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SOMPO美術館「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」感想

SOMPO美術館で開催されている
「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」
を観に行きました。

展覧会の概要と訪問状況は下記の通りです。

スイスのジュネーヴにあるプチ・パレ美術館は、19世紀後半から20世紀前半のフランス近代絵画を中心とする豊富な美術作品を収蔵しています。プチ・パレ美術館は1998年から現在まで休館していますが、今回、日本では約30年ぶりとなるコレクション展を開催いたします。世紀転換期のパリでは、多くの画家たちが実験的な表現方法を探究し、さまざまな美術運動が展開されました。プチ・パレ美術館の特徴は、ルノワールやユトリロなどの著名な画家たちに加え、才能がありながらも、あまり世に知られていなかった画家たちの作品も数多く収蔵していることです。本展では、この多彩なコレクションから38名の画家による油彩画65点を展示し、印象派からエコール・ド・パリに至るフランス近代絵画の流れをご紹介します。

展覧会公式ホームページより

【概要】
  会期:2022年7月13日(水)~2022年10月10日(月)
 休館日:毎週月曜日 ※ただし10/10(月)は開館
開場時間:10:00-18:00
     ※入館は閉館30分前まで
  料金:当日券⇒一般1,600円、大学生1,100円
     事前購入券⇒一般1,500円、大学生1,000円
     小中高校生、障がい者手帳をお持ちの方は無料

展覧会公式ホームページより

【訪問状況】
    日時:日曜日午後
  滞在時間:15:00~16:30 
  混雑状況:割と空いていました。
       (天気が大荒れだったからかもしれませんが)
       作品と作品の間隔も広く、快適に鑑賞できました。
 感染症対策:入口で手指の消毒
  写真撮影:SOMPO美術館所蔵の3点のみ可、他は不可。

展示構成は下記の通りでした。
第1章 印象派
第2章 新印象派
第3章 ナビ派とポン=タヴァン派
第4章 新印象派からフォーヴィスムまで
第5章 フォーヴィスムからキュビスムまで
第6章 ポスト印象派とエコール・ド・パリ

印象派の出現を契機に表現の幅が広がった
フランス近代絵画の流れを追うという構成でした。
「新印象派」、「フォービズム」、「キュビズム」など
各潮流の作品の傾向、思想、人物の影響関係が分かり、
興味深く見ることができました。

「点描と言えばスーラ!」とか「キュビズムと言えばピカソ!」
というようなビッグネームを配した展示ではなく、
各潮流の作家を幅広く網羅しているところに特徴を感じました。
(図録によると、コレクションの所有者オスカー・ゲーズ氏は
当時すでに高額で取引されていたビッグネームの作品よりも
自分の審美眼にかなった作家の作品を収集し紹介するのが
使命と感じていたとのこと。)
その分初めて見る作家も多く新しい出会いを楽しめました。
一人の作家につき2~3点展示されているものもあり、
作風をより深く味わうことができました。

作家がいずれも個性派揃いで、作品だけでなく
人物にも興味がわいてくるところも面白い点でした。
特に気になった作家、作品は下記の通りです。

◆アルベール・デュボワ=ピエ「ボニエールの近くの村 」1888年
点描というと明るい日差しや穏やかに降り注ぐ月光を
思い浮かべがちですが、夕闇が次第に深まっていく様子を
表現しているところが斬新でした。一方で同じ作者の
「冬の風景」は氷の粒を敷き詰めたレイヤーを手前に
貼り付けたような硬質な感じが印象的でした。
軍務の傍ら絵を描いたり絵に専念したり軍に復帰したりと、
波乱万丈な人生も気にるところでした。

アルベール・デュボワ=ピエ「ボニエールの近くの村 」1888年 プチ・パレ美術館
※展覧会図録を撮影

◆アンリ=エドモン・クロス「糸杉のノクチューン」1896年
詩的な題名の通り美しい作品でした。薄紫の光に照らされて
踊る人物が舞台でスポットライトを浴びているようで、
物語の一場面のような趣がありました。背景の糸杉や
船が平行なラインで描かれているのも舞台のように
感じた要因かもしれません。

◆ ポール=エリー・ランソン「海辺の風景」1895年
魔術、オカルトにはまるなどややこしそうな人なのですが、
出品されている作品は日本の海岸風景のようで、
ギャップが面白かったです。ナビ派の画家は日本美術に
影響を受けていたと言われますが、東洋の神秘にも
はまっていたのでしょうか…。

◆アンリ・マンギャン「室内の裸婦」1905年
フォービズムの作品というと鮮烈な原色と荒々しい筆致による
力強さが特徴だと思うのですが、この作品は寒色が中心の
アンニュイな雰囲気が魅力になっていました。

◆マレヴナ「静物のある大きな自画像」1917年
はっきり言ってキュビズムは苦手なのですが、
この絵は分解した対象の再構成の仕方がデザイン的で、
親しみやすいと感じました。

◆シュザンヌ・ヴァラドン「コントラバスを弾く女」1908年
ドガ、ルノワール、ロートレックらのモデルを務める。

作家の技術を盗み自らも画家に転身。

エコールド・パリの有名な画家・ユトリロの母。
という映画の主人公のような経歴がインパクト大でした。
重量感のある作風も特徴があると思いました。

◆フェリックス・ヴァロットン「身繕い」1911年
バロック絵画のような質感表現と20世紀初頭のパリの
おしゃれさが合わさって、今回一番魅力を感じた作品でした。
作者のヴァロットンは「ボール」(2018年に三菱一号館美術館で
開催された「オルセーのナビ派展」で見ました)の印象が強く、
不穏というかシニカルな作品を描くというイメージがあったのですが、
このような日常の一瞬を鮮やかに切り取った作品も
あったというのが意外でした。

フェリックス・ヴァロットン「身繕い」1911年 プチ・パレ美術館
※展覧会図録を撮影

◆モイズ・キスリング「赤毛の女」1929年
病的な雰囲気に魅かれるものがあります…。
左側の影が別の生き物のようで不安感を掻き立てます。

作者の経歴を見ていてふと気になったことが。
どの作家も〇〇派と呼ばれる作風だったのは一時のことで、
その後新しい表現を模索し独自の画風を身に付けていったようでした。
50年~60年も絵を描き続けていれば作風が変わるのも
自然なことだと思いますが、気になった作家の画風の
変遷を追ってみるのも面白そうだと思いました。

よくよく見ると味があるような気がしてくる
作品が多く、とてもユニークな展覧会でした!

余談ですが、今回の展覧会は日本各地を巡回しており、
全会期通して1年半以上作品が日本に貸し出されることになります。
貸出元からするとこれだけ長期間作品が手元を離れるわけですが、
貸出元と貸出先の信用がないとできないことだと思いました。
色々な困難を乗り越えて展覧会を開催していただいた
関係者の皆さんに感謝です!

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