諸橋近代美術館「生誕120周年 サルバドール・ダリー天才の秘密ー」感想と見どころ
1.概要
地元・福島県にある諸橋近代美術館で開催されている「生誕120周年 サルバドール・ダリー天才の秘密ー」を観てきました。前から行ってみたかったのですが、お盆休みを利用して初訪問です。
2.開催概要と訪問状況
展覧会の開催概要は下記の通りです。
訪問状況は下記の通りでした。
【アクセス】
地元の福島市から友人の車で向かったのですが、1時間強といったところでした。駐車場は広かったです。
【日時・滞在時間・混雑状況】
日曜日の14:00頃に訪問しました。結構人は多かったのですが、作品が見づらいということはありませんでした。常設展も含めて1時間ほどで観終わりました。
【写真撮影】
常設展示の「テトゥアンの大会戦」のみ可でした。
【グッズ】
図録のほかに美術館のコレクションのミニカタログなど書籍が充実している印象でした。髭を付けるとなんでもダリっぽくなるのが面白かったです(笑)。
3.展示内容と感想
展示構成は下記の通りでした。
昨年クラウドファンディングの返礼品でいただいた招待券を使って訪問しました。建物からして西洋の古城のようで、非日常的な空間を満喫できました。
第1章ではダリの画業初期の作品や特徴的なモチーフを描いた作品が展示されていて、ダリのルーツに迫る内容でした。歪んだ時計や蟻、ロブスターなど違和感のあるモチーフを緻密な筆致で一つの画面に収める描写力と想像力には凄まじいものがありました。一方で印象派風の作品やキュビズムの影響を受けた作品があったりと、自分の画風を確立するまでの変遷が見られたのも興味深かったです。また妹を描いた素描「アナ・マリア・ダリの肖像」や静物画の「パンとクルミ」からはダリの基礎的な画力の高さが伝わってきました。
第2章ではダリの作品に加えてマグリット、エルンストなどシュルレアリスムを代表する作家の作品が紹介されていました。シュルレアリスムは「無意識の世界を描く」というテーマがあったようですが、日常的な光景に違和感を潜ませるマグリットであったり何かのキャラクターのように見えるミロの作品であったりと、それぞれ表現の仕方が異なるところが面白い点でした(個人の意識世界を描いているので幅があるのも当然な気もしますが、その割に喧嘩別れが多いような…。)。その中でダリの作品は様々なモチーフや寓意で武装しているようで、むしろ無意識の世界を守ろうとしているように思いました。
この章では4人の画家が1枚の紙に1/4ずつ描いて絵にする「甘美な死体」というシュルレアリスムの画家が行っていた遊びが紹介されていました。会場には来場者参加の「甘美な死体」コーナーがあったりグッズに「甘美な死体」用のノートがあったりと、美術館の遊び心を感じました。
第3章はダリの渡米後の作品がメインでした。ここでも粒子や波動といった科学的な概念を視覚化する画力に驚かされました。ただ科学的なモチーフを取り入れただけでなく、天使や聖人などの宗教的な題材と組み合わせた作品には20世紀の古典を作ろうという画家としての気概が表れているように思いました。その一方でダリが表紙を飾った雑誌であったり壁に書かれた強気な発言の数々からは現代のセレブビジネスに通じるものが感じられ、そういった面でもダリは先進的だったのかなと思いました。
常設展ではダリの彫刻作品が展示されていて、こちらも凄まじい精巧さで絵画作品と同様のこだわりを感じました。晩年の作品なので絵を描くのは目がキツイといった事情もあったのかもしれませんが、どんなジャンルの作品でも自分のスタイルを貫いたところに凄みを感じました。
会場に「天才を演じ続けよ。そうすれば、お前は天才となるのだ!」というダリの言葉が紹介されていましたが、まさに天才ダリというキャラクターを全うした生涯だったのかなと思いました。
4.個人的見どころ
個人的に下記の作品が印象に残りました。
◆サルバドール・ダリ「聖三位一体と聖司教」1960年 諸橋近代美術館
一見模様のようで何を描いているか分からないのですが、色の持つ象徴性とタイトルも相まって神秘的な雰囲気のある作品でした。
◆アンドレ・マッソン「ジェネシスⅠ(起源)」1958年 諸橋近代美術館
アクションペインティングのような手法で制作されたようですが、慣性というか、描いた時の勢いがそのまま絵の中で続いているように感じられました。
◆サルバドール・ダリ「幻視」1953-54年 諸橋近代美術館
衝撃の凄まじさが伝わる描写でインパクトがありました。いかに視覚を再現するかということではなく実際には見えないものをどのように表現するかという点でSF映画や漫画の表現に通じるものがあると思いました。
◆サルバドール・ダリ「テトゥアンの大会戦」1962年 諸橋近代美術館
ロマン主義の歴史画のような迫力に圧倒されましたが、馬がぶっ飛んでいたり意味ありげに数字が描き込まれていたりとどこか違和感があるのがダリらしさなのかなと思いました(人物の首の角度もなんか妙なような…)。
◆サルバドール・ダリ「聖ゲオルギウスと竜」1977-84年 諸橋近代美術館
精巧な彫刻作品の中でもこちらは特に迫真性があり、思わず見入ってしまいました。
5.まとめ
実はダリやシュルレアリスムにはとっつきにくさを感じていたのですが、美術館のダリ愛を感じる展示で親しみが湧きました。また福島に帰った時は行ってみたいと思います!
6.余談
ミュージアムカフェでダリをイメージしたという「シュール」というコーヒーを飲んだのですが、なかなか個性的な味で美味しかったです。美術館の窓から磐梯山を見ながらコーヒーを飲むという優雅な時間を過ごせました(笑)。
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