続・奥武蔵について語るときに僕が語ること【9月:ときがわ10座をめぐる冒険編】

レース開始から4時間弱が経過した。練習で山を4時間走るとそれなりに長く感じるが、レースでは思いのほかあっという間だ。

鬼門となると思われていた、飯盛峠のエイドを無事通過してこれからグリーンライン沿いの山々を登ったり下ったりしながら県民の森を目指す。

事前に行った試走から、グリーンラインは標高が高く風が抜けやすいことに加えて大きな登りや下りがないことから飯盛峠までの低山区間で多少暑さにやられてしまったとしても、ここで回復できるのではないかと見込んでいた。しかし、この日の最高気温(33℃)の前では標高の高さや多少吹く風がさほど意味のないものであることをグリーンラインを走り始めてすぐに悟った。

暑さだけが問題なのでペースを落とせば済む話なのであるが、ペースを落とした場合レースの完走が難しくなる。完走ギリギリラインにいる悲しいUrbanBoyの物語。

ということで、(多少のゆとりをもって)完走できるギリギリのペースで進む。身体に熱は溜まり続け、県民の森エイドに到着したときには、身体の芯に熱がこもっている状況になってしまっていた。やれやれ、僕はこの熱とともに、あと数時間は動き続けなければいけないのか・・・。

とはいえ、レースを投げ出して珍達ラーメンに向かうわけにもいかないので
余計なことは考えず、ひとまず、進むことにする。

少しでも身体の熱を取るために、背中のザックを手に持って走ってみたりしたがタンクトップをめくってみたりしたが所詮は付け焼刃。あぁ悲しいUrbanBoyの物語。

堂平山のエイドに到着する。
ここが僕のテラ・インコグニタ(未開の大地)だ。
ここ2年で30キロ以上のトレイルを6時間以上のトレイルを走ったことがないのだ。

ここでは知り合いに会うことが出来て雑談をして気を紛らわすことが出来た。これも付け焼刃であることが分かっていても、そうでもしない限りは次の区間へ進めそうにない。

堂平山から笠山への登り返しからのガレた登山道の下りに悪態をつき、慈光寺までの気持ちよく走れるトレイルも疲労と標高が下がるにつれて増してくる暑さも重なってためフラフラとしか走れない状況になってきた。

慈光寺エイドに到着したときはついに座り込んでしまった。

タイムを確認する。
完走ペースとしては問題ない到着タイムではある。

状況を確認する。
とはいえ、ここでペースを落としてはそのままズルズルと落ちて行ってしまいそうだったので、仲良くなった方と一緒に進むことにした。

今年からトレランを始めたというその方の走り方は非常にきれいで、後ろを走らせてもらって非常に気持ちよかった。

登りでも雑談をしながら進むことで、辛い気持ちを紛らわしながら進むことが出来た(まぁ雷電山の登りはきつかったんだけど)。

弓立山手前のエイドについたときは、本当にもう限界だったので、先に行ってくださいとその方に伝えてみたのだけど、ここまで来たら一緒に行きましょうと言ってくれた(多分本音だったと思う)
最後までご一緒させてもらうことにした。

弓立山の登りでは、すぐに息が上がってしまい、2回ほど階段に座り込んでしまった。レース中に座るなんて今までなかったし、ほんとに辛かったんだけど、弱音を吐きつつ、その方と、必死に進んだ(登った)。

歳をとるにつれて、人に弱みを見せれなくなってきてることをなんとなく認識してはいるんだけどトレランに限らずこういうエンデュランス系のレースのいいところの1つとして、人に弱みを見せることが、そんなに抵抗なく出来ることだと思う。(見せざるを得ない状況に追い込まれるからってのもあるんですけどね)

40分ほどかけて頂上に到着すると日は傾き始めていた。気温は暑いが夏の終わりの空気が僕らを包む。弓立山の頂上からときがわ町を見下ろす。もうすぐ長い1日が終わるんだなと思う。ベンチに座って5分ほどボーっとしたり、雑談をしてからゴールを目指した。

弓立山からの5kmほどはほぼその方と雑談しながら進んだ。
この区間はほぼほぼロードでの下りで、暑さによる身体の疲労は激しかったものの足に余力は残っていたためゴールまでは淡々と走ることが出来た。

ギリギリライトは使わなくて済むくらいの暗さの中、無事サンピアに戻ってくることが出来た。詳しいタイムまでは覚えてないけど、大体10時間くらいで10座をめぐる冒険を終わらせることが出来た。

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僕、1人では確実にときがわ10座をめぐることはできなかったと思う。
10座をめぐることが出来たのは、試走を共にした仲間・応援に来てくれた仲間(スィートポテトおいしかった)・10座を共にめぐった好敵手のおかげである。

間違いない。

そして、彼ら彼女らのおかげで、ここの場で10座をめぐる冒険について語ることが出来たのだと思う。

間違いない。

ただ、僕の冒険はまだ続く。
2年半ぶりのトレイルランの大会において現在地を知った僕は
3か月後の目的地を目指して計画的に、コツコツとトレーニング進めることになるのだろう。

僕の目的地?
それはもちろん、ニューサンピアだ。

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