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国分寺市の農家と飲食店をつなげる、奥田大介さんからの「おきてがみ」―今までの人生がつながり、思いが現実になった瞬間

東京の「重心」と呼ばれるように、東京の中心にある東京都国分寺市。新宿まで30分足らずと、都心へのアクセスが容易なこの場所で、数多くの農家があるのはご存知ですか。

国分寺の農家と飲食店をつなげるプロジェクト「こくベジ」発起人の一人に、奥田大介(おくだ だいすけ)さんがいます。農家と飲食店をつなぐという新たな関係性を生み出しつつ、国分寺市内の様々なプロジェクトにも参画している奥田さん。

私が奥田さんに出会ったのは、5年ほど前。国分寺在住の方からは、奥田さんについて「国分寺のことならなんでも知っている人」と紹介を受けました。それぐらい、国分寺界隈で顔が広い奥田さん。そして、何足もわらじを履き、さまざまな業種の仕事をしている奥田さん。そんな奥田さんにとっての仕事とは?人生のテーマとは?を伺いました。

食べ物が近くにあるって、すごく豊かなこと。

――最初に「こくベジ」とは何かを教えていただけますか。

国分寺市が行っている、野菜のプロモーション事業のことです。市内では江戸時代から続く農家の人もいて、農業の歴史が長いこともあり、改めて野菜の魅力を伝えるブランディングができたらということで、発足されました。

こくベジは国分寺市のプロジェクトで、市内関係機関と、民間企業と、私のように国分寺に住む有志で運営されています。主に私たちがやっているのは野菜の配達です。週に2回ほど、農家さんから採れたての野菜を受け取り、市内の飲食店に配達をしています。始まったのは2015年末で、当初は10店舗ほどへの配達でしたが、今では50店舗を超えるほどの規模になりました。

――すごい成長ですね!

営業をしなくても、取り扱い店舗が伸びているんですよ。「こくベジを取り扱いたい!」と言ってきてくれるんです。口コミで広がっているようで、今では、国分寺駅直結の商業施設の飲食店でも取り扱ってくださっています。僕も、他のメンバーも、プロジェクトが立ち上がる前から「国分寺は、このプロジェクトが広がっていく可能性を持っている」と感じていました。だから、口コミだけで取り扱い店舗が増えたのだと思います。

こくベジの取扱店には、このタペストリーが掲げられている。

――国分寺のもつ「可能性」とはどういうことでしょうか。

国分寺って、都市部なのに都会じゃない感じがあります。畑があるからこそだと思いますが、僕の感覚としては、国分寺駅を出た瞬間に気持ち良くなるんです。食べ物が自分の近くにあるって、すごく豊かなことで、自立できるし、自由になれます。今までずっとその流れを守ってきた人とともに、その流れを守り続けることは「こくベジ」の大きな社会的意義だと思っています。近くで採れたものが自分の体の中に入るということは、原始人がその辺でやっていたことですし(笑)、体にとって一番いいことなのだろうなと。

「先送りの人生」をおくっているだけだった

――奥田さんが、こくベジに関わったきっかけを教えてもらえますか?

自分にとっての一番のテーマが「肉体面でも、精神面でも健康であること」だったので、このプロジェクトに携わるようになりました。

――「健康」というテーマにいきついたのはなぜですか?

小さいころから、体の調子が悪いことが多く、悩まされていました。常に対処療法だったので、肌が荒れたら薬を塗って、お腹の調子が悪ければ正露丸を飲む。そんな状態なのにコーラを飲んで、その後ヨーグルトをたくさん食べたりして(笑)。根本的に直すということを、考えていなかったんです。

――生活を変えた転機は、いつごろだったのでしょうか。

症状が一番ひどかった高校生のころでした。体質改善プログラムを始めてみると、たった3週間くらいで肌がすごくきれいになったんです。そのときに「僕の体は僕が作っているんだ」と実感させられたんですよ。
結局、自分の力で治してないから薬に頼るんですよね。自分の治す力がないっていうことにフタをして見えなくしているだけで、根本的に何も解決されません。先送りの人生を送っているだけだったんですよね。

――そんな体験から、「健康」というテーマにいきついたんですね。

そうです。「こくベジ」を始める前は、新聞配達など色々な仕事に取り組んでいたのですが、一番のテーマは肉体的にも精神的にも「健康であること」でした。「健康」をテーマにしようと思ってはいましたが、野菜や農業のことを仕事にしようと思ったことはありませんでした。でも、国分寺で様々なことに関わっていくうちに、「こくベジ」の活動にいきついたんです。

――思いがけずつながっていったんですね。

「こくベジ」の企画を聞いたとき、「これは昔、僕が心に描いたことだ!」と思いました。新鮮な野菜と自然に囲まれて働くことで、体も心も健康に保ちながら働けそう、と感じました。「思考が現実化するって、このことだ!」と。そのために生きてきた、というと大げさですが、自分が自然にすっと入れる活動だと感じました。

国分寺では湧水が流れており、都会とは思えない豊かな自然の中で野菜が育つそう。

「5年働いて2年休むような生活をしてみたい」

――奥田さんは、「こくベジ」のほかにも「地域通貨ぶんじ」、「ぶんぶんうぉーく」などの国分寺の様々な活動に携わっていらっしゃいますよね。そのきっかけは何でしたか?

大学のときに、雑誌で「大企業の人事課長が選ぶ、新卒大学ベスト●●」という記事を見ました。第1位が自分が在学している学部だったのですが、よく読んでみると理由が「潰しが効く」と書いてあったんです(笑)。僕自身、忠誠心を持って働くことができるという自覚があったのですが、「会社に使われてしまうだけの人生になる」と思ったんですよ。そのような、想像がついてしまう人生に逆らいたかったのが、今の生き方を始めたきっかけかな。

――ひどい記事ですね(笑)。

それから就活は特にせず、新聞配達などをしながら、国分寺のお祭りや、地域通貨の運営にも参加する日々になりました。「いつが休みなの?」とよく聞かれますが(笑)、いつだって休みみたいなものだし、いつだって仕事みたいなもの、という気分でいます。

こくベジ配達中の奥田さん

――その奥田さんの原動力は、どこからくるのでしょうか。

人生単位で何ができるかということは、いつも思っています。最大限能力を発揮できているか、そこに一番興味があります。抜け殻になるくらい、放出できるくらいの生き方ができればいいな。一般的には「5日間働いて2日休む」がスタンダードですが、5年働いて2年休みたい、みたいな人なのかもしれないですね。

――ありがとうございます。最後に、今後の展望を教えてください。

「こくベジ」のこうなったらいいな、と思う姿は僕もまだ手探りな部分がありますが、生活している場所で育った野菜が食べられることが成立する土地というのは、最大の強みだと思っています。その強みを活かして、「こくベジ」の魅力を広めていきたいです。あとは「必要とされているからやる」ということもありますが、「やりたいから」やっていきたいですね。

――こくベジでは、野菜の配達を一緒にしてくれる人を募集しているそうですね! 奥田さんは、どんな人と一緒に回りたいですか?

配達は短いときはだいたい3時間くらいですが、長いときは6時間を超えます。その間一緒にしゃべりたい人かなあ(笑)。学生のとき、しょっちゅうファミレスでだべっていたんですけど、その感覚と近いかな。

昨年12月のイベントで作ったこくベジクリスマスツリーと。

そんな奥田さんからの「おきてがみ」はこちら。

奥田さんと一緒に「こくベジ」を届けてみたいという方は、以下の募集要項をご覧になってください。
(文章:長尾 愛里)

【募集要項】
●勤務先 NPO法人めぐるまち国分寺(東京都国分寺市)
●応募資格 意欲と体力のある方
●ポジション
 ①こくベジ配送業(アルバイト)
  給与:時給1,000円
  仕事内容:こくベジ便による野菜配送の補助
  勤務日時:週1日〜、午前9〜12時。休日は応相談
 ②イベント運営、地域コミュニティ、地域インフラ創造
  給与:地域通貨や美味しいもの、楽しいこと
  仕事内容:こくベジ関連のイベントのお手伝い
  勤務日時:イベントにあわせて随時
●連絡先 kokuvege@gmail.com

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