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こどもの一生2022 備忘録

様々な紆余曲折を経ながらも、2022年5月18日に無事幕を下ろした舞台「こどもの一生」について、自分なりに記録に残しておこうと思う。

小説版との相違点

※初演〜2012年上演版は観劇していないため小説版のみとの比較になり、また記憶に間違いがある可能性もある旨留意頂きたい。

特に気になったもの

  • 冒頭に「1944年の"中尉殿"と部下」、「こっくりさん」のシーンが存在する。(中尉殿は三友社長役の今井さんが演じているのだが、換算すると社長とは年齢が合わない。しかし、部下の名前は"山田"であり、ラストの結末で三友社長のみ蘇生しないことから、何か関係があるのではと感じてしまう。)

  • 柿沼が解離性人格障害である。主人格はしのぶ(表記不明)、青山学院大学卒・囲碁将棋の段位を複数所持・スイーツ男子・好きなキャラクターはピカチュウ・休日は洗濯や部屋の掃除をして過ごす・免許なし・高所恐怖症。第二人格が貞三、ビールが好き・空手など武道の段位を複数所持・大型免許取得・あべのハルカスのビアガーデンや東京スカイツリーなど高い所が好き。(小説版の柿沼の描写は貞三に近い。「貞三」は初演で升さんが演じていた柿沼の名前である。)

  • 結末がバッドエンドに思える。小説版では不穏な空気が流れているが、トゥルーエンドにも見える。

  • 小説版の終盤に存在した恋愛要素が排除されている。(→B級ホラー感が減っているように感じた。)

その他細かな相違点

  • 三友社長、柿沼が製薬会社所属という面が明確になっており、島に来た理由がMMM療法の技術を自社向けに流用するためとなっている。

  • 院長、婦長の年齢が小説版よりも高い。(→ベテランで信頼できるはずの大人がふざけている、重要なことを説明してくれないということで、小説版よりも2人に対しても不信感・不気味さを感じた。)

  • "クラアント"たちの病名が"うつ"ではなく、それぞれ明確になっている。

  • 主な舞台となる時代設定が2022年のため、「"昭和の"こどもの遊び」という台詞があり、遊びの内容も、チャンバラ以外はセーラームーンごっこ・メイドカフェごっこ・ポケモンごっこ・ガンダムごっこなど、イメージしやすいものに変更されている。

感想

ストーリー、設定について

 冒頭のシーンも含めて、結末に余白を残した内容で、良い意味でモヤモヤする・自分で考察したくなる舞台だった。私は謎が残った部分を解決したく小説版を購入したが、結末さえ全く異なっているように感じ、ますます謎が深まる結果となった。また、脚本の一部が観客がイメージしやすい内容に変更されていたことで、「孤島の精神病院での"こども返り"を通して巻き起こる不気味な出来事」という特殊な設定にもリアリティを感じた。
 過去の公演を観たり、脚本を読んでみたくなるような、久々に知的好奇心を刺激されるような作品だった。

主演、松島聡さんについて

 舞台初主演とは思えないほどの表現力だった。柿沼しのぶの設定は、彼や元々主演予定であった八乙女光さんに寄せられているように感じたが、(それによって)3つの人格を演じることになっているため、相当な難易度だったと思う。それを全く感じさせないような演じ分け・変貌ぶりであった。表情や声のトーンの変化はもちろん、台詞がない時の座り方や仕草などからもしのぶ・貞三・かっちゃん(柿沼幼少期)の性格の違いが伝わるような演技で、思わず高揚してしまった。私は、今までこの「舞台でしか要求されず、観客も観ることができない」スポットが当たっていない時の演技を楽しみに劇場に通っていたため、松島聡さんのそれが見られたことがとても嬉しかった。

(余談だが、千秋楽の主演としての挨拶も八乙女さんやそのファンの方、中止になった宮城・東京公演を観劇予定だった方など各方面に配慮されており、また共演者の皆さんを引き立ててから、最後にセーラームーンのポーズなどファンサービスをしてから袖に戻られていて、座長としてもアイドルとしても素晴らしい振る舞いだった。)

最後に

大好きなアイドルが大好きな演技をする俳優であったこと、そして素晴らしい座組に恵まれたことを感じた、私にとって忘れられない観劇体験だった。

最高の演技にも、良い作品にも出会える予感しかないので、これからも聡くんには俳優としての活動もぜひ続けて欲しいです。

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