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【授業】データインテリジェンスの講評

『基礎から学ぶ推薦システム』を教科書とした講義「データインテリジェンス」を2022年度後期に開講しました。講義の最後に受講者に対して実施したアンケート結果について分析してみます。

講義の概要

講義は15回構成で、各回のトピックは表1のとおりです。大きく、内容ベース推薦システムの近傍ベース方式、モデルベース方式、協調ベース推薦システムの近傍ベース方式、モデルベース方式の4部構成です。教科書でいうと第1章から第5章までの範囲になります。

表1 「データインテリジェンス」の講義スケジュール

授業形式

まず各部の冒頭で講義スライドを用いて概論を説明します。講義スライドは、サポートサイトの推薦システム概論のページで公開しています。そして、細かい計算の内容になると、教科書をそのままスクリーンに映し出して、教科書の内容に沿って読み進めていきながら、数式や図表の読み方などを含め、計算手順を解説していきます。適宜、演習問題も用意し、受講生自身にも手を動かして計算してもらいます。演習では考えやすいように図1のような計算シートを用意しました。

図1 計算シートの例

受講者の分布

当講義は2年生向けの開講科目です。受講者数は82名でした。うち2年生が73名、3年生が7名、4年生が2名でした。他課程からの受講生も1名いました。なお、受講者にはBYODとして、自分のPCやタブレットを持ち込んで受けてもらっています。

成績分布

成績分布は図2のとおりでした。成績評価は、各回の課題として小テストが50%と、定期試験が50%です。受講者の1/3以上が90点以上でした。一方で、1割強は合格ラインの60点に届かなかったという結果でした。

図2 成績分布

アンケート結果

授業の最後に受講生に当講義についてアンケートを実施しました。回答者数は75名でした。

理解度

教科書に沿って読み進めていくという授業形式と計算シートを用いた計算手順の解説について、その理解度を質問しました。その結果が図3図4のとおりです。ポジティブな方にバイアスがかかっているかと思いますが、いずれも90%以上「理解しやすかった」と回答しています。

自由記述欄からも、「教科書を先生と一緒に読み進めていくことができ内容を理解しやすかった」「スライドに直接書き込んでいてくれたので途中式とかがわかりやすく理解を深めることができた」「計算シートや文字式の説明がしっかりされていて講義全体を通して理解しやすかった」など、ポジティブなコメントが多かったです。

図3 授業形式に対する理解度
図4 計算シートを用いた解説に対する理解度

演習課題の取組み方

授業中に演習課題を提示し、その場で解いてもらいましたが、その取り組み方について質問しました。その結果が、図5のとおりです。最も多かったのが「関数電卓を用いて計算した」でした。

計算シートはA4サイズで印刷しても使えるように設計しましたが、「計算シートをノートPCやタブレット等に取り込んで用いた」「計算シートを印刷して用いた」よりも圧倒的に多かったです。やはり、最近はデジタルですね。また、「表計算ソフトを用いて計算した」も多かったです。特に次元削減のトピックは、一つ一つ計算するよりも、表計算を用いた方が早いので、表計算ソフトを活用する効果は大きいと思います。

「自分でプログラムを組んで計算した」という受講生も5名いました。当講義ではプログラミングついては触れていませんが、受講生自身で意欲的にプログラムを組んで演習課題に取り組んでくれたようです。数式をプログラムで組むという力は重要ですので、この課題を通して良い訓練になったのであれば幸いです。

図5 演習課題の取組み方

難易度

授業や演習課題の難易度について質問しました。その結果が図6図7のとおりです。40%程度「ちょうど良かった」と回答していますが、それとほぼ同数が「難しかった」と回答しています。全体としては、やや難しめの授業だったといえます。

図6 授業の難易度
図7 演習課題の難易度

さらに、特に難しいと感じた課題についても質問しました。その結果が図8のとおりです。やはり、「次元削減」が難しいと感じる受講生が多かったようです。その次は「決定木」でした。その次からは「協調フィルタリング」がつづきます。意外と、「モデルベース協調フィルタリング」よりもシンプルと思われる「アイテムベース協調フィルタリング」の方が難しいと感じる受講生が多かったです。また、こちらも意外と「単純ベイズ分類器」が難しいと感じる学生は比較的少なかったです。式の導出課程は難しいですが、一度導出してしまえば、それを使うだけなら簡単ということでしょうか。

図8 特に難しいと感じた課題

わからないときの対応

演習課題でわからないときの対応について質問しました。その結果が、図9のとおりです。教科書や計算シートを見返したり、友人に質問したり、という受講生がほとんどですね。「教員に質問した」と回答したのは1名だけでした。全然、教員にも遠慮せずに質問してくれても良いのですけどね。

図9 演習課題でわからないときの対応

教科書、サポートサイトの活用

教科書とサポートサイトの活用について質問しました。その結果が、図10図11のとおりです。当講義では、教科書の第1章から第5章までの範囲が対象でした。多くの受講生が「講義範囲に関わる章のみを読んだ」という回答でした。一方で、「すべての章を読んだ」「講義範囲外でも興味のある章を読んだ」という受講生も7名います。嬉しいですね。また、「教科書は読まなかった」という受講生も8名いますが、その中でも80~90点とれている受講生もいて素晴らしいです。

なお、自由記述欄に「教科書の値段が高い」という声もありました。本書は税込みで4,950円ですので、大学生向けの教科書としては確かに高いですし、ごもっともです。その分、講義で扱わなかった範囲や、サポートサイトなども使い倒して頂き、元を取ってもらえれば嬉しいです。後は、3年生前期の「科学技術計算・演習」や大学院向けの「推薦システム特論」でも本書を参考書として挙げていますので、1冊で3科目分活用できると考えて頂ければ宇有り難いです。

図10 教科書の活用
図11 サポートサイトの活用

自由記述欄

上記の結果の中で、自由記述の内容についても一部取り上げましたが、他にもいろいろとコメントを頂きました。

例えば、次のようなコメントを頂きました。

  • 「他の講義では取り扱わない内容だったので、とても新鮮であった」

  • 「推薦システム自体にも興味がわいたのでもう少し勉強してみたいと思う」

  • 「推薦システムにとても興味を持って授業を受けることができた」

機械学習などを扱った講義は他にもあるとは思いますが、推薦システムに特化した講義はなかなかないのではと思います。当講義を通して、推薦システムに興味をもってもらえたのなら嬉しい限りです。

一方で、次のような指摘も頂きました。

  • 「教科書、講義スライド、計算シートと、いろいろな資料に目を通して計算しなければならず、整理するのが大変であった」

  • 「動画であとから見返せる解説等のコンテンツがあったら良かった」

  • 「資料や教科書の誤植があったため、演習課題に時間がかかってしまった」

教材を充実させた結果、教科書、講義スライド、計算シートなど、講義中もいろいろな資料にまたがって解説していたので、混乱も多かったかもしれません。そのあたりの流れは良くしていきたいですね。動画コンテンツについては、なかなか手が回っていませんが、いずれは作りたいなと思っています。誤植については、申し訳ないです。解答にミスがあり、受講生にはご迷惑をかけました。教科書で気付いた点については、現在、コロナ社の正誤表で公開されています。

おわりに

以上のように、全体的には「理解しやすかった」と思ってもらえている受講生が多く良かったと思います。演習課題の取組み方についても、計算シートを活用したり、表計算ソフトを活用したり、自分でプログラムを組んだりと、さまざまな受講スタイルがみられました。より、多様な受講スタイルの学生に満足してもらえるような授業設計を目指していきたいと思います。サポートサイトも、今後もさらに充実させていきたいと考えています。後は、今回指摘いただいた点を踏まえ、より良い授業になるように改善していきたいと思います。

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