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#90 PKSHA(3993) 2020/12/15


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       山本潤監修「グロース銘柄発掘隊」 第90号

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 山本潤氏率いる「株の学校」で、山本氏をはじめとする講師陣の薫陶を受けた精鋭アナリスト達が、成長株を発掘し、その内容を詳細にレポートします。

 毎週火曜日配信、1回に1銘柄の深掘りレポートです。


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               【目次】


■はじめに
■PKSHA(3993) 客員アナリスト 小月陸
■モデルポートフォリオ 12/1更新


※本メルマガの一部内容を、億の近道へ抜粋の上掲載することがございますので、あらかじめご了承下さい。


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■はじめに


 NPO法人イノベーターズ・フォーラムのご協力により、客員アナリスト
たちのレポートの有料メルマガを提供しております。

 グロース銘柄発掘隊の隊長は東京2期生です。
 彼の指揮下、隊員たちは、週に一本のフルレポートをディープに発表します。
 どれも個性あふれるレポートです。

 投資家のみなさまにおかれましては、ぜひ、グロース銘柄発掘隊の客員アナリストたちへのご支援をよろしくお願い申し上げます。

(山本潤)


【発掘隊より】

 グロース銘柄発掘隊は、5年から10年以上の長期投資に耐えると思われる銘柄を発掘し、調査分析するものです。配信した銘柄は短期的に株価調整する場合もありますが、対象企業の前提条件が変化しない限り、問題ないと考えます。
 配信した銘柄は定期的にチェックしております。もし、前提条件が変わったりビジネス環境が大幅に変化した場合には、あらためてフォローコメントを配信致します。



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■PKSHA(3993)

 今回取り上げるのは数あるAI企業の中でも王道を走るPKSHA
Technologyです。同社は深層学習という技術を活用し、アルゴリズムの受託開発や、独自のソフトウェアを開発しています。

【会社概要】

 ◆沿革


 同社は2012年に当時東京大学博士課程にいた上野山氏が創業しました。
 上野山氏は東京大学の修士課程卒業後ボストンコンサルティンググループにてコンサルタントとして仕事をし、その後博士課程に戻ってきました。

 創業のきっかけは画像認識の領域であるブレイクスルーが起こったことでした。2012年にILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition
Competition)という画像認識の国際的なコンペティションで、大きな技術革新が起こったのです。
 このコンペでは画像に何が写し出されているかをカテゴライズして、正答率の高さを競います。2011年大会までは、エラー率が精々25%台に乗ればいい方で、1年で1%改善するかどうかといった争いでした。
 しかし、2012年の大会で深層学習という技術を用いたチームが他のチームをぶっちぎり16%のエラー率で優勝します。その後、エラー率は飛躍的に改善していき、2015年にはマイクロソフトやGoogleが3~4%のエラー率で、人間の精度であるエラー率5.1%を超えたとされています。

 従来の認識方法は、例えば猫であれば「耳が尖っている」「目が丸い」「髭が長い」など特徴に当たるものを人間が定義しプログラムに一生懸命入力していました。これに対し、深層学習は、特徴の定義を人間がすることなく、多くのサンプル画像と正誤表さえ与えれば勝手に学習し精度をあげていくという点が優れています。
 この技術自体は2006年には論文化され世の中に公表されていました。しかし当時の市販のコンピューターでは膨大な情報量を処理することができず、あまり活用されませんでした。その6年後、半導体技術の進歩に感謝という感じですが、ようやく日の目を見ることになります。

 その後は多くの方が知るように、自動運転や囲碁将棋などのボードゲーム、クレジットカードの異常検知、スマートスピーカーなどさまざまな分野で深層学習の技術が活用されるようになります。

 50年来のブレイクスルーと言われるような技術革新に後押しされ、博士課程で所属していた東京大学松尾研究室の同僚とともに上野山氏はPKSHAを起業します。創業時のアルゴリズムモジュールの受託開発が順調に伸びてわずか5年でマザーズ上場を果たします。
 2020年9月期の決算では、売上高73億、営業利益6億円という規模感です。


 ◆ビジネスモデル


 ●アルゴリズムモジュールの受託開発とライセンシング

  同社の主力ビジネスはクライアントから受託開発を請負い、目的に応じて必要なアルゴリズムモジュールを実装する事業です。
  この事業では、月額400万程度で3ヶ月~半年かけてアルゴリズムを納品します。そして、納品後は年間1000万円のライセンスフィーを受け取るストック型のモデルです。
  案件として多いのはクレジットカードの異常検知アルゴリズム開発です。
  クレジットカードの通常の使用履歴と不正に使われた履歴を学習させ、不正利用の可能性が高い履歴を洗い出せるようにします。従来であれば膨大なデータから不正利用の痕跡を探し出す事自体不可能に近い作業でした。
  しかし、現在では精度良く不正を検知することができるようになったため、大幅に費用を削る事ができるようになりました。
  この他にも製造業における画像認識アルゴリズムの開発や、様々な業界での需要予測など多くの分野でサービスを提供しています。

 ●ソフトウェアの販売

  同社は、受託事業で特にニーズのあった製品をソフトウェアのパッケージ化して販売しています。
  その中でも順調に成長しているのが、BEDOREというチャットボットです。BEDOREは主にユーザーがサービスを利用していて困り事があった際の一次受付としてサポート対応をするためのツールです。
  従来であれば困り事があった際コールセンターに直接電話して相談を行っていましたが、多くの顧客を抱えるネット証券や損保、ECサイトなどでは、サポート担当者の負荷が膨大なものになってしまいます。そこで自動対応するBEDOREのようなチャットボットを導入することで、解決難易度が高くない問い合わせは極力自分で解決してもらえるよう促すことで、コールセンターにかかるコストを大幅に減らすことができます。
  BEDOREの事例ページではマネックス証券や損保ジャパン、ANAなどの事例が公開されていますが、いずれも40%~70%問い合わせが減ったとされています。
  BEDOREは完全にSaaSモデルのサービスで、顧客あたり初期導入に数百万、機能に応じて月額300~500万円の売上です。チャットボットの中では完全にエンタープライズ向けに特化していて高額高性能というポジショニングになっています。

  参考:BEDORE事例ページ
  https://www.bedore.jp/casestudy/

  BEDOREの他にもHURS(ホルス)という画像認識のためのプロダクトや需要予測をするためのPREDICOなど受託開発で汲み取ったニーズをソフトウェアプロダクトに落とし込んでいます。

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