見出し画像

欧州キックスクーター体験記

2年ほど前からアメリカやヨーロッパで流行っているキックスクーター(電動キックボード)のシェアリングを体験してきた。

今回訪れてみたのは、イタリア、オランダ、ベルギーのいくつかの都市だ。

キックスクーターシェアリングを手がけている会社はいくつもあるが、なかでもグーグルが出資するLimeとUberの元重役が立ち上げたBirdが有名だ。
パリでは10以上の事業者が展開していると聞く。

専用のアプリをダウンロードすれば、すぐに使えて、街中のどこにでも乗り捨てができる。速度は20キロから25キロくらいまで出せる。
とても便利な反面、サンフランシスコなどでは数が増えすぎて社会問題にもなっているらしい。

ということで、物は試し。

まずは観光客の多いミラノで試してみた。
ミラノでは、上記のLimeとBirdの他に、Dottというのもあった。
アプリを立ち上げると、まずどこにキックスクーターが置いてあるのかが分かる。

↑これはlime。緑で囲まれたエリアが走行可能なエリア。

↑これはdott。Limeより細かくエリア分けされている。(中心部など人が多いエリアでは速度制限がされるようになっていた。)

キックスクーターについているバーコードをアプリで読み取ると電源が入りすぐに使えるようになる。

アプリに表示されるインストラクションも分かりやすい。

基本は自転車道を走ることになっているようだ。

どこでも乗り捨てが可能なのであちこちに置き去りされているかと思いきや、意外とそうでもない。

毎日きちんとロードバランスしているようだ。

乗り終わると↓のように走った記録が残る。

次にローマでも試してみた。

ローマの中心部は自転車道があまりないので、車道や歩道を走った。

車道だけを走るのは流石に少し怖い。歩道は石畳みでこれには向いていなかった。
なので、ミラノに比べるとローマではシェアリングできる台数もそもそも少なかった。

ちなみにローマではセグウェイツアーも体験してみた。

コロッセオやスペイン広場など名所を巡れて、これはこれで楽しかった。初めて訪れる都市を初めて巡るのにセグウェイツアーはやはりちょうどよい。身体感覚で都市がマッピングできる。

次にベルギーのアントワープでもキックスクーターを試してみた。

ミラノやローマでは観光客の利用が多いようだったが、アントワープでは住民の人たちの利用が多く見受けられた。

アントワープは自転車道がきちんと整備されているのでとても走りやすかった。

自転車のシェアリングもたくさんあるし、多様な形の自転車もたくさん走っていた。

次にオランダに行ってみた。

オランダではキックスクーターシェアリングがなかった。アプリで検索しても出てこない。

さすがは自転車大国。アムステルダムやライデンの中心部は車より自転車が多くて、駐輪場もたくさんあった。自転車道もたくさん整備されていて、シェアリングも充実していた。ebike(電動アシスト自転車)も多い。

オランダではみんなそれぞれ自転車を持っていて、たぶんそれで十分なのだろう。

街の中心部なのに、車がほんとに少なくて自転車ばかりなのだ。朝の通勤時間帯に車の音がしない静かな街の中心というのはなかなか良いものだと感じた。

※ちなみにヨーロッパ式のebike(電動アシスト自転車)を、今回、僕たちもローマで試してみた。

日本のものと違って、アシスト力が25キロまで変わらないので坂道も楽々登れるし、25キロの速度で川沿いをずっと走っていても全く疲れない。

パリ

ちなみに今回の視察ツアーでは行かなかったが、パリをキックスクーターアプリで検索すると以下のような感じだ。

さらに、もう少し広いエリアで検索してみると。

都市によってバラツキがあるが、結構な数の都市でキックスクーターのシェアリングが行われている。

面白いのは、「国」ごとというよりは、「都市」ごとによって違う、というところだ。都市の性質や向き不向きによってあったりなかったりしているところだ。都市ごとに判断しているのだと思う。

都市ごとにそれぞれの場所にあった多様なモビリティが市民の責任において選択できるようになっている気がする。

さて、一方、我が国日本ではどうか。

これから福岡市などいくつかの都市でもキックスクーターの実証実験が始まろうとしている。

法律的に言うと、現行法でキックスクーターで公道を走ろうとすると、ナンバーやいつくかの保安設備をつけて車道を走ることになる。
自転車道を走るためには、何らの規制緩和措置が必要になる。特区の申請か経産省の企業実証特例制度などだ。

我が国では、道路に限らず都市計画でも福祉でも教育でも全ての法律が全国一律だ。法律の下に政令、省令と事細かに一律に決められている。
都心と地方で様々な格差が広がり、交通事情や福祉の状況なども各地域で違うのにだ。
離島でも然りだ。

自治体はグローバルにもドメスティックにも都市間の競争に晒されているにも関わらず、案外権限がない。
何かしようとすると法律の問題がネックになり、いちいち国にお伺いを立てなくてはできないことがある。
特区でもなんでも国との折衝には数年かかる。個別に国と交渉しているうちに、グローバルな動きはどんどん進むし、地方の課題も膨らんでいったりする。
個別交渉だけで自治体職員も疲弊してしまう。

時間をかけて交渉してみるものの、以外と骨抜きになることも多い。

全国一律に考え、多方面に配慮せざるを得ないので、民泊もライドシェアも中途半端になる。これはある意味仕方のないことだ。

改めて、都市の競争力を高めるには、地方分権の流れを作る必要があると思っている。

例えば、道路交通法でも都市計画法でも、法律や政令までは全国一律でいい。省令レベルは自治体ごとの判断に任せるなど、大胆な権限委譲が望ましいのではないか。

民泊だって、国が細かくルール決めずに、各地域の知事や首長の判断で、やるやらない、やるならうちはこういうルールでと各地で決めさせたらいいと思う。

これだけ格差が広がりつつあるなか、東京と他方が同じルールでまちづくりするには無理がある。

いきなり全部は無理でも、例えば特区などの実績のある地域に限って、関連する分野の権限を下ろすなどの地方分権の実験があっていいと思う。

おれが責任を取る、だからこの分野のこの権限をおれによこせ!と公言できる首長が何人か現れて、一緒になって国から大胆に権限を奪ってくるような真の地方分権の流れができることを期待している。

我が国の課題を解決するには、個別事案の特例の実験ではなく、地方分権の実験が必要だと思っている。

僕が2年前に書いたブログ↓。
「規制緩和の先にあるもの」
https://nma.jp/blog/170731.html

「国家戦略特区について思うこと」
https://nma.jp/blog/170805.html

2019 07 02

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?