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HAPPY SADによせて

2020年7月31日にOLD Jr.という名義で初のソロアルバム「HAPPY SAD」をリリースしました!長い時間をかけてやっとリリースした作品で、自分の哲学のようなものが詰まったアルバムなので少しずつここで、制作記を書いていきたいと思います。


悲しみは、幸せをふち取った輪郭のようなものだと思っている。
だからこそ、長い時間や膨大な記憶をともなう幸せの輪郭は、大きくて地平線のように果てしなく見える。でも、その輪郭がやがて薄れて、ぼやけたときそこには再び大きな幸せが滲み出てくる。

数年前、その幸せのふちみたいなものが見えた時、僕はこの作品を作り出した。
やがて、輪郭がぼやけてなくなるまで。



悲しいことがあると、曲を作る。
そうやって何枚もアルバムを出してきた。それが僕の悲しみ方だ。

ソロアルバムを作ろうと思ったきっかけは、いつもと同じ悲しみ方だと埒が明かないと思ったから。決して、1人で作りたかったわけじゃなく、むしろ沢山の人と話したかったからソロアルバムを作った。

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その頃は、とにかく色んな人とあって話した。この写真は、写真をやってる友人が、飲みに行った帰り撮ってくれた。ご飯も食べれず体重も7キロくらい減って、悲しみに暮れてた男を無神経に照らすフラッシュの明かりが、なんか良くて好きな写真。

この時、友人が本をくれた。(写真の左手に持ってるやつ)

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この本の書き出しはこんな感じ。

赤塚不二夫は2人いる。
泣いてる赤塚と、笑っている不二夫だ。

これも「HAPPY SAD」だ。
まだ全然ソロアルバムを作ろうなんて思ってなかったし、タイトルをつけたのもずっと後のことだけど、この1ページ目を読んだ時、ほんの少しだけ救われたのは覚えている。

それから、4年くらいかけてこのアルバムを作った。その間、親しいミュージシャンや、憧れのミュージシャンと交わした音や言葉。最終的に出来たものは、まさに悲しみの悦びのような作品だった。

このアルバムは、以前からアナでも演奏していた「274便」と、どうしても最後に入れたかった「Rinkaku」を除いては、ほぼ制作順に並んでいて、地平線のように果てしなく、くっきりと見えた僕の悲しみが、やがてぼやけていくまでの記録とも言える。そんな僕の悲しみに付き合ってくれた参加アーティストの皆さんには本当に感謝しかない。

幸せな時間や記憶は、いつも掴みにくく、悲しみによって初めてはっきりとした輪郭を持つ。そして、悲しみが薄れてしまえば、再びぼやけた幸せが顔をだす。でも、それだったら、悲しいままでいたいと思ったりもする。

だから、“HAPPY” も “SAD” もなくて、僕には全て「HAPPY SAD」なのだ。



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