『スレイザスパイア ボードゲーム』の紹介

これはボドゲ紹介 Advent Calendar 2022 11日目の記事です。
ぐらぷす、いつもありがとう!!

昨日はニコ(@ikoan_kfa)さんの「常に攻め続けるボードゲーム出版社「Deep Print Games」はイイぞ!」でした。
イイね~~~~~~~!!!!!!!!!!


デジタルゲームの名作に『スレイザスパイア』がある。

本作は2017にアーリーアクセス版が配信され、2019年に正式版が発売された。

Metacriticスコア89点、steamでのレビューは圧倒的に好評と、世間からの評価は群を抜いてる。
本作の傑出した点は「ローグライクRPG」と「デッキビルディング型カードゲーム」を高いレベルで融合させたことだ。新たなジャンルを切り拓き、後の多くの作品に影響を与えた。
「デッキビルディング型カードゲーム」といえば、我々ボードゲーマーは『ドミニオン』を思い浮かべるだろう。

制作者も大のボードゲーム好きで、インタビューでも『ドミニオン』と『アセンション』から大きな影響を受けたと答えている。
私も「ボードゲーマーにおすすめのデジタルゲームは?」と聞かれたら、第一に『スレイザスパイア』の名を挙げるだろう。

さて、そんな『スレイザスパイア』のボードゲーム版が先日、Kickstarterで華々しい成功を収めた。

『スレイザスパイア』デジタル版の説明を軽く行い、ボードゲーム版がいかに優れているかを紹介しよう。


『スレイザスパイア』とはローグライクRPGである。
『風来のシレン』のようにゲームの展開は毎回異なり、失敗すればすべてを失う。
ダンジョンに挑む度にレベル1から始まり、その中で武器を拾い、使い捨てのアイテムを上手く駆使しながら、次々襲い来る危機に対処する。そんなジャンルがローグライクである。

そこにデッキビルディング要素を加えたのが『スレイザスパイア』である。
キャラクターの技はすべてカードで表されている。敵との戦闘が始まると自分のデッキからカードを5枚引く。その中から、合計コストが3になるように攻撃カードや永続カードをプレイする。それが自分の手番で行うことのすべてであり、終わったら相手の攻撃に移る。これを交互に繰り返す。
戦闘が終わると、新たなカードが3種類提示され、その中から1枚を獲得する。他にも様々なイベントでカードの獲得や強化を行える。
こうしてデッキをどんどん強化し、徐々に強くなっていく敵を倒していく。
敵の行動はあらかじめ表示されており、選択には計画性が求められる。隠されたデータも少なく、限りなくボードゲームに近いデジタルゲームと言っていいだろう。

そんなゲームがボードゲーム化された。本作の特筆すべき点は2つ
・デジタル版に元々存在する要素を、高い再現度で実装した
・多人数プレイを実装した

デジタル版をプレイした人は、こう思うだろう。「あの膨大な種類のカードを、どうやってアナログ化したのか?」解決策はこうである。「膨大な種類のカードを用意した」。
ボードゲーム版に収録されるカードは730枚以上。
キャラクターは「アイアンクラッド」「サイレント」「ディフェクト」「ウォッチャー」の4人がおり、それぞれに固有のカードがあるのだが、各80枚からなる獲得デッキが用意されている。
さらにこのカードは強化することが可能である。本作での実装方法は「表面に通常カード、裏面に強化版カードの両面仕様とし、スリーブを使用する」である。
ゲーム開始時のボーナスカード、火傷やめまいといった状態異常を表すカード、レリックカード、ボスレリックカード、ポーションカード、そしてモンスターカードと、ゲーム中に存在するあらゆる要素がカードで表されている。
つまるところ、カードの枚数という物量ですべてを実装している。

敵の行動は、プレイヤーの手番の前にダイスで決める。これにより、デジタル版のランダム性と見てから行動する計画性を両立させている。
マップはボードで表され、一部をトークンで決めることで、毎回ダンジョンは異なる。
筋力増加や毒といったバフ、デバフはトークンで表している。
さらにはカードのアンロック要素もあり、ダンジョンに潜るたびにカードが追加されていく。
ここまでやるかと思ったのが、アセンションの実装である。ゲームをクリアするたび、アセンションが追加される。これを有効化することで、さらに難しいゲームに挑戦できる。アセンション最大でクリアする頃には、このゲームのすべてを理解しているだろう。
さらには実績もある。「無限のカードコンボを成立させる」といった条件を満たすと実績クリアとなり、シートにチェックを入れられる。
なんとデイリーミッションもあり(なぜ?)、ダイスを振って今日の小目標はこれ!と毎回気持ちを新たに遊べる。
つまりデジタル版に存在するあらゆる要素があり、これをきちんとボードゲーム用にデフォルメして実装したのは驚愕という他ない。

再現性についての説明はこんなところにしておこう。
ここで「デジタル版やればいいじゃん」という向きもあるかもしれないが、それに対するこのゲームのアンサーはひとつ。

スレイザスパイアを多人数で遊べる

これに尽きる。

デジタル版スレイザスパイアはソロゲームである。最高のゲームなのだが、他人に勧めるにあたって「まあやってみてよ」と言う他なかった。
しかし本作は「一緒にやってみようよ」と誘える。
家族と、友人とスレイザスパイアが遊べる。スレイザスパイアファンにとって、これ以上の喜びがあろうか。

気になるのは協力ゲームとしての落とし込みだが、これもよい線をついている。
戦闘になると、各プレイヤーの前に敵が表れる。これは常に前のプレイヤーを攻撃するのだが、一方でプレイヤーはどの敵に対しても攻撃できる。
「私の前の敵が大技を放とうとしているから、みんな手伝ってほしい」「僕の敵は全部倒したから、次は君のところに加勢するぜ」。
こういった協力が可能であり、多人数で遊んでこそのゲームとなっている。

本作はスレイザスパイア好きに向けたファンアイテムに留まらない。
デジタル版を知らない人の心も掴んで離さないだろう。

そんな『スレイザスパイア ボードゲーム版』は、株式会社ケンビルから日本語版の発売がアナウンスされている。
今から待ち遠しくてたまらない。


余談
私は来年、ビジネスパートナーとボードゲーム出版レーベルを立ち上げる。
それにあたって『スレイザスパイア ボードゲーム版』の国内クラウドファンディングを行いたいと思い、版元に熱意を伝えるメールを送った。
が、返事はない。その後、海外版Kickstarterのコメント欄には「日本のパブリッシャー募集中だよ!」との版元からの投稿があった。
私たちはまだ……パブリッシュしていないのだった。私たちは泣いた。

とはいえ、まだ駆け出してもいないレーベルから出すよりも、ケンビルから出るほうが全員にとって幸せなのは確かだ。
私もファンの一人として、発売を楽しみに待つこととした。泣きながら。

ということで、明日は株式会社ケンビルのぬんさんの記事です。
楽しみですね~!


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