『アイヌ民族は先住民族』は日本分断なのか?

2008年の本会議において「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案」が全会一致をもって可決された。そして2019年に「アイヌ施策推進法」で法律として初めてアイヌ民族を先住民族として位置づけた。

アイヌ民族は先住民族ではないという主張は、先住民族の権利を認めたくない、認めると日本分断してしまうからだ、という誤った認識が根底にああるようだ。しかし、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を踏まえているためありえない

アイヌ施策推進法

アイヌ施策推進法の成り立ち

2007年に国際連合において「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択された。日本も賛成して批准をしている。この国連宣言は法的拘束力を持たないが、国内の法律を整備することで国連宣言を批准することを求められる。国連宣言を批准するための国内の法律として「アイヌ施策推進法」が2019年に制定された。

アイヌ施策推進法の付帯議決に国連宣言を踏まえることは明記されている。

二「先住民族の権利に関する国際連合宣言の趣旨を踏まえるとともに、我が国のアイヌ政策に係る国連人権条約監視機関による勧告や、諸外国における先住民族政策の状況にも留意し、アイヌの人々に関する施策の更なる検討に努めること。

先住民族の権利に関する国際連合宣言

アイヌ施策推進法が踏まえている先住民族の権利に関する国際連合宣言の第46条は以下のとおりである。

第 46 条
1.この宣言のいかなる記述も、国、民族、集団又は個人が、国際連合憲章に反する活動に従事し、又はそのような行為を行う権利を有することを意味するものと解してはならず、また、主権独立国の領土保全や政治的統合の全部又は一部を分割し、又は害するいかなる行為も是認し、又は奨励するものと解してはならない。
2.この宣言に掲げる権利の行使に際しては、すべての人の人権と基本的自由が尊重されなければならない。この宣言に掲げる権利の行使は、法によって定められ、かつ、人権に関する国際的な義務にしたがって課される制限にのみ服する。この制限は差別的であってはならず、他の人の権利及び自由の十分な承認及び尊重を確保する目的並びに民主的な社会の正当で最も重要な要請にこたえるという目的のためにのみ真に必要なものでなければならない。
3.この宣言に含まれる条項は、正義、民主主義、人権尊重、平等、非差別、良い統治及び信義誠実の諸原則に適合するように解釈しなければならない。

つまり、国連宣言で記述された権利は、日本国の政治的統合や領土の分割や、それを害する行為だと解することを禁止しているだけでなく、法律によって定められた範囲や良い統治のための諸原則に適合するように解釈しなければならない。
つまり、日本分断などに利用することはできないのである。

アイヌ施策推進法(アイヌ新法)の審議会

内閣委員会(平成31年3月6日)の会議録より抜粋より。アイヌ施策推進法によって日本の解体や分断はあり得ない。

○山岡委員:ちょっとお答えしにくい部分もあるかもしれませんが、アイヌ政策、このアイヌ新法を続けることによって日本が解体するとか分断になるとか、そうしたことについて、これはあり得るんでしょうか
 このことについて一言、官房長官からお願いできますか。
○菅国務大臣:あり得ないと思います
○山岡委員:ありがとうございます。

アイヌ施策推進法(アイヌ新法)の内容

アイヌ施策推進法の全文はこちらで参照できる。要約すると以下の通りである。

(基本理念)
アイヌ施策の推進は、アイヌの人々の自発的意思の尊重に配慮しつつ、アイヌの伝統等並びに多様な民族の共生及び多様な文化の発展についての国民の理解を深めること。

(国及び地方公共団体の責務)
市町村は基本方針に基づき、アイヌ施策推進地域計画を作成し、内閣総理大臣の認定を申請する。国は、当該認定を受けた計画に基づく事業に関しては、国による交付金の交付等の特別の措置を市町村へ講ずる。

(民族共生象徴空間構成施設の管理)
国土交通大臣及び文部科学大臣は、民族共生象徴空間構成施設の管理を、指定法人に委託するものとする。
指定法人は、同施設の管理、アイヌ文化振興に関する業務を行うものとする。

このように「市町村はアイヌ施策を推進すること」という規定と「民族共生象徴空間厚生施設の管理」の規定からなり、日本分断などはあり得ないことが分かるだろう。

アイヌ民族否定論に抗する

またアイヌ協会が独立国を樹立すると主張しているというのもデマである。

先住民族の権利に関する国際連合宣言では、以下の権利を宣言している。アイヌ協会の主張は国連宣言の先住権(自決権、自治権、土地権など)を主張しているのであり、独立国の樹立ではない。国連宣言の先住権は第46条とセットである。完全なデマ、もしくは勘違いである。

◎自決権(政治的地位、経済、社会、文化的発展を方針・方法の決定など)
◎土地権(土地や資源の返還や賠償などを求める権利)
◎自治権(自治を求める権利)
◎同化を強要されない権利
◎文化的・宗教的な慣習を実践する権利
◎独自の言語で教育を行い、受ける権利
◎伝統的につながりを持ってきた土地や資源を利用する
権利
…など

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