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ラストサマーバケーション 〜親友がキャンプ場でお持ち帰りした女の子を僕に押しつけた話〜



あの時は今より夏が輝いていた気がする。
ただ暑いだけじゃなくて、何かありそうな予感。照りつける日差しも何故か心地良く、蝉の鳴き声も耳障りでなかった時代。
大学は理系を選択していた僕にとって、4回時には実験に明け暮れるだろうから、その大学3回生の夏休みは実質最後の夏休み。

何かありそうな期待は妄想のまま、ゼミの親友Bの家に集まって昼間から酒を飲みながら麻雀を打ち、何の生産性もない時間を古びたクーラーの生温い風の中で過ごす。
そんなある日の出来事だった。

この非生産的なイベントが行われているころ、親友Aは小学生の頃から参加していたボーイスカウトのキャンプで某キャンプ場にいた。

親友Aは大学生ということもあり、組織の中では引率側の立ち位置で慌ただしく動き回っていた。
キャンプも一泊二日と呼んで良いのか分からないが、1日だけテントで泊まるという、そこまで規模の大きくない催しではあったが、初日を無事に終えて大人達と軽い酒盛りの後、早めの就寝となった。

人生では如何なる時に出逢いがあるか分からない。それは親友Aがふと夜中に目が覚めて、トイレに起き用をたして、手を洗っている時だった。後ろにふと、気配を感じると5歳くらいの女の子が立っていた。
こんな時間に不自然だなと思ったその時、その女の子が忽然と姿を消した。
その瞬間電撃が走ったような感覚とともに、自分の体が肩から地面に押し付けられるように重くなったという。

もちろん一睡もできずにキャンプ場を後にした親友Aはその後、当時一人暮らしをしていたアパートへ帰宅。
そのあとから不可解な現象が周りで起き始め、寝ている時に人の気配がする。
歯ブラシの位置が変わっている。
そして極め付けがタバコを切らしたので買いに行こうとアパートの階段を降りようとしたとき後ろから押されて階段の下まで落とされた。痛みはそれほどでも無かったものの、見上げても誰もおらず心当たりは先日のその現象でしかなく、血の気が引いたまさにその時携帯電話が鳴った。

親友A もしもし

僕 今1人麻雀抜けてメンツ足りひんし、Bの家来れる?

親友A 行けるけど、いま俺取り憑かれてるで

この時点では意味不明の妄言としか思わなかった僕達は快く親友Aを招きいれた。

僕自身心霊体験にあったことがあったので、大袈裟に騒いでるとしか思わなかった。
そして、Aがことの経緯を説明しているとラップ現象と呼ばれる、モノを叩くような音がする事象が何回も起こり、この怪談話に真実味を加えることになる。

馬鹿なことを大人数でしてるうちは大丈夫という気持ちや害はないだろうという、今思えば超がつくような楽観的予測から無事に徹マンとなり早朝に寝て昼間に起きる学生の夏休みらしい幕切れとなった。


ここまでなら良かったのだが、僕が実家に帰って夜に音楽を聴きながら英語の勉強をしていてふと時計を見るとちょうど日付けをまたいだ頃だった。
そろそろ寝ようかと思ったその時だった。
ステレオから流れる音楽が急に音が割れまるでスローモーションのように奇怪な音をたてはじめた。
停止ボタンを押しても音楽は止まらず仕方なくコンセントを抜くとやっと止まる。
早く風呂に入り急いで寝ようとして給湯器をつけると機械的な女の声で「熱いお湯が出ます」というアナウンスが流れる。
実はこの給湯器は一回押すと電源が入り、40度の給湯を、二回押すと60度の給湯の設定になり、先のような音声が流れる。
しかし、僕は一回しか押してない。
風呂は諦めて、歯磨きだけして寝ようと思いたち洗面所で歯を磨いていた。
目の前には鏡、その鏡に映ったのは歯を磨くイケメンなはずの僕、、、はどうでもよくて、その僕の後ろを赤い服を着たおかっぱの少女が洗面所の入口からすっと通過していく姿だった。

この後何事も無かったが、Aに聞くとその消えた5歳くらいの女の子はおかっぱの赤い服を着た少女だった。

自分がお持ち帰りした女の子は自分で責任とって欲しいものだ←

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