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特級呪物-お香(香木)のはなし-

呪術廻戦で一躍有名になった”呪物”という言葉。
最近では、呪物を取り上げたTV番組が放送されることもあります。

実際に呪物とはなんなのか?

呪術廻戦では、呪物は呪いが込められたモノとして扱われています。
辞書で調べてみると、呪物は「超自然的な霊威や呪力をもつとされて神聖視されるもの。禍福をもたらすもの。」とされています。

お香の世界でも呪物と思えるような香木の話があります。
それは、蘭奢待に次いで有名な伽羅の「一木四銘の名香」の話です。

通常、銘香と言われるものは一つの木に一つの銘が付きます。
これは、同じ一つの伽羅の木が四つに分けられ、それぞれに名前が付いたものになります。

「白菊」「初音」「柴舟」「藤袴(蘭)」の四つ銘香の話です。

この話には諸説ありますが、江戸時代に書物である翁草の「細川家の香木」を元に書かれた、森鴎外の「興津弥五右衛門の遺書」を元に話を致します。

chatGPTでの長崎の出島のイメージ画像

それは、寛永元年(1624)に、安南船(ベトナムの舟)が長崎に到着し、細川三斎が家来の興津と横田に、茶事に使う珍品を手に入れてくるように命令します。

幸いにも良い伽羅が入ってきていることを知りますが、先に伊達家の家来も来ており、それを手に入れようとしていました。

その伽羅は本木と末木の二つに分かれており、両者とも本木を手に入れるために互いに競り合い、値段がつり上がっていきます。

その中で、横田が「香木などに大金を出す値打ちはない、末木で良い」と妥協案をだします。
興津は「主人の命であり、茶事の心得がないから分からないのだろう」と言い返します。
仲間同士である興津と横田の意見が食い違い口論となります。

そして、カッとなった横田は脇に付けている予備の刀を興津に投げつけると、興津はそれをかわして刀を抜き、一太刀で横谷を斬り殺してしまいます。

その後に興津は本木を買い取り国に帰ります。
伊達家の家来は仕方なく末木を持ち帰ります。

興津は横田を殺してしまったことに対して、主人の細川公に切腹をすることを願い出ます。

細川公は、素晴らしい伽羅であっぱれと褒め称え、横田の跡継ぎの息子を呼び出し酒の席をもうけ、むりやり和解という形にしたという話です。

細川三斎がこの伽羅を聞いた際に、「きくたびに珍しければほととぎすいつも初音の心地こそすれ」と歌われ、初音と銘がつきました。

そして、二年後にその一部を天皇に献上し「たぐひありと誰かはいはむ末匂ふ秋より後のしら菊の花」と歌われ、白菊と違う銘がつきました。

伊達家が持ち帰った末木は「世の中のうきを身につむ柴舟やたかぬ先よりこがれ行くらん」と歌われ、柴舟と銘がつきました。

以上までが、”一木三銘”とされるもので「興津弥五右衛門の遺書」には書かれていませんが、後水尾天皇が「ふじ袴ならふ匂ひもなかりけり 花は千種の色まされども」と歌われ、藤袴(蘭)と銘がつき”一木四銘”とも言われています。
※各銘や歌には諸説あります。

素晴らしい伽羅を手に入れるためであれば、人を殺してもお咎め無しで済むとは、末恐ろしい時代であったんだなと感じるところです。

権力者たちが求めた蘭奢待と同様に、人を殺してでも手に入れようとする伽羅は、呪術廻戦的にいう「特級呪物」的なパワーを感じ取れるもので、人を引き付け狂わせる何かがあるのかもしれません。


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