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8.嫌われている場所に戻る、それだけの理由が出来た事


時間があったらで良いんで読んでみてください

また行くことに

学年は上がり、新一年生が入ってきた。
仮入部期間だけは出なくてはいけなかったので久しぶりに部活へと向かう。
案の定「来たんだ」とか「こういうのには来るんだ」など素敵な言葉で迎えられる僕。
来いって言われたから来たんだわ!!!と思いつつも、特に目立たないようにしていた。

見学に来ている一年生は見事に全員女子。
分かっていたけど今年も僕は部活に行く理由はなさそうだ。

下校途中、小学生のサッカーが同じだった子たちに会った時、ダメもとで
「一回バド部見においでよ」と声をかけると思いのほかいい反応で明日体験に来てくれるという事になった。

次の日、昨日の子が男子を6人引き連れてきてくれた。
その子含め5人は外部でサッカー、野球のチームに入っている子たち、もう一人は完全に昨日そのままの流れで誘われちゃって断れなかったんだね、、と言った感じの子。外部でチームがある以上部活には来れないだろうがそれでもこんなに連れてきてくれて感謝しかなかった。

その日も楽しそうにバドミントンをやってくれて、
上手くなった気がするとかおもしろいという感想が合間合間に聞こえてくるのが新鮮で、この子たちにさらに魅力を伝えるにはどうすればいいのかを考えていた。

しかしその日の最後。顧問から
「バド部は校内でも一番厳しい練習をしている」「本気で取り組まないと上手くなんてなれない」「練習に耐えられないでやめる奴や来なくなる奴もいっぱいいる」という話が合った。

正直頭がおかしいんじゃないかと思った。
きっと久々に来た僕に対して嫌味として言っているんだろう、ただ、それを今言ったら他にスポーツをやっている彼らは絶対に入らないのは火を見るよりも明らかだ。

完全に委縮する彼らを見て、この部活にはほんとに未来がないなと確信した。

帰り際みんなを集めてくれた子から、厳しいかもしれない、申し訳ないと言われた。謝るのはこっちの方だしあんなこと言ってるけど大丈夫だから考えてみて、と最後に無責任に声をかけた。


体験入部期間が終わり正式な顔合わせが終われば、僕が必ず出なくてはいけない期間がやっと終わる。

体育館に入ると体験入部に来てくれてた男子のうち3人が入部してくれていた。

その中には最初に声をかけた子も居た。
クラブが忙しいから中々来れないけど、僕が部活来てないって聞いてそれなら大丈夫だって思ったらしい。これはどういう感情が正解だったんだろう(笑)

俺は外で練習してるの!と言うべきだったかもしれないが単純に嬉しいが勝った僕はただただありがとうと言っていた。
その3人の中には完全にそのままの流れで誘われちゃって断れなかったんだね、、と言った感じの子も来ており、シンプルにどしたのって聞いてしまったが、至極単純で真っ当な理由「楽しかったからです」と言う言葉に泣きそうになった。

「ハタピー」と呼ばれていたその子は、変わった子だな、兄貴の小さい頃に似てるな(めちゃくちゃ私事)、あれ、この子サッカーにいた気がする。などなど何故かその子に関しては思うことがたくさんあった。

何はともあれ、男子が入ってきてくれたのがとても嬉しく、それと同時に「あ、俺先輩になるんだ」と言う自覚が芽生えた瞬間だった。

俺部活行かないといけないの?

次の日からは行かなくてはいけない時期は終わったからいつものように学校が終わって家に帰りいつもの練習に向かう僕(誘っといて行かないなんて最低ですよね)

19時からの練習に18時に家を出ると、車の中からよく部活終わりのバド部を見かけていた。見られたく無いから顔を隠しながらも少し気になるから見てしまう、一人離れた先頭に先輩が一人で歩いている。同じマンションだから余計申し訳ない、もし僕が部活に出ていれば先輩も一人で帰る事なかったのにと自責の念に駆られる。

その後ろ、離れた所に同級生と一年生達が固まって歩いている。あそこの連中が一番めんどくさいし、そこに大量の一年生も加わったんじゃやっぱりいけないなと思っていると、その中にめちゃくちゃ笑っている「ハタピー」がいた。しかも男子は1人。

なんでいんの?他の子がいる時に来るとかって言うスタイルじゃ無いの?しかもすげー打ち解けてんじゃん。あの子なんなの?お世辞にも明るいタイプには見えないけど?でも確かに嫌われるようなタイプには見えないか。にしてもあいつスゲーな。

次の日、学校でたまたま1年生と遭遇すると
「こんにちは!そういえば昨日先輩いなかったからハタピー寂しそうでしたよ」と言われた。まだ俺が邪魔者扱いされてるのは聞いていないんだな。それはそうと寂しそうだった?いや嘘つけーーーぃ!!!あんなに笑ってたじゃんか!!寂しい訳あるかい!(笑)と思いつつも少し話していた。

最後にその子達にこう言われた。

「先輩いないと寂しいだろうからハタピーの為にも来てくださいね」

今まで言われた事の無い言葉にその後すごく考えてしまった。

俺が1年近く部活行ってなくて、部員とも顧問とも仲悪いの知らないからそう言ってくれるんだろうな。ありがたいけど俺は行きたく無いから行かないよ。ごめんね。でも、あの子は俺がいなかったら誰が男子のバドミントン教えるんだろう、先輩は言っても教えられるような人では無いし、顧問は女子しか教えないし、形だけとはいえあの子は俺の初めての後輩なんだもんな、俺が面倒みないといけないのかな。じゃあ教えに行ってあげなきゃな。ん?まてまて、俺部活行かなきゃいけないの?

自分の都合で動いて良い期間には終わりがある。

そう考えるようになってから外部の練習のない日に何回か顔を出してみた。
先輩もハタピーも喜んでくれたし迎えてくれ、意外にも他の1年生が話しかけてくれた事でいづらさみたいな物が軽減された。相変わらず同級生と顧問からはきついあたりが来る、それでも今の僕は自分の練習に来ているんじゃ無い。この子を教えに来ているんだ、そう思っていたから自分練習できなくてもなんとも思わなかった。

意外となかった時間

次の試合が最後の試合になる。顧問の口から告げられるリミット。

次の春の大会で先輩は引退になってしまう。
つまり僕の引退まで後1年ちょっとということだ。記憶では引退試合までに大会が3、4個あるはず、そのうちの一個くらいなら都大会に出れると思っていた。

時間が経って引退試合まで1週間。ここで試合の日程や会場、トーナメント表が配られる。しかし何回見ても僕の名前がない、確かに部活に出るようになったとは言え週に1、2回だけだった。もしかすると参加申し込みの日に休んでいたのかもしれない。

先輩も僕の名前がない事に疑問を持って先生に聞いてくれた。

「練習に来てなかったのにいきなり試合なんか出すわけないだろ」

そう言われたらしい。しかも出場枠は余っているのに。代わりに部活に来ているハタピーが出ているとかならまだ納得でいたが彼も出ていない、とことん僕が気に入らないらしい。

その話を聞いてすぐ顧問に呼ばれた。
「ここから1年間しっかり部活くれば引退試合にはエントリーしてやる」
この部活での大会参加資格、レギュラーの条件は上手さや強さではなく何日連続ログインできたかどうからしい。

外部の練習がある日以外は来ると言う条件で話をつけた。
イラつかないわけがない、そんな事言われてまで出たくない、そう思ったが最後までこいつから逃げたと思われたくなかった僕の最大の反抗は


部活に出て、自分と後輩の練習だけしてこの部活の誰よりも成績を残す事


あなたの教えていた部員よりあなたの教えを受けていない僕が成績を残すのが一番屈辱だろうと考えたから。

新人戦以降最初で最後の大会が決まった。
1年後、公式戦はその1回。
やらなきゃいけないことがたくさんある中、思ってたよりも時間はなかった。



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