ホタルカズラとムラサキ


庭に咲くホタルカズラ
庭に咲くホタルカズラ

道端に咲くブルーの花

春爛漫の時期に近くの山を歩いていると、日当たりのよい山路に青い花が咲いているのに出会う。その鮮やかな色の花がまるで蛍のように見えるので、ホタルカズラという名前がついたという。花より植物の名前であるホタルカズラの方を先に知ったら蛍が舞う梅雨の頃に咲く花だと思ってしまうに違いない。私はたまたま犬と山歩きをしていて、道に飛びだして咲いているのに遭遇した。花が咲くとランナーが延びてくる。人の歩く所にまで侵入していた。かがみ込んでツルを土手の方へやるついでに、ひと枝失敬してもらって帰った。道路側の庭に植えておいたら、今では四方八方に広がって花を咲かせてくれる。実に見事だ。通る人が足を止めて眺めてくれる。
下の歌を宮崎アララギの5月号に投稿した。

   地を延ひて四方八方に花ひらくホタルカズラのブルー鮮やか

絶滅危惧種の花

私の身の回りではあちこちに咲いているので、絶滅危惧種に指定されている都道府県が多いのを知って驚いている。ホタルカズラは、調べていくうちにムラサキ科の植物であるのがわかった。ムラサキという植物もある。万葉にも出てくるので、昔は普通に野にあった植物だったのだろう。高貴な色でムラサキで染めた衣裳は、身分の高い人しか着用できなかった。ムラサキの方が先に絶滅危惧種になったのかも知れない。野生で見つけ出すのは、至難の業になってしまったらしい。ホタルカズラのついでにムラサキを探しても見当たらない。絶滅危惧種になってしまったのは、乱獲によるののではなく、植生学上の理由によるらしい。
ムラサキは植物地理学でいう典型的な満鮮要素といわれる植物群の一種であり、日本列島が大陸と陸続きであった時代に分布していたものの生き残りであるという。満鮮要素の植物については、とても専門的なのでここでは省きたい。
先日山を歩いていて見かけたヤマルリソウも花が、ホタルカズラに似ているので調べたら、ムラサキ科だった。

ヤマルリソウ
ヤマルリソウ

染料としてのムラサキ

     万葉集巻十二 3101   詠人未詳
     紫は灰さすものぞ海石榴市の八十の衢に逢へる子や誰
この歌から古代でも草木染めには、媒染が行われていたことがわかる。ムラサキで染めると赤紫になる。そこへ椿の灰からとった媒染液を加えると、青紫色に変わるという。
私は数年前から草木染めをするようになった。この歌を思い出してムラサキで染めてみたくなった。我が家の辺りは自然の宝庫というような場所なので、近くの原っぱにムラサキが生えているのではないかと思い探してみたがなかった。
そこでホタルカズラで染めてみたらどうなるか気になるところである。ムラサキで染めるのは万葉にも出てくるが、ホタルカズラで染めるのは出てこない。ということはムラサキで染めるように鮮やかな色ではないのかもしれない。
桜の木の皮で染めると淡い桜色に染まる。ひょっとしたら、ホタルカズラも淡い赤紫に染まるかもしれない。今はミツバチの世話や採蜜などに追われているので、晩秋になったら染めてみたい。ホタルカズラの葉は、冬でも青々としている。ムラサキで染めるのはその根を使うようだが、ホタルカズラの根はどんなものか分からない。とりあえず葉やツルを使ってみたい。
どのようになるか楽しみだ。

参考文献
万葉植物文化誌 木下武司 八坂書房




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