見出し画像

Incident report (事件や事故等の報告)

アメリカの中学校オフィスに努めています。私は、日本の教育現場から離れて、だいぶ時が経ちました。現在の学校現場も生徒の傾向や環境も違っていると思います。これは、私が勤めている環境の一つとして参考程度に読んでいただければと思います。


日本の学校との違いで驚いた一つに、Incident Reportというものがあります。

何か友人やクラス、先生など、生徒を取り巻く環境で感じたり起こったことを報告するものです。このレポートは、常にオフィスに置いてあり、生徒が報告する必要があると感じたら、受け取りに来て、オフィスに提出します。生徒のみではありません。先生やオフィスも提出できます。

提出された報告書は、校長か教頭、カウンセラー等に共有され、事実確認が始まります。必要に応じては、スクールサイコロジストもメンバーに加わります。もちろん、守秘義務も発生します。

ー消しゴム取られたから、取り返したら打たれた
ーバックがなくなっている。間違いなく、盗まれたと思う
ー自分のことを、チビと呼ぶ
ー1ドル返してくれない

といったことから

ーフェイスブックのメッセンジャーで〇〇が〇〇の悪口を言っている
ー無視をされている
ー裸の写真を送りあいっこしようといわれた
ー〇〇先生が、〇〇を膝にのせるのが、気持ち悪い
ー〇〇は、家に帰りたくないらしい。理由は、〇〇〇〇だから。

など、なかなかの重い内容も含まれます。

スタッフにとっては、事実確認、意見のすり合わせ、和解策とやることは、なかなか多いです。しかし、学校単位での解決が難しい場合、この報告書を書類の一つとして、さらに上へとあげて解決へ向かいます。

「レポートをする」というシステムが当たり前の文化。報告したことを責める先生もスタッフも見たことはありません。さらに、報告したからといって、いじめが激化することもあまり見ていません。(処罰などの結果に対しては、様々な衝突が起こったりもしますが・・・。)たくさんの大人がかかわった以上、生徒たちからすると、見られているという感覚が生じるのでしょうか。

アメリカの子どもたちの中にも、積極的に報告することを嫌う子は、います。ただ一方で、どうしようもなくなり、誰に言えばいいのかわからないという子が選ぶ手段の一つでもあったり。最後の手段であったり。


私が、ふと思うこと。



このような報告書が、日本の学校に存在していたら、果たして生徒たちは提出するのだろうか?



アメリカの生徒たちは、自分にとって悪いことや心地悪いことに関して、主張してくる子が比較的多いように思います。(全員ではありませんよ!)Incident reportもその一つなのかもしれません。

数年前、中学校教員時代の先輩や同僚と話をする機会があったので、上記のことを聞いてみました。

ー日本の子どもたちは、調査されることを恐れず、報告書を提出するのかどうか。-

「うーん・・・。時間がかかると思う。目立つ気がして、ひるんじゃうかもね。」
「正直、提出された報告書の対応ができるかどうか・・・。」

これが、だいたいの意見でした。中学時代の私を振り返っても、同じように思います。そして、教員時代を振り返ったとして、同意見です。

学校に勤めると、楽しいことも嬉しいこともありますが、悲しいことに関しては、子どもに起こっていることなだけに、感情が数倍に膨れ上がってしまうように思います。報道される学校や子どものいじめや虐待のニュースを見ると、ふとIncident reportのようなシステムを考えてしまいます。

私をフォローしてくださっている方々には、学校や教育関係の方も多くいらっしゃいます。参考までに投稿させていただきました。お目通しいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?