小説同人誌装丁 2021~2022年
装丁を意識し始めた頃
私が初めての同人誌を作り始めたのは2020年の11月頃、発行したのは2021年の1月になります。
最初の頃は装丁にまで手を回す余裕が全くなくて、それはお金がないというよりは「装丁に凝る」という発想やリソースがなかったから、という理由でした。
本文を書いて印刷所を決めて表紙を考えて…くらいでいっぱいいっぱいだったと思います。初めての同人って知らないことだらけで毎日どきどきでした。
それが何冊か出すうちに慣れてきて余裕が出てきたので、装丁もこうこうこういう感じで…とイメージするのが楽しくなってきました。
今ではこういう装丁がやりたいから本を出したい…など、ない本文の装丁や表紙を考えるのが趣味になってきています。
ということで、2021年から2022年の間に出した同人誌の装丁の忘備録として、記録を残しておきたいと思います。
①2021/1/24「賽の河原で待ち合わせ」
正真正銘初めての同人誌。
初めてなのでかなりシンプルで、印刷所の標準的な仕様で作りました。
A6、128ページ
表紙用紙:OK特アートポスト
本文用紙:淡クリームキンマリ90K
デザイン:てんぱる様
印刷所:STARBOOKS様
私の基本的な本の出し方は
①webで短編をぽんぽん上げていく
②ログがたまってきたら書き下ろしもつけて本にする
です。
この形式で今まで5冊ほど再録本を出しています。
こういうやり方ならめちゃくちゃ本を出すハードルが低いのではないかと思います。
本を出そうと思ったのも、二次小説を書くようになって、少し作品がたまってきて、2万字あれば本になるんじゃ…?と思ったのがきっかけです。
同人をやっている皆様におかれましては、このように軽率にどんどん本を出してみてほしいです。
この時は本当に右も左もわからなかったので一番HPがわかりやすかったSTARBOOKSさんにお世話になったのですが、その後もリピートするには最適な印刷所さんだったなと思います。
HPのわかりやすさ、めちゃくちゃ大事だと思います。
表紙はBOOTHでデザインをしていただけるてんぱる様にお世話になりました。
こちらもその後何度もお世話になっています。
テンプレートや素材の量が本当に膨大にあるので選ぶのが大変かもしれないですが、こういうイメージ!というのがわりとはっきり決まっている場合は比較的選んで利用しやすいのではないかなと思います。
この表紙の時は「シックで落ち着いた、上品なイメージ」で依頼をしていたようです。
②2021/4/25「忘れられないの」
2冊目の同人誌。こちらも再録本です。
2回目で少し慣れてきたので装丁にも手を付け始めています。
A6、206ページ
表紙用紙:新・星物語マーガレット
本文用紙:淡クリームキンマリ70K
遊び紙:てまり・金銀
PP加工:マットPP
デザイン:てんぱる様
印刷所:STARBOOKS様
はい、表紙用紙を変えたり遊び紙を入れたりマットPPをかけたりしていますね。
この本の装丁はデザインと相まって今でもとてもお気に入りです。
てんぱる様が一発でめちゃくちゃ素敵なデザインを作ってくださいました。
表紙用紙は新・星物語というフレーク状のラメの入ったものなのですが、少し和紙っぽい用紙に上品なフレークが入っていてとても美しく質感も良い紙です。
遊び紙はてまり・金銀という、和紙に金と銀の糸が織り込まれているもので、カットする部分によって冊子ごとに異なる模様になる、というものです。
こちらもしっとりとした雰囲気に合ったものを選べてとても合っていたなと思います。
③2021/8/22「FEEL SO ALIVE」
3冊目の再録本です。
こちらはインパクトのある表紙にしたかったので初めて箔押しに挑戦しています。
A6、228ページ
表紙用紙:シェルルックNツインスノー
本文用紙:淡クリームキンマリ70K
箔押し:折り紙・ホロ
デザイン:てんぱる様
印刷所:STARBOOKS様
ぱっと見で派手!な表紙にしたかったので箔押しに折り紙・ホロという角度で見え方の変わるホロ系の箔を使用しています。
STARBOOKSさんは表紙用紙や遊び紙もそうなんですが、標準で常備している箔の種類がとても多いです。西村謄写堂さんとかは「言えば奥から何でも出てくる」といった印象なのですが、STARBOOKSさんは「あるよ、常に」という感じで、ずらっと常時カウンターに並べているイメージです。
なのでSTARBOOKSさんのHPの箔の紹介ページとにらめっこして、気になったものだけいくつかサンプルを購入して、実際に目で見て比べてから使う箔を決めました。この時に箔のサンプルをいくつか購入したのは、後々他の本を作る際にも役立ったのでとても良かったと思います。
ギラギラの箔にしたので表紙用紙をどうしようか迷ったのですが、デザインを白の余白多めのものにしてもらって用紙のギラギラのラメも楽しんでもらえるようにしよう、と思ったので表紙用紙はラメでギラギラのシェルルックです。
④2021/12/12「教祖様の言う通り」
4冊目、こちらは再録もありつつテーマに沿った書き下ろしが5万字くらいあったので新作本といっても過言ではないでしょう(過言かもしれない)
A6、210ページ
表紙用紙:ミランダ黒
本文用紙:淡クリームキンマリ70K
遊び紙:ヴィンテージゴールド・アンティーク
印刷指定:ホワイト+CMYK
箔押し:アメジスト
デザイン:ヤスミヤ様
印刷所:STARBOOKS様
表紙イメージが「御影石」だったのでミランダ黒という黒い用紙を使用しています。
それに伴い、印刷指定をホワイト印刷の上から通常のCMYK印刷をする、という手順にしているのでデザインデータも特殊なものになったかと思います。
思います、と他人事なのはデザインに関しては毎回デザイナーさんに依頼をしているおかげなのですが、デザイナーさんに心から感謝をすると共に、表紙を自分で作っていらっしゃる字書きさんは本当にすごいなあ…と尊敬するばかりです。
今回の表紙は初めて別のデザイナーの方に依頼をしています。
依頼文を考えたりイメージについてやりとりをさせていただいたりとても新鮮で勉強になる体験でした。
表紙にくすんだ金を使ったので遊び紙もヴィンテージゴールド・アンティークというくすんだ金の紙にしていて、そこの雰囲気もすごく合っていて好きでした。
キャラクターの個人的なイメージカラーである、金・紫・黒の三色で構成した表紙デザインになっています。
また、この頃から原稿作業中(主にプロットを立てている時など)に聴くプレイリストを作るようになりました。
元々プロットを考える時に音楽を聴いたり、曲からインスピレーションを受ける人間だったのですが、原稿ごとにプレイリストを作るようになると、イメソンなど出てきて結構作業が捗るので個人的にはおすすめです。
イメージする曲をとりあえず入れていって、原稿が進むにつれてイメージの変遷などもあると思うのでプレイリストも追加したり抜いたりしていって、原稿が完成する頃にはプレイリストも完成する、という流れです。
あとで聴き返したりした時に原稿の時の記憶が蘇ってきてあ〜〜〜という気持ちになれたりもします。おすすめです。
この本のプレイリストはこちら
⑤2022/3/21「Glare、閃光、スパークル」
4冊目の再録集。
A6、196ページ
表紙用紙:キュリアスIRホワイト
本文用紙:淡クリームキンマリ70K
箔押し:アバロンセレクト
デザイン:ヤスミヤ様
印刷所:STARBOOKS様
表紙イメージは「乱反射」と「アンドロメダ銀河」です。
依頼してからデザイナー様に言われて気付いたのですが、光の屈折である乱反射と宇宙空間にある銀河は同時に存在できないため、表1と表4でそれそれイメージを分けてデザインしていただきました。
こっぱずかしい依頼ミスですが、こういう積み重ねが人を成長させるのですよね…と思っておきます。こういうミスをやらかす人はそんなにいないと思いますが、皆さんは依頼する時には矛盾するイメージになっていないかどうか確認してから依頼しましょうね!私からのアドバイスです。
箔押しはアバロンセレクトという貝殻のような輝きの美しい箔を使用しています。
表紙用紙は今回ほとんど用紙が見えるデザインではないので、控えめなラメの入ったキュリアスIRホワイトにしました。
こちらのデザインもかなりお気に入りで、綺麗な仕上がりになったと思います。
この本のプレイリストはこちら
⑥2022/5/29「FEEL SO ALIVE 完全生産限定盤」
こちらは以前に出した再録集の書き下ろしだったバンドパロがその後もちょいちょい続いて結構な量になったので改めてバンドパロをまとめた本です。
私は少し年代の古いロックバンドが好きなのですが、そのオマージュを盛大に盛り込んだ内容です。
B6(DVDパッケージサイズ)、152ページ
ブックケース:ジュエルペーパーアクアマリン
カバー用紙:ユポ紙
表紙用紙:コートカード紙
本文用紙:コミック紙クリーム
印刷指定:RGB印刷+白印刷
PP加工:クリアPP(ブックケース)
デザイン:諸事情により伏せさせていただきます
印刷所:プリントオン様
バンドパロをまとめるにあたって最初の装丁イメージがもう「DVDパッケージ風にする!!!」だったのでDVDパッケージが本だと一体何サイズなのかを調べるところから始まりました。B6サイズ(青年コミックサイズ)でした。
それでブックケースを付けられるところ、というので今回はプリントオンさんに初めてお世話になっています。
プリントオンさんはサンプル帳の太っ腹さが有名かと思いますが、私もこれを機にと思ってサンプル帳(確実に3000円以上の価値があります)を買って特殊紙と特殊加工の種類の多さに驚きましたし勉強になりました。
その中から、ジュエルペーパーアクアマリンという、角度によって青~ピンクの色が楽しめる特殊紙をブックケースの用紙に、ユポ紙という少しマット感のある用紙をカバー用紙に選んでいます。
画像を見るとわかると思いますが、後ろの細かいデザインまで実際のパッケージに寄せて作ってもらいました。
5月末のイベントに出よう、と思い立ったのが3月末だったので装丁イメージ・表紙イメージ決め、デザイナーさん決め・依頼、印刷所決めなど色んな作業を3日ほどで行いました。もうしません。
パッケージ裏にライブのセットリストみたいに各話タイトルを入れてもらったりカバーデザインをTHE YELLOW MONKEYの「jaguar hard pain」オマージュにしてもらったりと、本当に趣味をここぞとばかりに入れさせてもらいました。装丁とデザインって楽しい!!!で全部押し切りました。
装丁がおもしろい本になったので、イベント会場でおそらく初見のおじさんから本について質問いただいたりと楽しい思い出もできました。
この本のプレイリストはこちら
⑦2022/8/28「玲瓏たるや妙声鳥」
これは日光企画さんの「白インクのハチペフェア」という8ページ折本を作れるフェアで作った折本です。
A5、8ページ
中綴じ製本
表紙・本文用紙:色上質厚口・赤
印刷指定:白トナー印刷
デザイン:てんぱる様
印刷所:日光企画様
なんか一回印刷所を使った折本を作ってみたいな、と思ったので8月は個人的に折本祭りにしました。
前にこちらの白ハチペのことは聞いて知っていたので、せっかくだし使ってみよう、ということで表紙抜いて7ページ分の話を書き下ろして由緒正しいやおい(いにしえより伝わる、やまもおちも意味もない話)本を作りました。
楽しかったです。
よく見るとノンブルを入れる位置を間違えていますね。
部数によっては一万とかしないで作れるので、長い話を書く体力がない時でも本らしい本を作りたい!という欲求を満たしてくれる素晴らしい存在です、折本…
⑧2022/8/28「24karats GOLD SOUL」
こちらも個人的折本祭りの時に作った折本。これはポプルスさんを利用しています。
A5、24ページ
中綴じ製本
表紙用紙:標準コート紙
本文用紙:淡クリームキンマリ90K
PP加工:クリアPP
デザイン:てんぱる様
印刷所:ポプルス様
8月2冊目はwebに上げた短編を突発的に本にするか~という感じで作りました、本文はもう出来上がっているのであとは印刷所とデザインだけだね!
ポプルスさんは無線綴じ(通常の製本)と中綴じ(折本)を同じセット料金内でできるため、無線綴じをやった方が本を作ったぞという気持ちになれるので断然お得だと思いますが、今回は24ページで何より折本が作りたかったので折本にしました。
オプション特に付けなかったんですけど、多分無線綴じと同様折本でも他のオプションも利用可能なんだと思います。
少なくとも遊び紙とかは入れられるみたいでした。
折本は何より気軽に作れるのでとてもいいなあと思います、同人誌のとっかかりがわからない、尻込みしちゃう人なんかは折本から始めてもいいかもと思いました。
こんな感じで2年間で少なくとも8冊は発行していたようです。
人って意外と頑張れるものだなあと思います。
装丁とデザインを考えるのは本当に楽しいし、日々考え続けていると本の見方も変わってくると思います。
この紙何を使っているんだろうとかこの装丁何だろうなど、自分で調べていつか出したい装丁デザインのリストが増えていくのもまた楽しいです。
頭の中に出したい装丁の本リストが現在4冊分ほどあるので、今年もマイペースに自分のこだわりが詰まった本を出していきたいと思います。
今年は一年分の本リストまとめられるといいな~!
皆さんも楽しい同人ライフを!
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