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【1ヶ月書く日記】夢のダンジョン【24日目】

 年に1、2回。数えるほどだが悪夢を見る。今日がその日だった。


 自分は中学生の頃に戻っていて、当時通っていた学校の3年次の教室でいきなり試験を受けさせられた。机にテスト用紙が配られる。ワックスがけされた木の床が記憶を刺激した。


 恐ろしいことに中身は全く内容が分からない。かろうじて数学の問題であると推測は出来たが、あまりにも未知の内容だった。全て日本語で書かれているというのに、どれだけ問題文を読んでも一向に理解できない。頭の中が深い霧で包まれていくかのようだ。


 次第に恐怖を感じ、叫びそうになったところで目が覚めた。酷い夢だった。


 人間は未知なる存在に恐怖を感じやすいとは言うが、自分は数学に対して相当なトラウマがあったのだろうか。偶然という言葉では片付けられそうにはない。


 ベッドから起き上がると、自室のカーテンをそっと開ける。紺色の厚い布をずらした先には果てしない暗闇が広がっており、そこには膨大な数の数式が白い英数字と記号になって浮かびあがっていた。波打つ無数の演算子の海。まだ夢を見ているのだろうか? それともこれが現実?


 世界を構成するコードを一瞥し、カーテンを閉めると、再びベッドの上へと横たわり目を閉じた。彼らと分かり会える日は来るのだろうか。暖かいまどろみがゆっくりと、かすかに震える身体を受け止めてくれた。