいニュースだ
新しい路線を引くのには、多額の投資がかかる。
レールを引いて、車両を購入して、駅舎をつくる。
これらの費用を運賃で少しずつ回収していく。
多大な投資の回収には長い年月がかかる。
投資額を上回る収入の継続が予想ができなければ、新しい路線を引くことができない。
熊本ではなにがおこっているのだろうか。
 
来年度になるが、熊本空港の横に半導体工場が建設される。
台湾のメーカが熊本に工場を作るのである。
半導体とは、電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ物質だ。
私たちのスマホには50個以上の半導体が使われている。
今後5Gやその次の仕様のスマホに活用される有望な部品である。
40年前に日本は半導体製造で世界トップの地位を占めていた時代がある。
半導体は、今から40年前に日本では世界の70%製造されていた。
現在では世界生産の10%以下に落ち込んでいる。
今後も日本の比率は減少が続くと予想されていた。
そこに台湾で世界の50%以上を製造しているメーカーの日本工場が建設される。
これが熊本空港の横にできるのである。
 
熊本空港の周辺ではこの工場用地に建設ラッシュが始まっている。
製造工場だけでなく、倉庫や物流センターも建築される。
九州には、良質な水、広い敷地、多くの労働者を確保しやすい。
そんな理由もあって半導体製造には適している。
半導体のような装置は、飛行機で運ぶ貨物に適している。
1つ当たりの単価が高いので、高い空港運賃を負担できるからだ。
温度管理も空港設備の中整っているため、品質管理も万全だ。
国内だけでなく、海外への運送も可能なのだ。
周辺の土地の価格はこの1年で30%以上の高騰をしている。
日本の地価上昇平均は1.6%なので、その20倍以上の上昇率だ。
工場の建設が始まり、菊陽町にはメーカーが集まる工場団地が出現している。
この半導体を目当てに、日本の電機メーカーが工場を近くに建設している。
台湾からも周辺装置を製造する会社の工場がやってくる予定だ。
半導体工場の稼働が始まると、働く人が集まって来る。
製造を管理する技術者や新しい半導体機能を開発する研究者が外部からやってくる。
それらの人のコミュニティーが、この街にできる。
10年後には、家族が増えて教育環境も整ってくることも予想される。
それくらい大きなっ出来事がこの熊本エリアでおこっているのだ。
 
これらの発展を見越して、空港につながる鉄道の路線開通が決定した。
空の力で、人も物も動いていく。
鉄道会社は、鉄道を引くとことで多額の投資を回収できると判断した。
空の移動や運送につながる力を、地政学では“エアーパワー”という。
鉄道会社が新しく路線を引く場所を見ていくと、どこが長期的に発展するのか予想することができるのだ。

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