国造とはー出自を同じくする国造についてーそのリスト

 研究報告では、同系国造の検討として、「国造本紀」の中から、同族関係を有する国造を、その系譜(出自)によって以下のように分類しています。
〔皇別系〕
①神武天皇裔 印波国造•仲国造•科野国造•伊余国造•火国造•阿蘇国造•(大分国造)
②孝昭天皇裔 武社国造•額田国造•吉備穴国造
③孝霊天皇裔 蘆原国造•角鹿国造•上道国造•三野国造•下道国造•加夜国造•笠臣国造•国前国造•葦分国造
④孝元天皇裔 穂国造•那須国造•若狭国造•高志国造•三国国造•江沼国造•伊弥頭国造•都怒国造•筑志国造
⑤開化天皇裔 甲斐国造•淡海国造•三野前国造•但遅麻国造•稲葉国造•吉備風(品ヵ)治国造
⑥崇神天皇裔 上毛野国造•下毛野国造•浮田国造•針間鴨国造
⑦垂仁天皇裔 伊賀国造•加我国造•加宜国造•能等国造•羽咋国造•高志深江国造
⑧景行天皇裔 針間国造•讃岐国造•日向国造
〔天神系〕
⑨高魂尊系 葛城国造•知々夫国造•粟国造•宇佐国造•比多国造•津嶋県直
⑩神魂尊系 石見国造•大伯国造•吉備中県国造•阿武国造•紀伊国造•淡道国造•久味国造•天草国造•葛津立国造
⑪饒速日命系 参河国造•遠淡海国造•久怒国造•珠流河国造•伊豆国造•久自国造•三野後?国造•熊野国造•小市国造•風速国造•松津国造•末羅国造
⑫天津湯津彦命系 阿尺国造•思国造•伊久国造•浮羽国造•信夫国造•白河国造•佐渡国造•阿岐国造•波久岐国造•怒麻国造
〔天孫系〕
⑬天穂日命系 嶋津国造•相武国造•无邪志国造•上海上国造•伊甚国造•菊麻国造•阿波国造•下海上国造•新治国造•高国造•二方国造•波伯国造•出雲国造•大嶋国造•豊国造
⑭天津彦根命系 師長国造•胸刺国造•須恵国造•馬来田国造•茨城国造•道奥菊多国造•道口岐閇国造•石背国造•石城国造•周防国造
⑮天火明命系 尾張国造•斐陀国造•丹波国造
〔地祇系〕
⑯椎根津彦命系 大倭国造•久比岐国造•明石国造
〔その他〕
⑰観松彦伊呂止命系 意岐国造•長国造
 ここに名のあがった国造は117を数えるから、「国造本紀」の国造のほとんどは、互いに同系の国造をもっていることになる。そしてそれは、一応上の17の系譜に分けられるのであるが、中にはさらに細かく分けなければならない例もあり、また各国造の伝文には、同系であることを明記するものも、しないものもあって、その内容はかなり複雑である。そこで煩雑になるが、それぞれについて、各国造の伝文を引用し、具体的にみていくことにしたい。とあります。
 上述のリストにある〔皇別系〕のグループのうち、初代の神武天皇は別にして、第5代孝昭天皇、第7代孝霊天皇、第8代孝元天皇、第9代開化天皇は、第6代孝安天皇は入っていませんが、以前このブログでも書いていますが、鳥越憲三郎氏が唱えた「葛城王朝」の大王です。また第10代崇神天皇、第11代垂仁天皇、第12代景行天皇は、水野祐氏の三王朝交替説によれば「三輪王朝」に属する大王です。こういうことと国造の系譜とに何か関係があるのかもしれません。特に「葛城王朝」の大王たちは「欠史八代」と言われ、戦後の歴史学ではその存在が否定されてきましたから、これらの大王を始祖とすることは架空の人物を祖先とすることになります。またどうして第6代孝安天皇を祖先とする国造がいないのかも気になります。

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