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大きな木とスミレちゃん (3)

マヤ:「スミレちゃん、家に来てくれるかな♪」

学校では、一日中このことを考えていました。

同級生:「素敵なワンピースだね!」

マヤはエヘヘと照れ笑い。

***放課後***

やたらと周りが気になります。まだかなぁ・・・。

スミレちゃん:「マヤちゃん!!!」
両手を広げ、お揃いのワンピースを来たスミレちゃんが到着しました。

マヤ:「じゃじゃーん!!!お揃いのワンピース!」
マヤも立ち上がり、同じように手を広げて見せあいっこします。

マヤ:「ね、スミレちゃん!私のお母さんが、一緒においでって言ってくれてて、どう?家、来ない?」
スミレちゃん:「すっごい嬉しい!!でも、都合が悪くて。。。」
マヤ:「そうだよね。急に言われても困っちゃうよね。じゃぁさ、帰ったらスミレちゃんのお母さんに相談してみてよ!」
スミレちゃん:「そうだね。行けるといいなぁ・・・。」

お揃いのワンピースを着て、いつもよりは大分高いテンションで合流した二人でしたが、結局は、いつものように各々の楽しみを満喫。マヤは読書。スミレちゃんは笛の練習。

スミレちゃん:「あっ!行かなきゃ!」
マヤ:「もうこんな時間!?家族と相談してね!きっと、私の家に来てよね!!!」
スミレちゃんは、コクリと頷き、二人はいつものように手を振って別れました。

***帰宅後***

マヤ:「ねぇ、お母さん、今日はスミレちゃん都合が悪いって一緒に来れなかったの。でも、家族に相談してみるんだって。いい???」
マヤのお母さん:「もちろん!マヤ、毎日楽しそうなんだもん。私も一度は会ってみたいわ。」


***翌日の放課後***

スミレちゃん:「マヤちゃん!」
マヤ:「ね、家族に相談してみた???」
スミレちゃん:「それより、この手紙、家に帰ったら読んで!!!私、今日は早く帰らなきゃなんだ。」
マヤ:「そんなぁああああ!!!!」
スミレちゃん:「ごめんね!!私、マヤちゃんとの時間、大好きだったよ!」

スミレちゃんは、手を振り、慌てて帰っていきました。

マヤ:「なんか、変なの。しかも、”だったよ”って・・・。なんだろ。手紙、読んでみようかな。」

*******
マヤちゃん
休ですが、私たち家族は、引っ越すことになりました。
私、マヤちゃんと過ごす時間が、一日の中で一番大好きで、マヤちゃんのことも大好きなたった一人の友達だったんだ。きっと、向かい合って、さようならって言えないから、手紙を書いています。引っ越しても、ずーーーーーーーと見守っているから!マヤちゃんの応援団だからね。大好きだよ。
PS マヤちゃんのお家に行けなくて、ごめんなさい。

スミレ

*******

マヤ:「そんな・・・!!」
涙が溢れてきました。
マヤ:「こんな別れ方って・・・。寂しいじゃん!」

「大丈夫?」と声を掛けてくれる大人を振り切って、家まで走って帰りました。

******
マヤのお母さん:「おかえりなさい!マヤ、この広報を見て!」
市の広報を持ってお母さんが迎えてくれました。
マヤのお母さん:「どうしたの!?なんで、こんなに泣いてるの!?」

マヤは、お母さんにスミレちゃんのことを話しました。泣きじゃくりながら。

・・・・・・・・・

マヤのお母さん:「マヤ、これ、ちょっと見てみて。」
そう言って、市の広報誌を差し出しました。
マヤは、何度も何度も記事を読み返しました。
マヤのお母さん:「そう。あの公園の木、隣町に移植するんだって。」
マヤは、何も言えませんでした。

スミレちゃんの別れのタイミング。そして、いつもいきなり現れる感じ。そして、スミレちゃんにはお友達がいなかったこと。どこの学校に通っているのかも分からなかったこと。

マヤ:「お母さん、私、スミレちゃんがどこに住んでいたのか、何ていう学校に行っていたのか、分からないんだ・・・。」

マヤのお母さん:「そう・・・。」

それ以上、二人はスミレちゃんの事を話しませんでした。

夜、寝る前、マヤはスミレちゃんのことを考えていました。

明日から、どこで本を読もうか・・・。スミレちゃん、いないんだ・・・。


次に続きます。次回は最終回です。

追伸:ストーリーが遅れてしまい、申し訳ありません。仕事の繁忙期で、仕事が終わったら、ぐったり・・・。バタバタと時間が過ぎてしまいました・・・。最終回は、今週金曜に予定しています。


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