どのビールが美味いのか
ビールのCMが盛んに流れていて、どのビールのCMを見ても、「うまい」と言っている。だけど、どのビールが本当に美味いのかは実際に飲んでみなければ分からない。味の美味さは美味いという以外に表現方法がなくて、比較して飲んでみてAとBとを比べたときにAよりもBの方が苦いとか、薄いとか、甘いとか、表現できて、どちらがどういう理由で好きだとか言えるくらいで、その評価は人によっても違ったりするので、美味いビールを飲みたければ自分でいろいろ飲んでみて、好みに合うビールを探すしかないのであろう。
ビールの味というものは何によって決まるのであろうか。以前、大阪の梅田にある世界のビール博物館というところで、いろいろとビールの味を試してみたことがある。なにやら、チョコレート味のビールがあったり、甘いビールがあったりして、結局日本のビールが一番美味いという結論を得た。そのときに、基本的にビールというのは甘い飲み物なのだと思った。
ドイツにはビールに関する法律があって、ビールとは水とホップと麦芽だけで作られているもので、それ以外のものが含まれていたらビールとは呼ばないということだそうだ。日本の大量に流通しているビールにはコーンスターチが含まれているが、麦芽の使用割合が50%以上のものを日本ではビール定義しているようである。日本のビール定義は割と緩いのであるが、生産者としてはそれこそ美味いビールを造るために配合をいろいろと工夫しているのであろう。
昔、ビールのシェアNo.1はキリンラガービールであった。父もキリンビールを飲んでいたし、恩師もキリンビールでなくてはいけなかった。義父もキリンビールがよいと言っていた。そこにアサヒスーパードライが登場し、シェアNo.1を瞬く間に奪い去った。しかし、恩師はいまだにキリンビールが良いと言いながらスーパードライを飲んでいる。
キリンラガービールとアサヒスーパードライを飲み比べてみたかとがあるだろうか。私は以前、スキークラブの会合で四日市の哈爾浜(ハルビン)という中華料理屋に行った時、アサヒスーパードライの生ビールとキリンラガービールのビンビールを飲み比べたことがある。生ビールの方が美味いだろうと思って初めは生ビールのアサヒスーパードライを飲んでいたのだが、ビンビールが余っていたので、ビンビールのキリンラガービールに変えてみた。すると、味の違いがはっきりと分かった。アサヒスーパードライの生ビールはスッキリとしていて、のどごしがよく、水のようにスイスイ飲めるのに対して、キリンラガービールの方は苦みがきいていて、味がついているのであった。うま味があると言ってもいいかもしれない。のどごしが良く水のようにスイスイ飲めるビールと、苦みとうま味があるビールとの違いのように感じられた。
外の誰もが同じように感じるかどうかは知らない。私独自の感覚かもしれない。味の違いを区別して、どちらを選ぶかも人それぞれであろう。大勢の人がアサヒスーパードライを選んでシェアNo.1になっている。
キリンビールはシェアNo.1から転落し、いろいろと迷ったのであろう。今では「一番搾り」が主力のビールになっている。「一番搾り」はドイツのビール法よろしく、麦芽とホップと水だけで作られていて、発酵して最初に搾ったものだけを使っているのかな。詳しくは知らない。コーンスターチを使っていない分、キリンラガービールとは違った味になっている。飲み比べたことはないのだが、キリンラガービールの方が苦みがきいていて、「一番搾り」の方が甘みがあるような気がする。どちらを好むかは、人それぞれである。私が思うに、キリンビールはどっしりと構えていて、独自路線のキリンラガービールを売り続けていれば良かったのではないか。支持層の年齢が上がって、シェアが下がっても、良さを認めてくれて支持してくれる層が必ずいるはずだと思う。
サッポロビール黒ラベルにも言及しておかなければならない。これは独自路線を営営と守り続けていて、シェア獲得競争には遅れをとっているものの、揺るぎない固定ファンをもっているビールだと思う。私の印象としては香ばしさがあり、固有の味わいを持っているビールであると感じている。北海道で飲んだサッポロビールは抜群に美味かった。旅に出たシチュエーションが味に影響したかどうかは知らない。新鮮さ、つまり製造後の経過時間も味に影響するのかもしれない。ビール工場の試飲も美味いのだから。
サントリーのプレミアムモルツ、これも美味いビールである。どう美味いのか説明できないが、美味い。麦芽とホップと水だけでできているビールである。私の印象としては少し甘みがある。
発泡酒や第三のビールも進化してきていてビールに近付いているものや独自の路線を行くものなど多種多様に分かれてきているのであろう。あまりいろいろと飲んだことがないので軽率なことは言えないが、ものによってはビールに遜色のないものがあるようである。糖質0の発泡酒は甘くないのであろう。スキー仲間の中には糖質の少ない発泡酒を飲むことにしている人もいる。その味になじんできていると聞いた。金麦の青缶を以前飲んだとき、かなりビールに近いと感じたことを思い出す。
ところで、私は普段何を飲んでいるか。黒ラベルやら、一番搾りやらを飲んでいた時期もあったが、ここ数年はヱビスを飲んでいる。理由は麦芽とホップと水だけで作られていて、甘くない心地よい苦みがあるからである。私の感覚で美味いと感じ、経済が許すのである。あとはつまらない矜恃かな。ちょっとリッチな気分を味わえる。私にはビールの味が分かるのだという自負を持つことができる。言ってしまうと味とは関係なく、陳腐で汗顔ものだ。
食べてみよ見てみよおのが耳をもて音を聞きみよ良きもの分かる(『寝惚亭新葉集』より)
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