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都会の半妖怪

仕事おわり、職場近くの無印良品でふらふら買い物をしていたところ、誰かに呼ばれた気がした。つけていたイヤホンを片方とり、振り返ると従業員?ではないらしい女性から、私は呼び止められていた。

青白い肌、切長な目にメガネをかけ、長い黒髪は束ねており、私よりも背の高いその女性は笑っているようで、どこか不安そうにもみえた。
私が肩にかけていたトートバックを見つめながら「あの、このバック何処で買ったんですか?めちゃくちゃかわいいですね。」と言う。

言われてみれば、確かにどこのブランドでも雑貨屋にもないキャラクターのトートバック。
西荻窪の老舗パン屋「しみずや」で、昔ながらのパンやクッキーの横で、ひっそりと売られているお店のオリジナルトートバッグなのだった。

このクマちゃんなのかタヌキなのか、ハッキリしないゆるい動物のクッキーがプリントされたトートバック。そう、かわいいのだ。

が、すれ違い様でもなく後ろから声をかけられ不意打ちすぎて一瞬「え?」と思ったが、素朴な雰囲気でバックを食い入るように見つめているので嫌な気もせず、隠す理由もないのでお店とバックの情報を伝えた。

それからも彼女はさらに話を続けた。
「私、福岡出身で高円寺に住んでいて、今日はこれから友達と飲みに行くんです!」
何も質問していないそばから、まるで会話が終わらぬように、次から次へと話をしているようにも感じられた。
その間、終始笑っているようないないような、不思議な表情と目をしていた。

福岡から出てきて高円寺に住んで、、
あまりにも自分と近い履歴なのだが、自己紹介の折々に私の住まいや職場、職業を聞いてくるので、直感的にやんわり全ての質問をにごしながら話しを聞いた。そうして一方的に話が続く。
「この辺りでどこか美味しいお店有りませんか?いつもどこで遊んだりしてますか?」と仰せ。
彼女、よくよく見ると若いのだろうけど老けても見えるし年齢も不明。
何というか全てが謎めいていた。

無邪気、、?あまりにも純粋すぎる気がする。
突然の始まりと終わらない会話にびっくり面食らってしまい、思考がじたばたしはじめた。
小生、汚れちまってる悲しみが、染みのように身体中あちこちにあるゆえ、悪いがこれにてゴメン!

みるみるこの立ち話が奇妙に思えてきて、
この会話の終わりは何かの勧誘か、卒論とか実験の為の遠隔モニタリングなのか。
ツヅラから最後は一体何が飛び出してくるんだ!と、急に怖くなりまだまだ話を続けたそうな彼女の顔もろくに見ぬまま、ささっと会話を切り上げてその場から逃げるように立ち去った。

そのまま駅へと向かい、乗車フルーツバスケットにはハズレて座れず、ドアに寄りかかり小さな窓から何も見ずにぼんやり考えていた。

さっき起こった出来事、あれは何だったんだ。
そわそわした気分が落ち着いた頃。
「東京暮らしですっかりオメェさんは、薄情で疑り深くなっちまったもんだな。」と、心の中の寅次郎、寅さんがつぶやいた。

あのメガネの彼女、本当にただただ純粋な女性だったのかもしれない。

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