あまり付けなかったペンダントと無くしたボールペン

 誕生日プレゼントを最後に家族から貰ったのがおそらく20歳の時で、それが白い革紐のペンダントだった。母親が選んだ品でお洒落なのは確かだったけど、趣味が合わなかったから付けたのは数回で、壁にかけたままオブジェと化していた。
この夏の人事異動で引っ越しした際に、処分したのか、どこかに紛れたのか分からないが今手元に無い。

「手元に無い」で思い出したのが中学生の時に貰った安物の緑のボールペンだ。(おそらく100円)
どういう経緯だったのか忘れたが、これも母親から譲られたもので大切にしていたわけでも、使い込んでいたわけでもなかった。
別に気に入っても無かったし、捨てようとしたこともあったが、「今母親が死んだら何となく後悔しそう」で捨てれなかったのだが、いつの間にか無くしてしまった。

手元にあるときは本当に何も感じない景色になっていたのに、今は胸を掻きむしられるような不在。

節分の日の父親からの電話。
母親の悪性リンパ腫の再々再発と脳への転移。
前回の寛解から再発までの期間が2か月ない状況下で、今回抗がん剤が効いたとしても残された時間は長く無く今年一杯はもたない予見。

どうして大事にできないんだろう。
どうして大事にできなかったんだろう。

なんとなく自分の誕生日まではもつ気がしていた。その予感だけは合っていた。

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