見出し画像

伊藤若冲「動植綵絵」感想

先日東京藝術大学美術館で開催中の「日本美術をひも解く」の
感想を投稿させていただきました。
そのうち「3章 生き物わくわく」で展示されていた
伊藤若冲「動植綵絵」については思い入れが強すぎて
個別に感想を記載させていただきます。

以前も軽く触れましたが、私が日本美術に興味を持った
きっかけは2019年に東京都美術館で開催された
「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」で
伊藤若冲の作品に触れたことでした。
愚かにもそれまで近代以前の日本の絵画に対して
「リアルじゃないし地味だし」といったイメージを
持っていたのですが、若冲の絵を見て描写の緻密さと
色彩の鮮やかさに魅了され、一発でファンになりました。
それ以来日本美術の展覧会も頻繁に観に行くようになりました。
(ではなぜその程度の興味関心で「奇想の系譜展」を
 観に行ったかというと、毎日通勤時に駅で看板を
 見てるうちに頭に刷り込まれたからです。
 プロモーションは確かに集客に影響します。)

今回若冲の代表作である「動植綵絵」30幅のうち
10幅展示されるということで、とても楽しみにしていました。
実際の展示は眼福の一言でした!また各作品を並べてみることで
一層若冲作品の魅力を深く感じることができました。
私が今回の展示で感じた魅力は以下の通りです。
(感動しすぎて暴走気味ですがご容赦を…。)

◆緩急自在の空気感
若冲の着色画は細密描写による緊張感のある画面を
想像しがちですが、それだけではない魅力がありました。
「芍薬群蝶図」は上向きの蝶と下向きの蝶が混在していて
不思議な浮遊感がありました。それに対して「群魚図」では
魚が一定方向を向いており、緩やかな水流を感じました。

伊藤若冲「芍薬群蝶図」1757年頃~1766年頃 宮内庁三の丸尚蔵館
※図録を撮影

◆質感の表現
いつ見ても若冲の鶏の羽のリアルさには感嘆します。
「芍薬群蝶図」は花の輪郭に白いハイライトが施されていて、
芍薬の艶と柔らかさが表現されていました。

◆デザイン性
写実的な描写が際立つ一方で、「向日葵雄鶏図」、
「紫陽花双鶏図」の花はデザイン化されているように感じました。
特に「向日葵雄鶏図」は繰り返しシンプルなデザインの
朝顔が描かれており、作品にポップな趣を添えているように思いました。

伊藤若冲「向日雄鶏図」1757年頃~1766年頃 宮内庁三の丸尚蔵館
※図録を撮影

◆描線の魅力
色彩も若冲の魅力の一つですが、筆さばきも見事でした。
「芦鵞図」の水辺の草は水墨画風に墨で描かれており、
気持ちの良い筆の走りを味わえました。

◆多彩な構図
30幅並べたときのバランスを考えてか、
画面の密度が濃いものだけでなく比較的
疎な作品もありました。「池辺群虫図」は
四隅を埋めていったような構成で、
連作にバラエティーを与えていました。

◆時間のコントロール
「芦雁図」は雁が凍った水面に落下している様子が
描かれていました。衝突前の場面ですが、路面のヒビや周囲の雪の粉が
飛び散っているような描写にぶつかった時の衝撃を感じさせるものがあり、
その後に起きることを予感させるものがありました。
(図録によると落下のモチーフには弟の死が影響しているとか。)

キャプションでは「裏彩色」など若冲が用いた技法が
解説されており、こちらを読んだ後作品を眺めるとより
若冲の工夫を味わうことができました。
(落款が四角いものと丸いものがあったのが気になったのですが、
 作品によって使い分けていたのでしょうか))

若冲作品の魅力を存分に堪能し、
至福の時間を過ごすことができました!!
会期まだありますので、気になる方は是非!!!

※グッズのクリアファイルもスタイリッシュでした。

今回展示を観に行くにあたり辻惟雄さんの
「伊藤若冲 よみがえる天才Ⅰ」を再読しました。
若冲の人生や作品の詳細な解説に加えて
辻さんの若冲愛と旺盛な探求心が感じられ
大変面白い一冊です。日本美術ファンの方は
是非ご一読を!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?