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短編 | とある街で

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短編集 | とある街で | 11:30 p.m.真夜中のモンブラン

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) 週末の仕込みを終え、明日のスタッフのシフトを確認し、お店を出たのが10時半。途中コンビニによって帰宅し、ざっとシャワーを浴びたところで、すでに時計は11時半を回ろうとしている。 あぁ。つかれた。 毎日そう言って、ソファに倒れこんでいる。四六時中、仕事のことを考えているが、辛いと

短編集 | とある街で | 9:00 p.m.レイトショー、ポップコーン

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) 企画資料をまとめていたらこんな時間になってしまった。急いで会社を出て、映画館へと走る。 郊外のシネコンを除いて、この町の映画館は一つ。社会人になって引っ越して来た知り合いのいないこの町での楽しみは、専らここで映画を観ることだ。 金曜日の夜ということもあり、映画館は混んでいた。夕

短編集 | とある街で | 8:00 p.m.さきちゃんのお茶会

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) しーーっ、ママがこないようにしずかにね。 ベッドに入っていれば、ねたふりすればいいからだいじょうぶよ。 きょうは、これからお茶会をするの。 アリスのティーパーティーみたいな、おおきなテーブルで、 さきちゃんとあなただけでね。おやつをひとりじめするのよ。 のみものは紅茶にする?そ

短編集 | とある街で | 6:00 p.m.商店街、再会コロッケ

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) パートを終え、旦那のスーツを取りにクリーニング屋に行き、その足で商店街に買い出しに来た。娘のお迎えまで三十分。肉屋へ向かう。 駅前の商店街は、私が子どもの頃からほとんど変わっていない。八百屋、金物屋、一昔前のデザインの服が並ぶブティックなど、昔ながらのお店がそのまま残っている。郊

短編集 | とある街で | 4:30 p.m.昇降口、メロンパン

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) 帰りのホームルームが終わり、先生から返却された携帯を開くと、「ねぇ、さっきヤバかったんだけど♡♡♡あと、コーチに対戦表もらってから向かうから昇降口で待ってて」と美咲からのメール。 ホームルームの前に、近くの席のみんなで雑談していた時のことだ。話はひょんなことから好きなパンの話にな

短編集 | とある街で | 3:00 p.m.ビジネスホテル、ドーナッツ

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) さっきから、足元でシーツがよれて、居心地が悪い。直すのも面倒で、シーツにくるまってだらだらしている。 就活の面接でこの町に来た。日帰りは難しかったので、安いビジネスホテルに予約を取った。 ホームページをちらっと見ただけのさして興味が湧かない会社の面接を終えて、ホテルの部屋に戻ると

短編集 | とある街で | 2:00 p.m.公園、タマゴサンド

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) 常連の佐々木さん、商店街の肉屋のおっちゃんが帰り、面倒くさい親戚の祐作がきたから退散する。まぁ、接客はほとんど妻に任せているのだが。 「お父さん、公園?」 「あぁ。」 はいはい、母さんは前掛けで手を拭いて、弁当包みと水筒を俺に手渡した。 「飲み物、あったかいのにしておいたから。

短編集 | とある街で | 10:00 a.m.取引先、つまらないものですが

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) ふぅ、と一呼吸ついて、呼び出しボタンを押す。 「商工観光課の高橋です。10時から佐藤さんとお約束しておりました。」 受付の電話で努めて明るく名乗ると、お待ちください、と若い女性の声が応えた。 程なくして、小柄な女性がドアを開けた。佐藤さんの部下の伊藤さんだ。 「お世話になっており

短編集 | とある街で | 8:00 a.m.喫茶店、モーニング

とある街の、ある日。 どこかにいるかもしれない9人の物語。 知らない誰かとも、どこかで繋がっている日常を、 おやつと共に描く短編集。 (2021年11月開催 絵とことばの個展「おやつ展2」より) 朝一番、メール一件、上司から。 「佐藤さん 午後の資料を添付します」午後からの社内ミーティング資料だ。 ない。添付がない。ため息をついた。 もう何度目だろうか。部下の私が言うのは何だが、とにかく詰めが甘い上司は、連絡事項も漏れが多い。 会社に寄ってから打ち合わせに向かった方が良い