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欠けの美

「欠け」が美しいという概念を、いつか忘れたが小説で知った。

欠けていることが、美しさであり、生きていることの証となる。
という考え方だ。

食事や恋なんかは、自分の欠けを満たそうとする生の営みであるので、
生々しくて美しいと言っていた。
本を読んだ時はあまり腑には落ちなかった。


先日、友人と居酒屋で飲んでいた際に
「やることが終わってしまってやる気が起きない」
という話をしていた。

たいていそうだが、目標に向かって頑張っているときは没頭できるが、
目標を達成してしまうと、案外達成した後の喜びは少ないことが多い。

成功より、むしろ失敗した方が執着するし、思い入れが強くなる。
大学に落ちてしまった後にコンプレックスを抱く人なんかはそんな例だろう。

海外にいるときもそうだった。
日本を出国して2ヶ月後。
スーダンにいる時、日本への帰国欲が最高潮に達していた。
日本語で話したい。日本食が食べたい。日本にとにかく飢えていた。
スーダンからエチオピアに移った。旅をしている日本人の友人ができ、満たされた。そうすると自然と慣れてきて何も思わなくなる。
日本に帰ってきても、数日で順応してしまい、ありがたさも何も感じなくなった。

「心にぽっかり穴があく」というような表現をよく使うが、
穴を埋め、埋めては穴を作りの繰り返しで生きているんだろうなと思った。


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